"CGとVRの父" アイバン・サザランド博士の伝える力

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はじめまして、こんにちは。

10月入社の新人、長倉克枝です。獣医学部出身の元新聞記者ですが、ロボットと宇宙が好きです。どうぞよろしくお願いいたします!

さて、みなさんはパソコンで絵や図を描きますか?マウスやタブレットペンを使って簡単に描けますよね。

そんな今では当たり前となった、思いのままにコンピュータに入力する仕組みを作り、コンピュータ・グラフィックス(CG)を誰でも使えるようにしたが、この方、アイバン・サザランド氏です。


マジシャン?

いえいえ。「CGとバーチャル・リアリティ(VR)の父」と言われる、伝説のコンピュータ科学者です。

来日されると聞き、どうしても会いたかったので(仕事を休んで)京都まで会いに行って来ました!

でもこの方、どうしてこの不思議な動きをしているんでしょう?

 

「子どものころからものづくりが大好きだった」

11月13日、100人の小学生を対象に京都大学で行われたサザランド氏のレクチャー。

木の板や体重計、ほうき、ドライヤーといった身の回りのものを使い、サザランド氏も子どもたちも体を張って物理法則を学びました。


まるで、アイバン先生の実験教室!?

「アイバンときみ、どっちが重い?」――。

てこの原理を学びます。

今度は大道芸人?

いえいえ、これも物理の実験。長いほうきは、短いほうきと比べてゆっくり倒れるからバランスをとりやすいですよね。

「背が低い赤ちゃんは倒れやすい。だから手足4本を使ってからだを支える。虫はもっと低いから6本足。物理法則は生き物にも通じるんだよ」とサザランド氏。


子どものころ、掃除機のホースを逆さまにつけて遊んだ、というサザランド氏が当時の実験をドライヤーで再現。冒頭の画像もこの実験の一幕です。

飛行機が空を飛ぶ根拠となっている「ベルヌーイの定理」を学びます。

小学生からの質問には、

「ものを作るのが子どももころから好き。科学はただ面白いからずっとやってきたし、これからもずっとやっていく。決して引退はしないよ」とにっこり。

 

「科学は楽しいと子どもたちに伝えたかった」

このサザランド氏、いったいどんな人?というと、現役のコンピュータ科学者です。最近は米国オレゴン州のポートランド州立大学で、効率よく計算をするコンピュータ技術の研究をしています。

このたび京都にいらしていたのは、1960年代にCGやVRの基礎を築いた業績が認められて、科学や文化で著しい業績を残した人におくられる京都賞を受賞したからなんです。

膨大な量のプログラミングをしないとコンピュータを扱えなかった60年代、ペンを動かすだけで画面上の図形を簡単に操作できる「スケッチパッド」と呼ぶシステムを開発(博士論文の一環として!)。人がコンピュータと対話をするようにして使いこなす仕組みを初めて作りました。



右手に持ったライトペンで、コンピュータに入力して画面を操作するサザランド氏(提供:稲盛財団2012)[/caption]

その後、ヘリコプターのパイロットの死角を映像で見せて操縦しやすくするために、三次元の画像を目の前に提示して、目の前にない世界をあたかもそこにあるかのように体験する「ヘッドマウント・ディスプレイ」を開発、80年代に研究が活発になるVRの礎を築きました。

また、弟子たちは独立して、「トイ・ストーリー」などCGアニメ制作のピクサー・アニメーション・スタジオやデザインソフト会社として世界最大のアドビシステムズを設立。CGやVRに関わる人でサザランド氏の恩恵を受けていない人はいないといっていいでしょう。

そんな「CGとVRの父」がどうして子どもたちに基本的な物理の実験を?

「科学は楽しいと子どもたちに伝えたかった。自分の目で見て触って確かめてわかるものを伝えようと思った。だからあえてコンピュータの話はしませんでした」とサザランド氏。

科学を心から面白いと思い、子どものころからものづくりをしてきたそうです。

1時間半のレクチャーは、先生も生徒も終始わくわくと弾んだ明るい表情。子どもたちはサザランド氏の問いかけに応えて勢いよく手を挙げたり、「ショート!」などと簡単な英語で答えたり...。

見ているだけの私もあまりにも楽しかったので、子ども向けのワークショップはよくやっているのかと伺ったところ、笑って、「やったことはないし、準備をしてこの日を楽しみにしてきた」とのこと。

面白いことを、相手に伝えたいーー。

「誰にでもわかりやすいように伝える」というサザランド氏の真摯な思いが、コンピュータを使いやすくする画期的なインターフェイスの開発につながったのかなあ、と小学生へのレクチャーを見ていて思いました。

 

サザランド氏は"吉田松陰"、"山口百恵"

ところで、研究者にとっては、サザランド氏はどのような存在なのでしょうか?

コンピュータ科学の第一線の研究者たちに伺うと...

「CGとVRの思想を築いた。"吉田松陰"のような思想家」(VRの研究者)。

「サザランド氏は、すごいものを作って現場を退いたあとは全く公の場に出ない"山口百恵"」(拡張現実の研究者)

国立京都国際会館で開催された、京都賞受賞記念の一般向け講演会は、平日の昼間ながら満席。一般の方のほか、全国津々浦々から情報分野の研究者が集結しました。

「ずっとお会いしたいと思っていました」「サザランド先生が開発したシステムを使ってCGを作っていました」ーー。

講演前の会場。学生や若手はもちろん、著名な研究者たちも口々にサザランド氏について語ります。まるで山口百恵復活コンサートでも始まるかのような熱気に包まれました。

講演はマクルーハンの有名な言葉「メディアはメッセージである」にひっかけて「メディアとメッセージを区別する」というテーマで、ご自身の仕事についてお話されました。

こちらの講演もまた素晴らしかったのですが、この話はまたいつかどこかで...。

おまけ:

記念写真も快く一緒に撮ってくださったサザランド氏。

家宝にします!

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