続:【詳報】2011ノーベル物理学賞! どうやって宇宙の加速膨張を観測したの?

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2011ノーベル物理学賞! 宇宙は加速膨張している!」続編です。内容を少しほりさげてご紹介しますので、「赤方偏移」とか「宇宙膨張」とか「タイプIa(ワンエー)超新星爆発」とかいう言葉が聞き慣れない方は、先に前の記事をご参照ください。(超新星爆発についてはこちらも)

さて読者の方からいただいたご要望は、加速膨張という結論にいたるまでに「どのような観測をしてなにが明らかになったのか」という、解析のしかたについての説明。

宇宙の膨張速度を測るために、大きな望遠鏡でやっととらえられるずっと遠くの宇宙で、偶発的にしか起こらず、しかも起これば数週間ですぐに減衰してしまう超新星爆発を使います。これは、とても大変なことです。

第一に、夜空のスキャン

光がわずかしか届かない、遠くの超新星爆発をとらえなくてはなりません。なぜ遠くの超新星爆発を探すのかといいますと、それだけ遠い過去の様子がわかるから。宇宙がどのように変遷してきたのかを見るために、遠い過去のデータが必要なのです。

パールミュッター、シュミット、リースの三氏は、この深宇宙で起こる超新星爆発のデータから宇宙の歴史をとらえ、そこから加速膨張を示し、ノーベル賞を受賞しました。

光がなかなか地球まで届かない距離にあるので、月が煌々と照っている夜空では見えません。そこで新月の日に、夜空を大スキャンします。そして次の新月の少し前に、もう一度スキャンして、違いを見ます。

急に明るく輝き始めた星が超新星爆発。

一回のスキャンで数万の銀河が解析され、10個ほどの超新星爆発が見つけられます。この三週間ほどのあいだに爆発を起こしたということは、爆発したばかり、あるいは、まだ明るさのピークに達する前の段階、ということになります。

第二に、超新星爆発の種類

まず、見つかった超新星爆発の中で、タイプIaという望みの超新星爆発をさがさなくてはなりません。前回もご説明しました通り、このタイプの超新星爆発は明るさがほとんど同じで、距離を正確に特定するのに理想的な、宇宙の「キャンドル」なのです。

まず、タイプIaの超新星爆発は、上図でみたように、爆発後どんどん明るくなって、その後なめらかに減衰していきます。この明るさの変化のしかたが特徴です。しかし、発見されたばかりの超新星爆発がどのように変化していくかは、まだわかりません。

そこでタイプを特定するために利用するのが、光の「スペクトル」です。スペクトルを使ってタイプIaの特徴を見つけるのです。

まず、光は波長によって色が代わりますので、波長ごとに広げると虹のようになります。

(注)こちらのスペクトルは超新星爆発のものではありません。

上の図では、スペクトル上に黒い線がたくさんあります。つまり、そこの波長の光が抜け落ちている、ということです。

なぜ抜け落ちるかといいますと、光が通ってきた道筋にある物質によって吸収されてしまったからです。そして、吸収される波長は、そこにある元素の種類で決まります

タイプIaが超新星爆発をおこした瞬間、いっきに酸素からカルシウムなどの物質が作り出され、外に放出されて、雲状に星の周りを囲みます。初期の超新星爆発からやってくる光はその雲を通ってきますので、それらの物質が吸収した特有の線がスペクトルに現れます。

つまり、どこの波長が抜け落ちているかを見れば、超新星爆発をした星やその周辺の構成元素がわかるというわけです。

このタイプIa特有のスペクトルを見つけることで、超新星爆発のタイプを特定できるのです。(他のタイプの超新星爆発に比べて、特に、水素がないこと、ケイ素の存在すること、が特徴的です)

(前回の記事で、物質の構成を見ると、超新星爆発からどれくらい時間がたっているのかがわかる、と書きましたが、厳密にいいますと、ここでは二種類のものを見ています。一つ目が、明るさの変化。この光源自体が明るくなって暗くなるのにも理由があります。それがニッケルがコバルトに変化するときに出す光と、コバルトから鉄に変化するときに出す光で構成されていて、これらが時間とともに遷移していきます。二つ目が上で説明したスペクトル。酸素からカルシウムなどの存在がわかります。これは時間がたつとちりぢりになって見えなくなります。)

