暗黒物質は爆発だ!宇宙からの報告

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岡本太郎によると「芸術は爆発!」だそうです。

私、ディミに言わせれば「物理学は爆発!」です。

絵や映画など芸術作品を見て感動することがあるよね? 私もあります。

でも昨日、物理学の成果で感動しました。 昨日ビッグニュースがありました。(書きながら、指がふるえています)。

謎の暗黒物質が少しだけ明らかになったみたい!ドキドキ!ワクワク!

 そのニュースとは、43日(日本時間4日未明)に欧州合同原子核研究機関(CERN)がスイスのジュネーブで行った発表です。これまで、理論だけで存在が予測されていた暗黒物質が、実際に存在する証拠を見つけたかも知れないというのです!

 その発表のすごさを知ってもらうために、まずは「暗黒物質」のおさらいをしましょう。

 今から80年ほど前の1930年代から、物理学者は、私たちが知っている普通の物質だけでは銀河の動きを説明できないことに気がついていました。銀河の回転スピードは質量と中心からの距離によって決まります。ところが、実際の観測スピードからすると、観測可能な普通の物質の倍ほどの質量がないと理論と合わなくなってしまいます。

 

 

 

上の図は銀河の中心からの距離(横軸)と回転スピード(縦軸)の変化です。

A: 理論による回転スピード。中心から離れるにつれ、回転スピードが落ちます。

B: 実際に観測された回転スピード。中心から離れても回転スピードはほとんど変わりません!

理論と観測が合わない! 何か他の“物質”があるに違いない!という結論を物理学者が出しました。

この“物質”は、普通の物質とは違い、光(エネルギー)を吸収しないし、放出もしない。さらに光を屈折させることもありません。光で探すことができないので、「暗黒物質(ダークマター)」と名付けられました。

 宇宙論に基づくシミュレーションモデルによると、暗黒物質は宇宙のどこかにまとまって存在するわけではなく、宇宙全体にわりと均等に分散されています。つまり、暗黒物質は、地球にも、どこにでもあるはずです。

 理論から存在するはずだというだけで、今まで暗黒物質についてはあまりわかっていませんでした。最初に答えるべき疑問は「暗黒物質は何でできているか?」 ある有名な理論によると暗黒物質はWIMPweakly interacting massive particles:弱い力で相互作用する大きな素粒子の意味)からできていると考えられています。ほかにも、いくつかの理論がありますが、暗黒物質は質量が大きいはずなので、そこが理論のポイントとなります。

 少し前、今回の発見のプロジェクトリーダーであるSamuel Ting氏は「今回の論文を書く(データを得る)ために18年間、待ちました。データの結果をチェックするチームが全部で6つあります。結果は正しいかどうかを確かめないといけないからです。2~3週間後に発表する予定です」と言っていました。

 その2~3週間が経ち、昨日になって、発表があったわけです。さて、暗黒物質が存在するという明確な兆し、しかし具体的な証明とはまだ言えない、今回の成果を見てみましょう。

 今回の成果を担ったのはアルファ磁気スペクトロメーター(AMS)という観測器です。国際宇宙ステーションに搭載されていて、宇宙線の電子と陽電子の数を計っています(陽電子とは電子の反物質のことで、電子と陽子が衝突すると膨大なエネルギーを放出して消滅します)。通常、宇宙には電子に比べると陽電子はわずかしかありません。もし、高エネルギーの陽電子が大量に見つかったとすると、その発生源として考えられるのは、中性子星(パルサー)や暗黒物質由来となります。暗黒物質の粒子が互いに衝突すると陽電子が生じて、宇宙にある電子と陽電子の比がくずれると考えられているのです。今回、AMSはこのバランスのくずれを観測したのです。

 今回、AMSがとらえた陽電子は、特定の源泉からではなくて宇宙のすべての方向からきていました。また、時間的な変動はなかったそうです。もしこの陽電子が特定の場所から来ていたり、時間変動があった場合は、中性子星から生まれた可能性が高くなります。

 これまでにAMS0.5から350GeV(ギガ電子ボルト)という巨大なエネルギーのある陽電子を40万個も観測しました。

 

図を見て下さい。丸が実際の観測値でその上下の直線は観測誤差の幅を示しています。曲線は暗黒物質の理論から予想される数値です。10250GeVの間で電子/陽電子の比は大きくなります。観測値と暗黒物質の存在を予測した理論がぴったりとマッチしています。

 でも、科学の世界でよくあるのは、すぐにすぐにやった!見つけた!とは言えないことです。時間、時間そしてもっと時間をかけた観測と検証の努力が必要です。100%確かになるまで後もう少しかかりそうです。今回の実験でも、さらに高エネルギー領域(グラフの右端)で、観測と理論が合うかなどの追加のデータがいるようです。

 「かつてないほど誤差の小さい陽電子の測定で、AMSの実力を明らかにしました」とTing氏は言っています。「次の数カ月でAMSを用いて暗黒物質の決定的な証拠を得ることは十分に可能でしょう!」

