「ゲノム研究」の新しいルール

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約32億個の文字(塩基)が並ぶヒトゲノム。2003年の解読終了宣言以来、ヒト1人に含まれる2セット分64億個の文字配列の個人差が、体質などの個人差につながり新たな医療の鍵になるのではと、様々な研究が続けられています。

そのような「ゲノム研究」、実は、研究を進める上でのルールがあるのはご存知でしょうか。そしてそのルールが、まさに今、変わろうとしています。

1.「ゲノム指針」

ゲノム研究は、DNAサンプルの提供が無ければ進みません。ですが、解読されたDNAの配列は個人情報とも言えますから、その扱いや提供者への説明など、慎重を期する必要があります。そして、そのやり方が研究者ごとに異なってしまっては、サンプルを提供する側も困ってしまいますよね。

そこで、2001年に文部科学省と経済産業省、厚生労働省の三省が協力して、研究者が守るべきルールを定めました。それが、「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」、通称「ゲノム指針」というものです。国内の大学や研究所のゲノム研究は、この指針に添った形で行われています。

この指針、2004年に一度、全面改正されたという経緯があります。その前年に成立した個人情報保護法を受け、遺伝情報は個人情報であるという観点から大幅な見直しが行われました。

そして、今回もまた大きく改正されようとしています。何故でしょうか。

実は、ゲノム研究の環境やスピードが、大きく変わってきているのです。1990年に始まったヒトゲノム解読計画では、1人分のゲノムを解読するのに13年もの年月を必要としました。それが、今では「超高速(次世代)シーケンサー」といった自動配列読み取り装置の登場や解析プログラムの発展により、やろうと思えば1日で解読できるようになったのです。費用も当初に比べれば格段に安くなり、膨大な遺伝情報を研究で使えるようになりました。

それだけたくさんの遺伝情報を扱えるようになったのですから、研究の計画時点では予想もしなかったことが分かってくるかもしれません。そして、さらなる研究のために、追加でサンプル提供者の情報が必要になることもあるでしょう。たとえば、病気に関連していそうな遺伝子が見つかったとしたら、サンプル提供者が発病しているかどうか、発病している人としていない人がいたら、その差を知るために喫煙歴や食生活なども調べたくなるでしょう。しかし、現行のゲノム指針は、そんな研究環境の進展についていけていないのが現状です。そこで、今回の改正となってくるわけです。

2.改正のポイント

さて今回の改正、ポイントはいくつかありますが、代表的なものをご紹介しましょう。

まずは、上でも触れた追加サンプルの取り扱い。これまでのサンプルは提供者が分からないように匿名化されていたので、追加の情報を得たいと思っても不可能でした。しかし、今回の改正では、サンプルと提供者の対応表を残すので、追加の情報が得られるようになります。

また、遺伝情報の開示についても言及されています。提供者からすると、自分のDNAの解析結果が、病気とどのように結びついているのか、気になると思います。しかし、まだまだ研究の途上であったり、ハッキリしたことが言えない結果であったりする場合には、結果を告げることはかえって誤解を招くこともあり得ます。そのような場合には、提供者へ結果を開示しないことも選べるようになります。

そして、そのサンプルを提供する前の、インフォームドコンセントの内容。上で述べた、サンプルの追加提供や結果の開示について、将来のゲノム研究にも対応できるよう説明する内容が見直されます。

3.あなたの考えは?

と、ざっと挙げてみましたが、いかがでしょうか。研究者側の視点、サンプル提供者側の視点、様々な立場の見解があると思います。

例えば、ゲノム研究の倫理的・法的な課題などを研究しているグループ(文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「ゲノム支援」のゲノムELSIユニット)が、今回の指針の改正に向けて提言を行っています。あわせて見てみると、また違った視点で考えることができるかもしれません。

そして、このようなゲノム研究、今後どのように進めていくべきか、皆さんはどう思われますか? 今回のゲノム指針の改正については、パブリックコメントが募集されています。研究者の方はもちろん、そうでない方もサンプルを提供する場面や、研究成果の恩恵にあずかる場面もあるかもしれません。思うところがある方は、ぜひ下記のページから意見を書き込んでみてください。3月3日までです。

「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」の見直しに関するパブリックコメント(意見公募)の実施について

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この記事への1件のフィードバック

研究者や研究機関への提案も必要ですが、民間会社などがやっている遺伝子検査についてはどうなのでしょうか?

今は特に規制もないまま玉石混交といったところで、ちゃんと複数の論文をもとにしっかり判断しているところもあれば、安直に1つの遺伝子型と病気や性格を断言しているところもあるのが実状です。占いだと割り切ればいいのでしょうが、度が過ぎると正規の研究や診断にも影響がなきしもあらず?なのではと思いますが…

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