第三に、スペクトルを使って後退速度を計算

前回、レッドシフトについてお話ししましたが、赤方偏移がこのスペクトルに現れます。

どのように現れるかというと、吸収線が赤色方向(波長の長い方向)にシフトするのです。このシフトする度合いを測って、実際その超新星爆発がどれくらいの速さで遠ざかっていっているのかを調べます。

難しいけれど重要なのが第四、正確な距離を求めます

前に超新星爆発の明るさや明るさの変化は皆だいたい同じ、と書きました。でも、厳密にいうと明るさは少しずつ違うのです。ということが、80年代にわかってきました。これは、距離がよくわかっている、地球から比較的近くにある超新星爆発を詳細に観測してわかったことでした。

実は、少し明るいものがあったり暗いものがあったりします。そして少しでも明るさが違うと、距離が正確に測れなくなります

しかし、よくよく見てみると、実はあるパターンがあるのです。明るいタイプIa超新星爆発はその明るさの減衰が遅く、暗いものは減衰が速くなっています

暗い超新星爆発の明るさカーブをちょっと横にひき伸ばして、上にあげてあげると、なんとぴったりと明るい超新星爆発の明るさカーブに合う!ということがわかりました。

つまり、横方向にどれだけ引き延ばす、あるいは縮めないといけないかがわかれば、厳密な明るさがわかります。正確な明るさがわかれば正確な距離もわかるのです。

そのためには、明るさカーブの形を知ることが大切になります。ということは、一つの超新星爆発につき、何回も観測して、どのように明るさが減衰しているのかを見る必要があります。

そういうわけで、ハッブル宇宙望遠鏡やハワイのケック天文台などで、発見されたタイプIa超新星爆発のひとつひとつの後を追って観測し続けるのです。

こうして求められた正確な距離により、何十億年前に発せられた光であるかがわかります。そして、スペクトルから求められた後退速度により、宇宙を表す方程式にあてはめて宇宙のサイズが計算できます。

この時間とサイズを表したのが、下の図であるわけです。

これらの大業を成し遂げるため、世界中の数々の望遠鏡が駆使されました。超新星爆発宇宙計画(Supernova Cosmology Project)とハイゼット超新星捜索チーム(High-z Supernova Search Team)という2プロジェクトで競争しながら遂行されました。

どれだけたくさんの望遠鏡が使われたかは、こちらで見てみてください。

 

参考:

PhysicsToday 「超新星爆発、暗黒エネルギー、そして加速膨張する宇宙(英語)」

関連ページ

【詳報】2011年ノーベル物理学賞!宇宙は加速膨張している!

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この記事への32件のフィードバック

ビッグバン以前から 時間と空間はあったのですか?

小学生の時以来、どの先生からも明快に答えてもらえず、60年間 考えると気が狂うほどの欲求不満状態が続いています。

この次元の人間には、永久に理解できないことなのですか?

takさま

永久に理解できないことかはわかりませんが、少なくとも今のわたしたちには推測できるだけです。私たちが生まれてきて「時の始まり」を考えていることすら、不思議なことに思えてきますね。

ビッグバンの前には、時間も空間もなかった、と考える人もいますし、宇宙は一つではなく、真空からぼこぼこと湧いて出るもの、と考える人もいます。後者の場合、私たちの宇宙の以前にも時間があった、ということになります。

宇宙の以前を理解するために、まず私たちの宇宙を理解しなくてはならないのですが、それもままならない状況です。宇宙の中の95パーセントもの物質とエネルギーが、まだ私たちには未知のものなのです。

でも今、研究者の方たちが、遥か遠くから届く初期宇宙のなごりをとらえるため、また暗黒エネルギーや暗黒物質を探して、検出器がどんどん開発されています。

宇宙論はこれから面白くなりそうですね。

林田

林田さま
ちょっと ポイントのはずれた素朴な疑問に、丁寧な答えをいただいてありがとうございます。
知れば知るほど ビッグバンの向こう側は遠のいてしまいますが、恋の取引みたいに、ますます追いかけたくなります。
論文を読むにはエネルギー不足の私の脳でも、わくわくドキドキできるブログに感謝してます。あやふやな知識が整理されます。超新星爆発から導き出される加速膨張は感動ものでした。
これからも期待してます。

来週大学でとっている英語の授業で「自分の好きなことに関して発表する」という課題があります。

 その課題をうけて今回、頑張って宇宙膨張の話をしてみようかなと企んでいます!!

