大腸菌とじゃんけんぽん!

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大腸菌と「じゃんけん」と言っても、大腸菌から5本の指がでてきて、グー・チョキ・パーをだすわけではありません。
'PRS game'
人と大腸菌それぞれが、3種類ずつの中から選んだり、作り出した化合物の生物学的な関係で勝ち負けが決まるのです。しかも、このじゃんけん、判定もジャッジ専門の大腸菌が担当。勝ち負けを異なる色で知らせという念の入れよう。

 

こんなユニークな研究をしているのは、東京工業大学の学部生13人。大学スタッフや院生のサポートを得つつ、チームを組み、このじゃんけんゲームを“遺伝子工学のロボコン”ともいわれるiGEMinternational Genetically Engineered Machine Contest)という国際コンテストにエントリーしています。アジア予選を突破し、現在、マサチューセッツ工科大学(MIT)での本戦を目前に控えたところとか。

 

さて、こんな楽しい研究発表にも出会える、「細胞を創る」研究会4.0102728日に大阪で開かれ、私も参加しました。この会は、若手研究者を中心に4年前に設立。毎年300人程度の会員が研究発表やシンポジウムに参加し、様々な議論を繰り広げる活気ある研究会です。ここには、さまざまなパーツを材料にして、生物の最小単位である細胞を「創る」ことにこだわる面々が集まっています。

シンポジウムでは、会の中心となる研究者たちが、「ゲノムを創る」「『生命』のイメージを探る」「「胞内システムを創る」「『進化』で創る分子・代謝・細胞」「つくる核酸」という5つのセッションに分かれて講演しました。今回は、東工大をはじめとした大学院生が多く集まるポスター発表の様子をご紹介します。

 

最初に話を聞いたのは、東工大の学部生の北島貴司さん(写真)。彼は、冒頭で述べたような人間と大腸菌の中で、大腸菌がどの手を出すかを決めるところを、大学院生の畑敬士さんの指導を受けながら担当しています。性質の違う3種類の大腸菌をグー・チョキ・パーと想定し、それらを混ぜ合わせ、生存競争で生き残ったのが、大腸菌の手になるわけです。 

ある大腸菌は他の大腸菌が苦手な化合物を分泌して攻撃したり、別の大腸菌は、とにかく増えることで他を駆逐したり。うまい割合で混ぜ合わせると、どれが生き残るかは運次第に。その微妙な割合を探すために、この競争をコンピューターでシミュレーションしています。将来は、この研究をもとに役割の異なる複数の微生物を状況にあわせて制御できるようになるかもしれません。

[caption id="attachment_8686" align="aligncenter" width="173" caption="東工大の北島さん"][/caption]

リンク: じゃんけんゲーム  http://2011.igem.org/Team:Tokyo_Tech

東工大iGEMチーム:http://www.titech.ac.jp/topics/news/detail_2375.html?id=topics

 

次に話を聞いたのは、RNAとタンパク質を合体させて生体反応を制御する「RNAスイッチ」の研究をしている京都大学iPS細胞研究所の遠藤慧さん(写真)。細胞にDNAを加えて遺伝子として働かせようとすると、ゲノムのDNAに組み込まれ、いつまでも細胞に影響を及ぼし続ける可能性があります。でもRNAならば、役割が終われば分解されてなくなります。

「たとえばiPS細胞を作る時も、今はDNAの遺伝子を細胞に入れますが、いつまでもその遺伝子が残っているとがんになる危険性だってあります」と遠藤さんは語ります。必要なときにだけ細胞の中で遺伝子に働いてもらう、そんな安全スイッチができれば、私たちも安心ですね。

[caption id="attachment_8687" align="aligncenter" width="300" caption="京大の遠藤さん"][/caption]

 

