イギリスがうらやましい?

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震災以来、「政府の出す情報が信じられない」という人が増えた気がします。では誰が出す情報なら信じられるのでしょう。テレビやネットで原発を批判するジャーナリストか、家族や友人の口コミか。その答えの中に、「科学者」はまずありません。

 

さてイギリスには、「主席科学顧問」というポストがあります。主席科学顧問は、首相(今はデービッド・キャメロン首相)の直下におかれる科学アドバイザーで、他の行政機関とは独立して、政府に科学的な進言をおこなっています。

現在の主席科学顧問はジョン・ベディントンさん。生態学が専門の科学者です。そのジョン・ベディントンさんが登壇するシンポジウム(緊急事態における科学者の情報受発信 ~フクシマからの教訓~ )に、先日参加しました。

 

同じシンポジウムに参加した林田も書いていますが、福島の原発事故が発生した直後、当然ながらベディントンさんは日本からの情報を整理し、専門家と協議しながら、状況を英国政府に伝えていったそうです。その行動はすばやく的確です。3月15日の時点でメルトダウンという最悪のシナリオを想定し、吹き上がる放射性物質の高さを500メートルと予測、チェルノブイリ事故との比較から30km圏内の住民避難は適切であると結論づけています。またすぐに、英国の原子力発電所の安全性の総チェックを始め、5月には「日本の原発事故をうけて英国の原子力エネルギー政策を修正する必要は無い」という調査報告を公表しています(原発撤退を宣言したドイツやイタリアとは反対ですね!)

 

シンポジウムには日本から原子力委員会の科学者や科学政策の専門家が登壇していたのですが、「あれが悪かった」「これを直さねばいけない」と言うばかりで、ベディントンさんと比べ歯切れが悪い…。進行役の池上彰さん(ジャーナリスト)は最後に、「日本もベディントン氏のような科学者が必要ですよね!みなさん!」と一言ずばっ。つまり、今の日本にはそのような科学者がいない、ということです。

 

私は、ベディントンさんが語った重要なメッセージは3つあるかと思います。

・ 政府と科学者の独立性と信頼関係が大事です

・ 科学者が政府に進言する内容は必ずしも全てオープンにされないが、後になって検証できるよう、意思決定にいたる全てのプロセスを記録しましょう

・ 科学者の役割は、科学情報の中で最も確からしいものを選び、判断材料を示すこと。それを実際に判断し、政策を決めるのは政治家の仕事です

 

これを読んで、「イギリスがうらやましい〜」と、思いますか?

しかし、ちょっと待って下さい。もし「日本のベディントンさん」が颯爽と現れ、科学的根拠に基づく的確な情報を述べ始めた時、政府を含め私たちはそれを受け止め、判断する準備はできているのでしょうか。黒いスーツの政治家やメディア関係者が最前列に座る六本木のシンポジウム会場を思い出し、ふと考えたことです。

 

 

<参考>

サイエンスポータル【2011/5/31 日本にも首席科学顧問が必要では? 】

http://scienceportal.jp/news/review/1105/1105311.html

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この記事への1件のフィードバック

確かに日本は政治的判断と科学的判断を別物として受け入れる国民文化が育っていないように思う。

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