理系の用語はもちろん 基本単語もままならない英語力なので どうなるかちょっと不安ですが、

なるべく簡単な言葉におきかえたり、図を工夫してなんとか伝えたいです!!

わかりやすい未来館ブログ、勝手ながら大いに参考にさせていただいております…!

最後のスライドで、参考資料のところに未来館BLOGのURLをのせさせていただきます。

いろんな人が興味をもってくれると信じてます!

発表頑張ります!

みーたそさま

英語課題、楽しそうですね!英語でお話しすると、また違った味になるかもしれません。

「明るさ」も英語ではLuminosityとBrightnessがあります。前者は星や天体そのものの持つ明るさ。Brightnessは、地球上で観測できる明るさ。

ですので、上の図の「明るさ」はLuminosity。本文中では、「明るさ」を両方の意味で使っているのでお気をつけくださいませ。

他にも必要なものがございましたら、お申し付けください。

楽しいプレゼンにるといいですね!

林田

はじめまして。 数学が全くダメで専門的に勉強した事はないのですが、物質や宇宙のお話を聞いて想像するのが大好きな主婦です。

つい昨日こちらのサイトに辿りつき、興味深々に拝見しています。分かりやすいご説明でとてもありがたいです♪

これからも いろいろ教えて下さい。楽しみにしております。

それで、さっそくなのですが、

このところの「宇宙の膨張は加速している」関係の問題から 少し疑問が湧いてきまして、お伺いしてみたいのですが・・。

まず、

今の記事 一番下の図から、「宇宙の誕生から現在まで137億年」「現在の宇宙のサイズは半径470億光年」という事になりますよね?

実は先日NHKスペシャル「ハッブル望遠鏡」を見たのですが、そこでは もう少しハッブル望遠鏡の精度を上げる事により、近々宇宙の誕生(宇宙の晴れ上がりの瞬間?)の光を捉える事が出来るかも知れないーーという風に言っていたのです・・。

・・・でも・・。光って、一年に一光年進むんですよね?

そう考えますと、そのサイズの宇宙の中心(インフレーションの始まりの点の位置?)から現在のこの地球の位置まで その宇宙誕生(晴れ上がり?)の光が現在届いているーーという事は、・・何だか矛盾するように思えるのですが・・(宇宙における地球の位置にもよるかとも思いますが)。

それで、そのような事からもですが、

この宇宙には、誕生以来 光の速度を超えて遠ざかってしまった物質があったのではないかーーという疑問が生じて・・。

そうしますと、その外側へ逃げてしまった物質は、私たち地球人には もう永遠に、(私たちの地球の位置からですと) 「この宇宙のもの」とは言えなくなるわけですよね?

ダークマターとかダークエネルギーなどの総量の測定(?)予測(?)が どのように得られるのか分かりませんが、

そのような「逃げてしまった物質」は 例の「謎」には 関係ないのかな・・なんて考えてしまうのですが・・。

 

ーー私はどこかで勘違いをしているのでしょうか・・。

お教え頂ければ嬉しいです。

すみません、補足ですが、

リサ・ランドール博士の この映像http://www.youtube.com/watch?v=arKlj3pJQnc で、

「重力エネルギーは 他の宇宙からも影響を受けている」というような事を言っています(2分55秒辺りから)。

もちろん、これも仮説なのですから こんな事を考えても仕方ないのですが、

もしも本当に重力エネルギーが「他の宇宙からも影響を受ける」・・ものなのだとしましたら、それを「この宇宙の外からも影響を受ける」と置き換える事は可能な気がしまして、

それで先ほど私が最後に述べました 

ダークマターやダークエネルギーの謎に 「逃げた物質」が関係するのではないの?

