未来館G・Wの裏話 「観る・描く・わかるオオグソクムシ」

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みなさん、2014年のGW(ゴールデンウィーク)はどのように過ごされましたか?未来館ではGW期間にたくさんの方にご来館いただき、大いに盛り上がりました。その様子は同僚の松浦のブログで紹介していますのでぜひご覧下さい。

そんな大盛況だった未来館GWですが、私にとってのGWはゴールデンではなく Gusoku Week でした。

そう、 グソク・ウィーク...

未来館で"グソク"と言えば 深海生物 オオグソクムシ。ご存じない方はこちらのブログもぜひ。

  20140516戸坂1.JPG 写真:左がオオグソクムシ、右がダンゴムシ

 

昨年12月にオオグソクムシが未来館の仲間入りを果たしてから 「オオグソクムシが見たい!」という声が続出していました。そこでGW限定でオオグソクムシの観察スケッチとぬりえをすることにしました。

20140516戸坂2.JPG写真:上部が観察スケッチ用紙(髙橋作)、下部がぬりえ(戸坂作)

 

しかし、このイベントを実施するまでにはたくさんの 問題があったのです。

生態があまり良く知られていない深海生物の飼育は非常に難しいもの。前職が動物園での飼育員だった科学コミュニケーター(SC)大渕と沖縄でサンゴの研究をしていた高橋が中心となってオオグソクムシの成育に挑んでいました。そこに私、戸坂が加わり 「チーム・グソク」を結成。

 

塩分濃度の調整や水質のチェック、濾過装置を作ったり温度調整をしたり...。深海生物はあまり動かないことでも有名ですが、私たちの身近な生物に比べるとリアクションが極めて薄く、オオグソクムシの体調や気分を察知するためには微細な変化を見逃さないように日々観察が必要です。できる限りのことをしたつもりですが、亡くなってしまったオオグソクムシもいました。(亡くなった個体については、別のブログでご紹介します。)

病気?ストレス?寿命?...死因の判断も難しく、私たちSCにできることは とにかく情報を集めて、オオグソクムシがストレスを感じない環境を作ること

水槽を改良しオオグソクムシが暮らしている深海のように暗くて冷たい静かな環境づくりを目指した結果、このようになりました。

20140516戸坂3.JPG写真:黒い布の向こう側に大きな水槽とオオグソクムシがいます。上部のケースにはダンゴムシとワラジムシを飼育中。

 

でも、これでは来館者に深海生物がいることが伝わらない...

 

「来館者に深海生物の魅力を知ってもらいたい。でもオオグソクムシのストレスは少しでも減らしたい。」

 

このジレンマに悩まされた私たちチーム・グソク。

オオグソクムシを含む多くの深海生物は赤い光を認識しないと言われているので、水族館などでは真っ暗な部屋で赤い光を当てて姿を見られるようにしています。本来ならこのような環境がベストですが、照明を赤くしたらオオグソクムシそのものの色が分からないし観察する人も眼が疲れてしまう。 人間のストレス オオグソクムシのストレス...どうすれば良いの??

 

そこでチーム・グソクは両者(オオグソクムシと来館者)にとって同等のバランスになるように観察スケッチのルールを作りました。

 

 

・ オオグソクムシの勤務は観察用の小さな水槽に1日2匹。交代制にして連日勤務は避ける。

・ 赤い光を当てない代わりに黒い紙を水槽3面に貼って光を抑える。

・ 来館者がオオグソクムシの細部を観察できるように拡大写真と実物標本を用意。

・ 水槽のアクリル越しでは分からないオオグソクムシの生態はSCが言葉と身振り手振りで表現する。

 

 

オオグソクムシのストレスを最小限に抑えつつ、来館者にもしっかり観察してもらえるように試行錯誤した結果、このようになりました。GW中はチーム・グソクの3人に加え、新人SCたちが水槽付近に待機し一生懸命オオグソクムシの生態を伝えていました。

20140516戸坂4.jpg写真:画面中央にオオグソクムシの入った水槽と、その傍らに立つSC田中。田中の背後には新人SCが描いた観察スケッチとぬりえが飾られていました。

 

20140516戸坂5.jpg写真:オオグソクムシの口の動きを身振り手振りで伝えようとするSC戸坂。

20140518tosaka1.jpg写真:ぬりえをする子供たちと対話するSC髙橋。

20140516戸坂6.jpg写真:ダンゴムシとワラジムシが入ったケースを手に生物進化の話をするSC大渕。

 

20140516戸坂7.jpg写真:完成~!!オオグソクムシのぬりえを手にとっても嬉しそうな、かほちゃん。

 

大人も子供も興味津々。嬉しそうにオオグソクムシの色を塗る子供や、水槽の前で黙ったまま真剣にスケッチをする子供たちの姿がとても印象的でした。

そしてGW期間中に描かれた観察スケッチはなんと 560!ぬりえは 1800!!未来館はまさにグソク祭り。カラフルで個性的なオオグソクムシで溢れていました。

20140516戸坂8.jpg写真:オオグソクムシの観察スケッチ。十匹十色なオオグソクムシたち。右上の1枚はチューブワーム(深海生物)の観察スケッチ。

20140516戸坂9.JPG写真:オオグソクムシのぬりえ。まるでファッションショー?個性的なオオグソクムシがいっぱい!

 

普段なかなかお目にかからない深海生物オオグソクムシ。飼育は大変だけど、私たちの知らない世界がまだまだ地球にはたくさんあるということを教えてくれます。オオグソクムシを見た来館者からは

 

「目がカッコイイ!」

「ダンゴムシに似ていてかわいい」

「気持ち悪い...」

「動かないけど生きてるの?」

「深海で何たべてるの??」

など、いろいろな声を聞きました。

 

生きたオオグソクムシを観察することで、さまざまな感情が生まれます。興味・好奇心・たくさんの「不思議」や「なぜ?」。そのような感情は 生命の不思議を解き明かすきっかけになるかもしれません。

 

 

GWを頑張ってくれたオオグソクムシたちはいつもの大きな水槽に戻り、黒い布の向こう側で今日もひっそりと生きています。いつも表情を変えずリアクションも薄いオオグソクムシですが、実は1匹1匹性格が違うのです。砂に埋もれるのが好きな子や、隙間が好きな子、よく丸まる子...。

生き物を飼うのは本当に難しい。でも、 相手の特性を理解して一緒に生きていく方法を考えることは私たち人間にとって大切なことではないでしょうか。

 

私はGW(グソクウィーク)でたくさんの 笑顔を見ることができました。来館者やSCの笑顔からいっぱいエネルギーをもらいました。

でも一つだけ、わがままを言わせてもらえれば

 

"グソクの笑顔も見てみたい..."

 

そんな今日この頃。

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