それから、下の写真のような白黒の丸を線でつないだ不思議な図を見かけました。このポスターの発表者は、大阪大学大学院理学研究科の北島顕正さん。早速説明を伺いました。「互いに線でつながった白黒の丸が、事前に決めたルールに従い、周囲の黒丸の数に応じて、色を変えたり、分かれたり、消えたりします。すると場面ごとにオセロのように白黒の丸の数が増えたり減ったり。しかも個々のルールを入れ変えると、そのデザインが大胆に変化。ある時は、小さな同じ形のユニットが個別に増えたり、同じデザインのパーツが成長してフラクタル模様を創ったり。」その変化を見ていると、なぜか生物的な動きや生物の進化をイメージしてしまいます。「この動きで生物の活動や進化が表現できるのではないか?」と本人も思案中。

[caption id="attachment_8777" align="alignleft" width="150" caption="①白丸と黒丸を線でつなぐ"][/caption]

[caption id="attachment_8792" align="alignleft" width="150" caption="②ルールに従いデザインが変化"][/caption]

 

そして、このポスター会場で、とっても目立っていたのは、東京大学の田端和仁さん。大胆なアロハシャツで颯爽とこの研究会の運営を担当しています。「細胞を創る」研究会のモットーは、「自分たちの研究会は自分たちで運営」。研究と大会準備に精力的に取り組み、両立させていました。

さて、田端さんの研究テーマは「小胞輸送」。皆さん、聞いたことがありますか? 小胞体は、細胞内のタンパク質を作る工場。必要に応じてできてくるタンパク質は、細胞膜の表面や核の中など、それぞれの役割を果たす場所に運ばれていきます。これを担っているのが、小胞体を中心とした小胞輸送で、田端さんはそのメカニズムを解明しようとしています。

ご自慢の実験は、特別な顕微鏡の下で輸送小胞を人工的に作り出したこと。生体膜の材料である脂質や輸送の役割を担うタンパク質を組み合わせて、小胞輸送の再現に成功したそうです。

でもどうしても気になるアロハシャツ。「一年中着ています! 国際学会でもこれを着て発表するので、外国の研究者から購入元を聞かれることもあるんですよ」と田端さん。この日は、渋いブタさんを散りばめたアロハでした。確かにお似合い!

[caption id="attachment_8729" align="aligncenter" width="300" caption="東大の田端さん"][/caption]

「細胞を創る」研究会は、来年は東工大で開催予定です。この研究は、細胞を構成する細胞膜、細胞がもつタンパク質合成能力や自己複製能力、そして細胞に保存された遺伝情報などを人工的に再現し、本当に生きている細胞=生命を創りだすことを目指しています。研究の過程で、生物の進化の謎を解くヒントも得られるかもしれません。そんなダイナミックな研究に興味があれば、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか?

さてさて最後に、宣伝です!こんなユニークな「細胞を創る」研究会のメンバーと、1119日(土)にサイエンスアゴラ2011でワークショップを開催します。タイトルは、「世界を救う? 救わない? 新しい生き物をつくるということ」。

飲むだけでイケメンになれる変身ドリンクや持ち主の気分次第で変幻自在に変化する観葉植物など、自分を作り替えたり、新しい生物を創ることを皆で想像し、そのメリット・デメリットをわいわいガヤガヤ談義します。そして、その過程を通して、新しい科学技術が社会に与える影響を評価する、テクノロジーアセスメントについて考えてみます。あなたも「創る」研究の世界で、未来をシビア~に評価してみませんか? 参加者募集中です。下記より、ご応募ください。

http://www.miraikan.jst.go.jp/event/110923156562.html

 

 

[caption id="attachment_8739" align="aligncenter" width="150" caption="あなたもいかが?イケメン変身ドリンク"][/caption]

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この記事への2件のフィードバック

面白そうですね、WSぜひ参加します。

しかし…久しぶりに読むと、やはり科学の研究分野とは「難解」ですね。頭をなるべくやわらかくして向かいます。

「素直」な感想、ありがとうございます。ワークショップには、研究者が4.5人参加。企画の打ち合わせは、どんどん発散して、収集が難しい。この分野の研究者は、妄想癖があるのか?それとも研究者の必須アイテム?そんな視点からWSで研究者観察も面白いかも。お待ちしてます!

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