--という考えに繋がったのですけど・・。

(それから、この映像でも、「消える物質があるーーと考えると問題が解決する」というように言っている箇所がありました)

金子さま

ご質問ありがとうございます。

まず、誤解を招いてしまって申し訳ないのですが、「470億光年」と書きましたのは、「観測できる宇宙の現在の半径」です。137億年前に光を出した天体があったとして、その天体は、今は470億光年かなたにあります。

少しややこしい話になるのですが、天体が光を出した当時に光速以上で遠ざかっていても、地球に到達しているものもあります。宇宙の膨張のしかたが時間とともに変わっているからです。(宇宙の初期、膨張は減速しており、のちに加速に転じています。)

この外側にも宇宙は存在すると、観測はできませんが、理論的には推測されています。

さて、ご質問の内容を正確に把握できていないかもしれませんが、この観測できる範囲の外にあるものに物質が逃げているので「暗黒エネルギー」が解決できるのでは、というお考えと理解いたします。

まず、暗黒エネルギーと暗黒物質は、総量ではなくその「密度」を計算しています。空間中の密度によって宇宙空間の行く末が計算されます。

そして、暗黒エネルギーは斥力を持ったエネルギーですので、物質が逃げることによって説明できるものではありません。宇宙に物質が全くなかったとしても、この加速膨張は説明できないのです。

(また暗黒物質は、私たちの周りにある銀河の回転の仕方から、実際にその重さが観測されている「物質」で、物質が逃げていったものではありません。)

ランドール氏の理論は、異次元に重力が「漏れ出ている」という意味です。宇宙の4つの力のうち、重力だけ説明が難しいほど弱い理由を、これで説明しています。

申し訳ありません、ご質問の内容をよく理解できていないこともあり、このような回答となってしまいましたが、もしまた何かあればどうぞご投稿ください。

宇宙は考えれば考えるほど面白いですね。

林田

長い文章で、しかも何通にもなりまして申し訳ないのですが、

読み返してみますと、私の言いたい事が書き切れていないような気がしまして・・。補足の補足をさせて下さい。

先ほど私が書きました「逃げてしまった物質」という仮説(と言っていいのでしょうか)の事ですがーー。

この宇宙の膨張の仕方は 風船が膨らむ時の様子をイメージすると良いーーというような事を聞きました。

それは、それぞれの物質と物質の間が、あるいは この宇宙全体に見えないゲージを想定して考えますと、そのそれぞれのゲージがまぁ同じ位の割合で刻々伸びていっているーーという感じですよね?

そうしますと、それぞれのゲージではわずかな長さの推移に見えても、宇宙中の全てのゲージの長さが同じ割合で伸びると考えますと、ビッグバン当時の劇的な膨張時などは 中心から光よりも速く遠ざかった部分だってあったかも知れない・・というような気がしますし、

また現在でも宇宙もこのサイズになりますと、この地球から その宇宙の端っこを見ようとした時など、きっとその端っこは 地球から見て光よりも速く遠ざかっているのではないか・・という気がするのです。

(また そのように考えますと、こちらでの記事の最後の図の矛盾?とも ぴったり来るような気がします。)

それで、もしそうだとしますと、光より速く遠ざかるーーという事は その光はこの地球からは永遠に見えなくなるーーという事ですし、同じく電磁波なども永遠に届かなくなってしまいます。

という事は、地球から見て光より速く遠ざかってしまった物質は 地球からは観測する事が出来なくなるという意味で、もうこの宇宙のものとは言えなくなるのかな・・と思うのです。

この宇宙での大原則の法則 「光より速いものはない」という意味でも。

「逃げてしまった物質」と書きましたのは そういう事です。

・・・でも、重力も光の速さで伝わるものだとしましたら、「逃げてしまった物質」からは重力だって伝わって来ないという意味で、ダークエネルギー(?)に関係しているとも言えなくなるかも知れませんが・・・。

それに、「逃げてしまった物質」という私の考え方は NHKスペシャルで言っていました「ハッブル望遠鏡の精度をもう少し上げる事で、近々宇宙誕生の光を見る事が出来るかも知れない」という事とも矛盾しますよね・・。

また長くなりました。ずっと不思議に思っていて、どなたかにお聞きしてみたかったのです。すみません。

今 ふと思ったのですが、ダークエネルギー(反発する力)って、

物質同士が「反発する」というより、物質濃度を同じにしようとする「浸透圧」と同じ原理と考える事は出来ないでしょうか・・。

金子さま

昨日のお返事、すれ違いになってしまったようですね。

混乱させてしまったところもあるかと思いますので、もう一度お返事させてください。

①もちろん、おっしゃるように、光速以上で遠ざかっている天体もあります。これは、実際に物質が空間上を光速以上で動いているわけではありません。空間自体が引き延ばされていて、その上に天体がのっているので、地球から見て光速以上で遠ざかれるのです。ですので、相対論には反していません。

