フルモデルチェンジ!新型ASIMO

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ついに登場した新型ASIMO。2004年以来のフルモデルチェンジです。

日々ASIMOにかかわっている者のとして、すごいすごいすごいの連続でした!!

自己紹介が遅れました。はじめまして大崎と申します。2009年以来、未来館のロボット担当として展示やイベント、未来館内外でのASIMO実演の開発に携わっております。

11月8日、新型ASIMOの記者発表に参加したので、直接、見聞きしたことをご報告します!


記者発表は、本田技研工業の伊東孝紳社長と本田技術研究所の山本芳春社長による挨拶から始まりました。そこで語られたのは、「技術は人のために」を目指すホンダのASIMOにかける熱いエンジニア魂です。

今回の開発はなんといっても、福島の原発事故が転機だったとのこと。

ASIMOに助けを求める声が、数多く会社に寄せられたそうです。震災直後にホンダがTwitter上でASIMOについて異例のツイートを行ったことをみなさんも覚えているのではないでしょうか?

そうした声に応えようとしたのは、創業者・本田宗一郎氏の精神が息づく社風でしょう。氏が創業当時、奥さんの買い物を楽にしようとエンジン付きの自転車を作ったことは有名です。困っている人のことを考え、世の中に貢献するべく知恵を絞り、汗を流すエンジニア集団だからなのです。

続いて行われた新型ASIMOのデモンストレーションでは、凸凹路面歩行。20mmの段差を難なく越えます。足首がとても柔軟で、上体は安定しています。


続いて、ジョギング並みの時速9km走行。歩行経路や着地位置の予測が以前より向上しています。


そして驚いたのは片足立ちジャンプ(ケンケン)による前後左右移動両足ジャンプ両足ジャンプ旋回、さらに後方走りを披露。すごすぎます。

実は今回の発表では、最近の人型ロボットがデモンストレーションでよく見せる両足ジャンプをするのではないかと思っていました。

しかし、130cmのサイズのロボットがバンバンバンと音を出しながらジャンプし旋回するのは想像以上。圧巻です。

思わず拍手してしまいました。

新型ASIMOの詳細な仕様や主な変化はプレスリリースにも出ていますので、日々ASIMOを見ている私から見た大きな変化を8つ紹介しましょう。

1.見た目

写真のように以前より丸みを帯びています。目立った変化は足首でしょうか。

まわりがすっきりしています。特に足の付け根がこれまでと大きく違いほっそりしていますね。

足首も前より細く、動かせる範囲が大きく広がっています。

これにより20mmの段差のある凸凹路面も歩けるようになったのでしょう。

何よりこんな細い足首で9km/hで走ったり、片足ジャンプをするのに耐えられるのは驚異です。

一体どんな材料や構造をしているのでしょうか?

また、足首の前後の可動域が広がったためなのか、アキレス腱側のカバーが2段になっていて、かっこよいです。

2.動き

動きが全体的に機敏です。

そして今回の運動性能で最も感激したのは、走る→歩く→後ろ歩きするなどの連続動作ができることです。これはすごいです。

実はこれまでは、それぞれの動作の間には空き時間が必要だったのです。

未来館などでのASIMO実演では、この空いた時間を台詞などで埋めるのがポイントの一つでした。

3.サッカーキック

未来館でもおなじみのボールキック。蹴られたボールはこれまで地面を転がっていたのに、今回は勢いよく放物線を描きました

以前は片足立ちから足を振るだけなのに、今回は連続動作ができるためなのか、助走をつけてボールの中央を正確に狙ってトーキック(つま先蹴り)!

末恐ろしいです。

4.指

細い指ですがそれぞれの指がきちんと独立して動きます!これまではグーパーだけでしたが、これでグーチョキパーのじゃんけんができます!

とゆうのは、小さな話で、なんと手話も可能になりました。手の自由度がそれまでの1から13へと大きく増えたため、細かな動きまでできるようになったのです。 

そればかりではありません。なんと手に力触覚がつきました。これによって、ものを掴んだときに、ものが手に触れていることを感じるだけでなく、ものを置くときにも、ものが置かれたときのに力の変化まで読み取って、安全に置くことができるのです。

