邦画を科学する ~ゴジラ編~ ゴジラVS生物多様性

このエントリーをはてなブックマークに追加

こんにちは、科学コミュニケーターの久田です。

前回の「ガメラ編」に引き続き、今回も生物多様性のお話です。

今回のテーマは「遺伝資源」。

品種改良新薬開発では、いろいろな動植物の特徴が利用されます。それは言い換えれば、その生物固有の遺伝子を利用するということ。今、遺伝子資源として注目されているのです。

最近でこそ、クローン技術遺伝子組み換え作物などで「遺伝子」という言葉はよく知られるようになりましたが、日本が誇る特撮映画「ゴジラ」では、20年以上も前にこのテーマが取り上げられていました。

今回ご紹介するのは『ゴジラVSビオランテ』(1989年)。この映画の冒頭を観れば、現代の遺伝資源をめぐる問題が見えてきます。

私物の映画パンフレット(ゴジラVSビオランテ)

私物の映画パンフレット

 (以下、映画のストーリーについて触れています。)

『ゴジラVSビオランテ』のあらすじ

前作『ゴジラ』(1984年)でゴジラに襲われた直後の東京。瓦礫に残されたゴジラの細胞(G細胞)をめぐり、怪しげな組織が抗争を繰り広げている。やがてG細胞は一人の遺伝子工学研究者のもとへと渡るが、そこでも抗争が起こり、彼は愛娘を失ってしまう。遺伝子工学を駆使して娘の存在を残そうとする研究者。しかし、その思いとは裏腹に、彼の研究は植物怪獣ビオランテを生みだしてしまう…。

この映画では全編を通して「暴走する科学(特に遺伝子工学)への警鐘」が描かれています。遺伝子工学の問題というと、怪獣ビオランテを生み出すような遺伝子操作の危険性がよく話題になりますが、今回、注目したのはその前の段階。ゴジラの遺伝子を含む「G細胞」をめぐる人と人との争いです。

まず、G細胞がどれほど貴重な資源なのか、見てみましょう。

ゴジラは核実験にも耐える怪獣です。その生命力の秘密がつまった遺伝子の価値ははかり知れません。映画では、砂漠でも育つ植物や放射性物質を食べる(!?)バクテリア、そして怪獣ビオランテがG細胞から作られます。これほどすごい細胞を世界が放っておくはずがない、というわけで、映画冒頭のG細胞争奪戦が繰り広げられます。

では、G細胞が本当に存在したら、私達はどんなことを思うでしょう。

例えば、外国の企業が日本で採ったG細胞から膨大な利益を得て、でも日本には何の見返りもなかったとしたら、納得できるでしょうか?

また、ゴジラは海を移動します。日本が必死で撃退したゴジラが、公海(どこの国にも属しない海)上で倒れて、それを捕まえた国や企業がG細胞一人占めにしたらどうでしょう?

いろいろな不満が出てきそうです。

現実世界で、まさに同じことが起きています。遺伝資源の多くが発展途上国にある一方、そこから利益を得ているのは主に先進国です。さらに、上で採られた遺伝資源は、採った人のものになっています。このやり方は公平でしょうか?

普段、先進国の視点で物事を見ている私達も、このように立場を変えて考えると、発展途上国の気持ちがわかってきます。

では発展途上国の立場に立って、遺伝資源を保護し、利用するには、どんな方法が良いでしょうか?

「発展途上国に保護区を作ってもらう代わりに、先進国はそれに見合ったお金を払ってあげよう。」

「保護区になる地域にもともと住んでいた人には、もっと住みやすい環境を用意してあげよう。」

そんなところでしょうか。

この提案、ゴジラ映画に置き換えるとこうなります。

「ゴジラが暴れても日本人には我慢してもらって、代わりに壊れた街を直すお金を払ってあげよう。」

「いっそ日本人には他の国に移住してもらって、日本列島をゴジラ保護区にしてしまおう。」

「ちょっと待った!!!」

こんな提案、イヤですよね。つまり、お金の問題だけではないのです。ではどうすればいいのでしょう。

…私にも正解はわかりません。 だからこそ、世界中で話し合うことが大切なのだと思います。COP11では各国の政策担当者によって、そんな話し合いが行われます。そして、先日行われた世界市民会議World Wide Views では、世界中の市民が一足先に話し合いをしました。その結果の一例がこちらです。

World Wide Views投票結果

このグラフは、公海でとれた遺伝資源に対価を支払うべきかどうかを、日本と南アフリカで尋ねたもので、上が日本、下が南アフリカのデータです。このデータには、数字以上に、話し合った人たちの思いがつまっています。他の国、他の質問についてのデータもWorld Wide Views公式ページで公開中。(最初は英語で表示されますが、右側のSelect languageで日本語を選べば日本語で読むことができます。)

このページに生物多様性を保護するための答えがあるはずです!

それにしても、今回の『ゴジラVSビオランテ』にしても、前回の『ガメラ2 レギオン襲来』にしても、現代の私達の課題が15年以上も前に取りあげられていたことには驚かされます。日本の特撮映画の先見性ってすごいですね。

それでは最後に、生物多様性関連イベントのお知らせです。

9月29日(土)、未来館ではWorld Wide Views関連イベント、サイエンティスト・トーク「生物多様性の恵み~コケが水を浄化する」を開催します。このトークでは、水中の金属を浄化する機能をもつコケの話を、研究者から聞くことができます。

しかも、9月29日は中秋の名月の前日。ということで、未来館では開館時間を21時まで延長して、お月見イベントを開催します! この日は通常料金で、普段は見ることのできない夜の暗闇に浮かぶGeo-Cosmosの姿や、特別プログラムをご覧頂けます!

植物怪獣ビオランテのあとは、未来館でコケめぐり&お月見しませんか?

特別イベントの話は次の記事でも取りあげています。こちらもあわせてお楽しみ下さい。

今年もお月見来た~! ~中秋の名月 未来館でお月見! 2012~

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

この記事への2件のフィードバック

初の投稿で失礼します。
自分と趣味が被っているので読んでしまいました。
次は3式機龍の事を!!(無理じゃなければ)

雪月花さま

管理人その3です。

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

久田は10月より、新天地でがんばっております。

本人から雪月花さまへのお返事をあずかりましたので

コピペします。

ーーーーーーーーーーーーーー

雪月花さま

初投稿ありがとうございます。

3式機龍というと、2002年~2003年のメカゴジラですね。

DNAコンピューターという最新の科学トピックスを取りあげつつ、ロボットの悲哀のようなものを感じさせる、いい作品ですよね。

人とロボットの交流というと、邦画「ジュブナイル」や「ガンヘッド」、洋画「WALL・E」や「アンドリューNDR114」なども個性的で、私は好きです。

いい映画は、何年経ってもいいものですね。

久田旭彦

コメントを残す