②光速以上、光速以下で宇宙を分ける意味は、あんまりありません。実際、観測できる宇宙は、時空の中のほんの一部です。遠くなればなるほど過去の宇宙を見ていることになり、例えば、遠くの「現在の宇宙」を観測することはできません。また、光速以上で遠ざかっていた天体から出た光が、今地球に届くこともあります(特に宇宙初期から届く光)。

③ですので、観測できない宇宙は存在します。この宇宙も含めて、宇宙の方程式で書かれています。また、インフレーション理論などでは、宇宙は観測できる部分よりはるかに広大であると考えられています。それでも私たちの宇宙の中です。「違う宇宙」と呼ぶためには、全く違った物理がそこに存在すると考える必要があります。

④まったく違った物理が、「逃げてしまった物質」だとしても、暗黒エネルギーは説明がつきません。暗黒エネルギーは確かに斥力になりますが、これは物質に働くものではなく、空間を引き延ばしている何かです。物質があったりなかったりすると働く力ではないのです。

いかがでしょうか。もしまた何かギモンな点がありましたらコメントくださいませ。

林田

林田さま

私の分かりにくい質問に、こんなに丁寧にお答えを下さり感激しています。ありがとうございました!

それに、私が今まで疑問に思っていろいろ見ていた中で一番分かりやすいご説明でした。

○ 暗黒エネルギーと暗黒物質は、総量ではなくその「密度」を計算しているーーということ。

○ 暗黒物質は、私たちの周りにある銀河の回転の仕方から、実際にその重さが観測されている「物質」であるーーということ。

○ ランドール氏の理論は、異次元に重力が「漏れ出ている」という意味であるーーということ。

○ 光速以上で遠ざかっていた天体から出た光が、今地球に届く(特に宇宙初期から届く光)こともあるーーということ。

○ 暗黒エネルギーは確かに斥力になるが、これは物質に働くものではなく、空間を引き延ばしている何かであり、物質があったりなかったりすると働く力ではないーーということ。

ーーーなど・・、

私が今まで知らなかったり勘違いをしたりしていました事を教えて頂き、もちろん全ては理解出来ないなりにも 何だかやっと合点がいった気がしております(笑)。

また、

○ 実際に光速以上で遠ざかっている天体もあるが、それは天体が引き延ばされる空間に乗っているから地球から見て光速以上で遠ざかれるのであり、実際に空間上を光速以上で動いているわけではなく相対論には反していないーーーという事は、私にとりまして全く新しい情報でした。

それから、

○ 遠くの「現在の宇宙」を観測することはできないーーーということは、私も<知っては>いましたが、こうしてあらためてお聞きして考えてみましたら、それだけでも何だか本当に不思議な気がしました。

宇宙って、本当に不思議で面白いですね! 

林田さんみたいに専門知識があったら もっとずっと面白いだろうと羨ましく思います。

でも私も、これからもこちらでいろいろ教えて頂きながら 想像を膨らませる楽しみを追及していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

ありがとうございました!

林田 美里さま、こんにちは。

宇宙や星が大好きなさとと申します。

宇宙の膨張について、とってもわかりやすく、とっても楽しく読ませて頂きました。

ありがとうございました。

一点だけ、前からわからないことがありますので、質問させてください。

遠くの星が近い星よりも加速しているのが観測から明らかになったっていうことはわかるんです。

それで宇宙が加速膨張しているって結論ですが、遠い星ほど過去の光なんですよね。

過去の光がより早く遠ざかっているのならば、逆に宇宙は収縮している証拠だと思えてしまうのですが・・・

お分かりになられると教えてもらえると嬉しいです。

よろしくお願いします。

赤方偏移のことなどよく知らないズブの素人なので誠にお恥ずかしいのですが一つ疑問に思うことがありますので質問させて下さい。

 二番目のグラフを見てのことですが赤方偏移は超新星爆発そのものが後退しているのではなく明るさ(絶対光度?)が減衰しているために起きる現象なのではないのですか?

 つまり「後退速度」ではなく「(明るさの)減衰速度」を示すものなのではないのですか?