そのために、なんと5本全ての指にそれぞれ6軸力センサがつき。手の平には44chの触覚センサがついています。

手の多自由度と感覚を組み合わせることで、ビンのふたを開け、コップにそそぎ、そのコップを置くこともできるようです。両手を器用に独立して使えるところもポイントです

そしてこんな細い指で、力をかけられるのはモーターではなく油圧を使っているからのようです。後で説明をしてくれた方に2度聞き直しましたよ。すごいですね。

また、指の動かし方はマスタースレーブ式ということなので、もしかすると宇宙船のロボットアームのように人が操作できるのかもしれません。

5.知能

今回の変化の中で、最も力が入っていたのは知能です。

「自動」から「自律」へがキーワード。

いままでは人がASIMOにあわせて行動していたのを、今度はASIMO自らで判断して動くところがポイントです。

新型ASIMOは蓄積されたデータを基に推論して少し先を予測します。それによって歩いてくる人の歩行動作を予測して道を空けるようです。

また、予測に使うデータは自分だけで調べるのではありません。

自分の近辺は、自身で推論して行動しますが、少し離れた距離については、周辺環境にセンサが設置されていれば、その情報を使って行動したり、他のASIMOとも連携して行動する。つまり単独ではなく、環境や他のロボット同士が情報ネットワークでつながった「ネットワークロボット」になっています。逆にASIMOが外部にあるパソコンを操作してスライド発表をするようなことも可能です。

記者発表の会場となった建物には、いたるところに空間の測量で使う「レーザーレンジファインダ」が取り付けられていました。広範囲で実験していたことがうかがえます。

6.音声認識

同時に話した3人の声を聞き分けられます。デモンストレーションでは、3人の女性がASIMOを囲み、同時に注文していました。少々異様な光景ですが。

しかし注文後、ASIMOはきちんとそれぞれの注文内容を繰り返していました。人間を超える能力ですね。新しいロボットの可能性をみました。

聞きわける方法は視覚センサーと聴覚センサーとを連動して行っているとのこと。

ASIMOには複数の聴覚センサ(マイクロフォンアレイ)がついており、各マイクに到達する音の時間ズレに注目して音を分離しています。これは各マイクに入る音の時間ズレから音がやってきた方向が分かるので、それと視覚センサと対応付けることで話者を特定し、それに基づいて音声を分離するものと思われます。

7.耳?

ASIMOの頭の両側にはライトがついています。一見「耳」に見えますが、従来のASIMOでは動いているときは常に光っていて稼働状態を示すサインでした。

新型では、人がASIMOに話かけたときにまるでオーディオ機器のレベルメーターのように変化していました。きちんと話を聞いてるよ!と伝えているかのようです。↓の動画で耳のライトに注目してください。


実演中にASIMOに話しかけても、表情がないので聞こえているのかどうかわからず、実は不安になっていました。そうした話し手への配慮までされています。

8.モーター音

ASIMOを間近でみて気が付くのはです。モーター音です。

生の迫力のある音が聞こえるのです。

その音が新型では以前より高い音で、大きくなっていました。上にあげたそれぞれの動画の中で歩行や走行動作にあわせてキーンキーンと音がしているのがわかりますか?

身体の動きはこれまでと同じハーモニックドライブ減速機を使っていますが、モーターが新しくなっておりかつ、力強い動作をさせるために出力をあげて動作させているからとのことです。

以上、ざっくり8点について紹介しました。

全体を通じて改めて感動したのは、やはり存在感がものすごいですね。130cmの高さのロボットが、これだけの動きを正確に繰り出すときの迫力は、写真や動画では正しく伝わりません。

その存在感を生み出しているのはなんといっても完成度の高さです。細部に至るまで手を抜くことなく、そして真っ直ぐに良いものを作ろうとしていることが伝わります。なんというか、、開発者たちはホント好きなんでしょうね。ASIMOのことが。「我が子の成長をみるようだ」と本田技研工業の伊東社長もおっしゃっていました。

以前のASIMO発表から随分と時間がたち、特に昨今の厳しい経済事情の中で、ホンダのロボットは今後どうなるんだろう?とASIMOに関わる身としてずっと心配しておりました。

発表のメイン会場の側には同時発表されたロボット技術のブースがあり、白いジャンパのエンジニアが自分たちの技術を熱く語ってくれました。そんなエンジニアの話を伺っているとフルモデルチェンジしたASIMOの影に、長い年月表に出ず、その裏で理想を追い求めていた多くのエンジニアの血と汗と涙を感じられ、日本のものづくりの底力に触れた気がして勇気がわいてきました。今回の発表はショールームではなく、研究所内で行われたこともポイントだと思います。

私がここで感じた興奮を未来館で伝えられるよう、導入に向けてがんばります!

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この記事への2件のフィードバック

新型ASIMO、本当にすごいですね!

ニュースを見て感動しました。日本の凄まじい技術力の象徴ではないでしょうか!!

未来館では実演しないのですか?

コメントいただきありがとうございます。

いやーホントすごいですよ。人知れず努力を積み重ねる日本の技術力の象徴ともいえるでしょうね。

未来館でも新型の同僚(ASIMO)とはやく共演したいです。

ただし導入はまだ未定です。先端のロボットが開発元を離れて安定して使えるようになるには、乗り越えないといけない技術面もあるのではないかと思っております。

最初にASIMOが発表されたときも、レンタルで動かせるまでに1年ほど時間がかかりましたからね。当時の発表によるとレンタルを考えてシステムを安定して使えるように詰めたようです。今回はどうなんでしょう?

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