 続報に期待しましょう。

 ところで、今回の成果の立役者となったAMSはプロジェクトリーダーであり、ノーベル物理学賞を受賞したこともあるTing氏の考案による装置です。中央に2億ドルもする磁石があり、宇宙から飛んでくる宇宙線を検出器へと誘導するようになっています。質量も電荷も同じである電子と陽電子を分別するのが、とくに長けているそうです。

 AMSでは陽電子(電子の反物質)だけでなく、通常の物質とは異なるストレンジレットを検出することもミッションの1つになっています。普通の物質の原子核にある陽子と中性子は6種類のクオークのうち、アップとダウンの2種類が組み合わさってできています。ストレンジレットは、アップとダウン以外にストレンジというクオークが入り込んだ原子核のこと。これも暗黒物質の候補とされています。

 AMSはスペースシャトルの最後のフライトで国際宇宙ステーションに運ばれました。このときのコマンダーだったMark Kelly宇宙飛行士によると、「AMSは宇宙ステーションで行われている科学研究の最高峰だ!」

[caption id="attachment_25302" align="aligncenter" width="430"] "真ん中からやや左にある出っ張ったのがAMSです"[/caption]

 AMSのプロジェクトを実現するのは非常に大変だったそうで、Ting氏自身が「次の40~50年のあいだにこの実験を再びするようなバカな人は絶対に現れないだろう!」と言ったとか。それほど実現に苦労したプロジェクトですから、今後の検証で、暗黒物質の確実な証拠をつかんでほしいものです。

 なお、AMSは大量の高エネルギーの陽電子を見つけることで、その生成源である暗黒物質の存在を証明しようとしていますが、日本には暗黒物質を直接とらえようという装置があります。東京大学宇宙線研究所が岐阜県の神岡に設置しているXMASSです。こちらの話は別の機会に紹介しますね。

 AMSが観測した陽電子が暗黒物質の衝突から生まれたのであると証明できたとしたら、理解できている宇宙の物質とエネルギーは現在の5%から30%になります!(残りの70%はまだまだだ!)

 

図版はいずれもWikimedia Commonsから

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この記事への4件のフィードバック

専門として専攻したことはないので基礎知識はないのですが、ぼくらの世界はどんなふうに出来てるんだろう…とは古代から人間にとって最も根源的な疑問ですよね。細部までは正直わからないんですが、なんか、わくわくします。

銀河の質量が見た目と計算が合わないということで暗黒物質の存在が予測され、

それが検出されたかも知れないということなんだけど、暗黒物質に質量が

あることが疑問だよね。

質量があれば物質は集まる動きをするはずだし。

そこで、重力の反対、反重力をもつ物質が重力を持つ物質が集まっている塊同士の

間に吹き溜まっていると考えてみたらどうでしょうね。

宇宙の泡構造の膜の部分が重力の(+)物質であるなら、

空気の部分に(-)物質が詰まっており、泡の中心部分に比較的多くの(-)物質が

集まっているのではないのかな。

(-)物質であるため、お互いに集まることは無く、ひたすら離れようとするため

密度が極端に低いので検出することは難しく、

それでも非常にマクロな、銀河のような大質量に対しては影響を及ぼすために、

思ったより銀河の求心力が強い(銀河を回る星々が計算より速い)というような

計算結果になっているのではないのかな。

そして、それだけの斥力を持つ(-)物質が宇宙の大半を満たしているのであれば

宇宙が膨張を続けている理由のひとつに考えられるのではないのでしょうか。

質量があるところからはひたすら離れようとするのだから、

人間が触れることのできる範囲にはほとんど無いだろうし、

構成原子そのものが集まることが無いので、それこそ太陽系外にある原子一個を

探すことにもなりかねないですねw(^_^;)

近場で可能性があるのは、例えば重力の均衡点、太陽や月とのラグランジュ点に

捉えられている可能性も無くはないかなw(笑

Lemnaeさん、

コメントありがとうございます。

そのとおりです!私達の世界はどんなふうにできているかというのは最も根源的な疑問です。

だから私は天文学を勉強するのを選びました。ただの科学ではなくて、感情や哲学などと関係のある科学です。

まだ時間がかかるかもしれませんが、だんだん物理学者は世界、宇宙の秘密を解き明かしていくと思います。

ディミ

荻谷知貴さん

コメントありがとうございました。

返事させていただきます。

私の記事にとても重要なことは全く書かれてないので誤解を起こしたと思います。

ダークエネルギーの事について全然説明しませんでした!

ご存じの通り、宇宙の~5%は「普通の物質」、~25%は暗黒物質と残りの70%ダークエネルギーです。

>そして、それだけの斥力を持つ(-)物質が宇宙の大半を満

>たしているのであれば

>宇宙が膨張を続けている理由のひとつに考えられるのでは

>ないのでしょうか。

宇宙を膨張させるのは(-)物質ではなくて、ダークエネルギーだと思われています。ダークエネルギーは負の圧力を持ち、反発する重力のような効果を及ぼしています。

次回ダークエネルギーについて記事を書こうと思っています。その時に、また議論しましょう!

ディミ

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