 よろしくお願いいたします。

ひでっちさま

ご質問ごもっともです。

赤方偏移とは、光の波長が長くなって起こることです。1個の光子であっても、空間が引き延ばされることにより、波長が伸びて赤色を帯びます。

これに対し、「明るさが減衰する」というのは、光の量が減ることです。3個の光子が2個の光子になると、光の量が減ったことになります。

ですので、波長が伸びることと明るさが減衰することは、別の概念になります。

いかがでしょう。

林田

う~ん!

 暗線=吸収線というのは光子が星の周りにある元素に吸収されるために出来るものでしょう?

 一方その元素というのはニッケル→コバルト→鉄という風に軽い元素へと変わっていくんでしょ?

 そうするとその吸収線は次第に軽い元素に吸収されるものが増えて行くのではないですか?

 水素原子の出す光は赤 塩素原子の出す光は橙だと記憶しています。

 ですから吸収線はスペクトルではより赤(水素原子=軽い原子)に近い方に多く現れるのではないのではないですか?

 よろしくお願いいたします。

ひでっちさま

ご質問の内容を勘違いしていたようで申し訳ありません。

赤方偏移とは、吸収線の原因となる元素の種類が変わっていくことではありません。これらの吸収線のパターンがそのまま、赤色方向に移動することです。そして、赤色方向に動く理由は、光源が遠ざかっているからです。

もちろん時間とともにそこにある元素の種類が変わってきますので、吸収線のパターンも変わってきます。ですがそのパターンは、時間とともに赤色方向に移動するわけではありません。

遠ざかる天体を一つ、数週間ほど観察し続けるとしましょう。どの時間にとっても、本来あるべき波長よりもある一定量、赤色方向に移動しています。それが赤方偏移です。

また、吸収線の波長は、元素の重さで決まるわけではありません。一種類の元素でも複数の吸収線がある複雑なものです。

林田

う~ん!(唸ってばかりですみません 笑)

 スペクトルのパターンが赤方偏移していくのではなくて吸収線が赤方偏移していくのですね?

 それから一種類の元素でも複数の吸収線があるということは初めて知りました。不勉強でどうもすみません。

 それにしても吸収線はその星の周り(多くの場合表面?)にどのような元素が存在しているのかを知るための手掛かりにもなるものでしょう?

 複数の吸収線があるとするとその元素を特定するのは極めて困難なことなのではありませんか?

 ですから吸収線が赤方偏移していくということはより軽い元素に吸収されていっているという解釈も成り立ちはしませんかねー?

 これも不勉強のためよく分かりません。どうぞお許しのほどを。

 ドップラー効果によって赤方偏移するというのは理屈の上では分かるのですが。

 それから今一つお伺いしたいのは遠方の銀河は波動としての光ではなく粒子としての光すなわち光子を捉えることによって観測しているのではないのですか?

 ハッブル望遠鏡で光子によって観測した深宇宙の方が画像がより鮮明であるということを何かで見たことがあります。

 僕の記憶に間違いがないとするとE=hν(←これくらいのことは知っています)より光波よりも光子のエネルギーの方が大きいー従って光子と光波ではνの値が(従って波長λの値も)異なってくるのではないでしょうか?

 ν→大⇒λ→小となり遠方の銀河の後退速度が小さく見積もられているということはないのでしょうか?

 生意気ばかり言ってすみません。よろしくお願いします。

ひでっちさま

吸収線のパターンがそのまま赤色方向に移動します。

また、おっしゃるとおり、そこにどのような元素があるかの解析は複雑なものです。しかし、パターンが形を変えることなくそのままシフトするので、明らかに赤方偏移が原因であることがわかります。

元素の種類が変わっていると、このパターンの形そのものが変わってきます。ですので、軽い元素になっていくから、という説明は成り立ちません。

(また、超新星爆発では軽い物質に変わっていきません。爆発を起こした直後に軽→重の順で瞬時に作られます。最終的にニッケル→コバルト→鉄となるのも、鉄に落ち着くための過程です。ここから水素などの軽い元素になるわけではありません。)

また、光は光子と波動の2種類あるわけではありません。光は波であり粒子であるという両方の性質を持ちます。光を波とみても粒子とみても、エネルギーは同じです。

林田

そうでしたか?

