遅れる地デジ

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こんにちは、展示開発課情報科学担当の「もんも・鈴木」です。

今日はちょっと趣向を変えてもんもじゃないお話をします。

私は平成23年7月24日正午、自宅でアナログ放送の終焉を見届けました。

三種の神器「白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫」、新・三種の神器「カラーテレビ、クーラー、自動車」、どちらにも含まれ、高度経済成長の象徴だったのがアナログ放送のテレビです。

普段はほとんどテレビを見ない私ですが「57年間お疲れさまでした」という気分になりました。

そこで今日は「地デジの遅延」についてお話ししたいと思います。

いえいえ、「お宅のテレビはまだアナログですか?」という遅延ではありません。

ちゃんと情報科学のお話です。

7月24日、各局が地デジ特番を放映していましたね。

地デジ対応テレビと非対応テレビを並べて、「アナログ、まだ映ってます」「地デジはやっぱり綺麗ですね」なんてシーンを見かけたかと思います。

その時、「あれ?アナログ放送より地デジの方が遅れて表示されてるよ?」と気づいた方はいらっしゃいますか?

そうなんです、地デジは遅いんです。

地上デジタル放送はアナログ放送より数秒ほど遅れて表示されます。

遅れる時間も家によってまちまちです。

サッカーの試合で決定的なゴールシーンがあっても、あるお家で「ゴーーーーール!」と叫んでいる頃に、他のお家では「よし、そこでシュートだ!」とハラハラしています。

ぴっぴっぴ、ぽーん!12時になりました。」も嘘です。

テレビ業界用語で「跨ぎ(またぎ)」と言うそうですが、最近は何時ちょうどでなく数分ずらして始まる番組が増えています。

もっと深刻なのは災害情報です。

災害予測にはスーパーコンピューターが駆使され、1秒でも早く予測することに命を賭けている研究者がいます。

しかし「あと20秒で津波が来ます!みなさん、逃げてください!」と伝わる頃には、実際に避難する時間は18秒しかないかもしれません。

「2秒ならたいしたことないじゃん」と思われるかもしれませんが、

ウサイン・ボルト選手なら20m逃げることができます。

ボルト選手でなくともガスを止めるとか避難経路を確保するといった1アクションの違いは大きいはずです。

ところで、進化したはずの地上デジタル放送がなぜアナログ放送より遅いのでしょうか。

アナログ放送は映像信号をそのまま、つまり波のまま電波にして送っていました。

そのため、電波の乱れは映像の乱れ、一度に伝送できる量にも限界がありました。

この波を数値に変換できれば情報科学で培われた『誤り訂正検出』や『圧縮』と言った技術が使えて「高画質・高音質の放送もできるね!」というのが地上デジタル放送のきっかけです。

波を数値に変換することを『量子化』とか『エンコード』と呼びます。

その逆は『デコード』です。CDから音楽をパソコンに取り込む作業などをしたことがある方は聞いたことがあるかもしれません。

その様子はなんとなく下の図を見てイメージしてみてください。

誤り訂正検出、圧縮、量子化と小難しい単語が並んでいますが、調べてみるととても面白いお話です。

別の機会にblogで書きたいと思います。

地デジが遅い問題はこのエンコードとデコードにあります。

波を数値にエンコードして放送する、受信した数値をまた波の映像信号にデコードしてあげる処理はどうしても0秒にはなりません。

さらに厄介なのは放送局ががんばって限りなく短い時間、仮に0.1秒で毎回エンコードしたとしても、各家庭で行うデコードは機械がさまざまなので1秒だったり3秒だったりして遅延時間が一定ではないのです。

今、総務省や放送局が協力して、災害情報は圧縮せずになるべく早く伝えられるよう工夫をはじめています。

時報についても、デコード側に正確な時計を持たせて実用上の問題が起きないようにしています。

今度テレビで生放送を見るときは「これって何秒遅れかなー」と気にしつつ、遠くの出来事がほぼ同時に見て取れることのすごさを57年前の人たちと同じように感動してみてはいかがでしょうか?

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