 宇宙がたとえ「膨張」しているとしても「膨張」の速度が変化するということに強い疑問を持ったものですからいくつかの質問をさせていただいた次第です。

 E=hνに関してはただ光子として観測した方が画像が鮮明だったと記憶しているので何となくそう思っただけです。

 宇宙に関する謎は尽きませんがご丁寧な回答どうもありがとうございました。また何かの機会に訪問させて頂きます。

さとさま

大変鋭いご質問です。

そうなんです。観測できているのは、あくまで過去の宇宙です。「現在」は私たちの銀河系になってしまいますので、現在どうなっているのかすら、直接観測することはできません。未来はなおさらです。

実は、「宇宙が加速膨張している」というのは、理論によってわかることなのです。アインシュタインの場の方程式などから導きだされる理論により、宇宙の大きさの変化を書くことができます。

この理論の中には、物質量やエネルギー量、空間の歪み方など、さまざまな材料が盛り込まれています。それぞれの値が変わると、宇宙の運命も変わってきます。そのシナリオの代表的な三つが、最後の図にある三つの線なのです。

この数あるシナリオのうちのどれが正解かを観るために、超新星爆発を観測したのです。

当初、物理学者は、宇宙の膨張は減速し続けてているだろう、と考えていました。重力によって引き合うからです。「減速率」を測っていたら、実は減速は70億年ほど前に終わり加速に転じている、ということを発見し驚いたわけです。

現在や未来の宇宙は直接観測することはできません。しかし、理論によって、加速膨張しているだろう、ということがほぼ確実になっています。

もし理論が間違えていたとすれば・・・確定的ではなくなってしまいますね。

林田

林田様

興味深く拝読させていただきました。

宇宙の加速膨張が観測から実証されたというニュース以来ご多忙な日々をすごされていると思います。お疲れ様です。

そんな中、私のような科学番組でしか知識を得ていないようなズブの素人が質問してしまって申し訳ないのですが、ご教授願えればと思います。

ダークエネルギーによって宇宙は膨張速度を上げているとのことですが、私にはダークエネルギーはエーテル理論と同じような違和感を感じるのです。

ダークエネルギーなしでも宇宙の加速膨張のような観測結果を得ることはないのだろうかと。で、考えてみたのですが、初期宇宙は時間の流れが遅かったのではないかと。

赤方偏移は移動速度だけでなく重力によっても起こりますよね。遠方の宇宙を観測するということはそれだけ過去の宇宙を見るということ。過去の宇宙は今よりもずっと小さいために物質の密度が高く、時間の流れが遅かったのではないかと考えるのですがいかがでしょうか?

宇宙が小さい→密度が高い→重力が強い→赤方偏移が大きい→時間の流れが遅い→加速膨張はしていないという論法なのですが、なにせ素人の浅知恵。鼻で笑われるかもしれませんが・・・。

堺さま

今回の観測結果は、宇宙膨張の速度が変化しているせいではなく、他に原因があるからなのではないか、というご指摘かと思います。

まず、赤方偏移は確かに重力によっておきますし、宇宙の初期からの光を観測することができれば、赤方偏移しているはずです(38万歳のときの「宇宙の晴れ上がり」以降からしか光は届きません)。しかし何十億年もたった宇宙では、この影響はわずかなものです。

また、今回の結果は、80億歳くらいまでは減速し、そこから加速に転じるというものです。つまり、宇宙を引きはがしているモノの影響は宇宙が膨張すればするほど、大きくなっています。宇宙の初期にいけばいくほど赤方偏移は大きくなりますが、その度合が宇宙初期ほど大きくなっているわけではありません。暗黒エネルギーがないシナリオよりも赤方偏移の度合いが小さいのが、今回の観測結果です。

しかし、観測結果が別の原因にあるのではないかという疑問は、研究者に常についてまわります。とくに今回は予想だにしなかった加速膨張を導きだしてしまいましたので、さまざまな要因を考えました。

たとえば、超新星爆発の明るさを使って距離を割り出しますが、超新星爆発が思ったより遠く見える(暗く見える)理由は途中に障害物があるせいではないか、または過去の超新星爆発は暗かったのではないか、などを考慮し、他の観測事実から一つ一つつぶしていく必要があります。

暗黒エネルギーというのは、現在知られている理論では説明できないので、このような名前になっています。正体は全くわかりません。これが解決してきれいな理論におさまることができるようになれば面白いですね。

林田

とても解り易いので感激いたしました。

質問させてください。

PhysicsTodayのHPにあるグラフなんですが、

超新星の位置が“加速ゾーン”に分布しているから、

“宇宙は膨張しているという結論”になるのだと思います。

しかし、

素人目に見ると・・・

普通に“直線”に近い分布であり、

誤差を考えるなら、

加速でも減速でもない

“等速ライン”(というものがあるなら)

という発想はなかったんでしょうかね?

ハシクレさま

ありがとうございます。

最後のFig.4のことをおっしゃっているのだと思います。確かにみづらいですね。この図は宇宙の全体像(誕生してから現在、未来まで)を描いたものなので、解りづらくなっています。

これらの曲線は、相対論から導きだされる宇宙の方程式によって描かれる曲線です。この方程式の中にはいろいろな変数があります。物質やエネルギーの密度、空間の曲率などがそうです。この方程式によると、宇宙が誕生してからずっと同じ速さで膨張し続けることはできないのです。

研究者がよく見るのはFig.3です。レッドシフトと明るさで描くと、宇宙に物質も何も無いケース、物質があるケース、さらにエネルギーがあるケースなどが、直線で見分けられます。これによると、暗黒エネルギーがあるシナリオが正しいことがわかりますね。

林田

Fig.4は、明らかに“曲線”ですね。

Fig.3が、誰が見ても“直線”に分布しているように見えるのでは?

つまり、

超新星は、Accelerating universe” と “Decelerating universe” の間に分布して見えるということなんですが・・・?

ハシクレさま

Fig3とFig4は軸にとっているものが違います。明るさを縦軸に、レッドシフトの度合いを横軸にとっているFig3で直線にみえるものを、宇宙の大きさを縦軸に、時間を横軸にとっているFig4におきかえると、曲線になります。(「等速ライン」はFig4では直線に見えるはずです。)

Fig3での加速宇宙と減速宇宙の間にあるものは「宇宙の中には物質がない場合のEmpty」シナリオです。このEmptyの線より、加速宇宙の領域にデータがある、ということです。

林田

スイマセン、

・・・お仕事の邪魔をしているようで、心苦しいのですが、

Fig.4はどうでもいいのです。

ソール・パールマター博士は、

ハッブル望遠鏡での観測前に“宇宙は減速している”と、

発表しているのです。

それが、

1997apという超新星の発見がきっかけで、

“宇宙は加速している”と発表し、ノーベル賞をもらったわけです。

つまり、

それほど“誤差”によって、

180度、解釈が違うのがFig3の図です。

加速も減速もしていないというラインはどこにあるのでしょうか?

ハシクレさま

こちらこそ説明がわるくて申し訳ありません。

加速も減速もしていないラインというのは、Fig3のピンクと青の境目ですね。

誤差はとても重要な指標です。

天文物理では、装置の性能や、みている天体についてわからないこと(たとえばローカルでの天体の動きや光が届くまでに障害となるもの)を不確定要素として計算します。

それがエラーバーとよばれるもので、データの点の上に縦方向にのびている棒です。この範囲内のどこかに正しい値がある、という棒です。

たとえば装置の性能が悪かったり、天体についてよくわかっていなかったりすると、このエラーバーは長くなり、それだけデータが信用できないものということになります。

観測・実験で起こりうる不確定要素をすべて考慮して、結果として加速領域にある、ということが確実にいえるということです。

これが、データ量や少なかったり、不確実性が高かったりすると、結論は出せず、「減速しているように見えるがデータが不十分であり、確実なことはいえない」ということにもなります。

林田

もちろん、

発表する立場としては、

“観測・実験で起こりうる不確定要素をすべて考慮して、結果として加速領域にある、ということが確実にいえる”

と言わざるを得ないのですが、

この場合、

「加速しているように見えるがデータが不十分であり、確実なことはいえない」

と言うべきではないでしょうか?

林田さま

他の惑星にも、超新星爆発の際発する光の独特のスペクトルはあるのでしょうか。

林田様

高専の入学者課題で参考にさせてもらいます。

ところで、超新星爆発からでた光は、宇宙空間を通り地球にたどり着くまで、ほかの物質に吸着され、それにより、スペクトルに他の吸収線は現れないのでしょうか。

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