黒スケはどのように鎧をまとったか

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硫化鉄の“鎧”をまとった深海の巻貝「スケーリーフット」。前回の熊谷のブログ「白いスケーリーフットもあらわれた」で、硫化鉄をまとって黒い色をしているスケーリーフット(黒スケ)だけでなく、硫化鉄を持たずに白い色をしているスケーリーフット(白スケ)もいる!という衝撃の事実が明らかになりました。しかし、この2種類は遺伝子を調べても、まったく同じ。そこで、湧いてきた疑問は・・・

なぜ黒スケだけが、鎧をまとっているのでしょうか?

◆ 仮説①「 微生物のしわざ?」

 

「スケーリーフットの表面はぬめっとしている」

そう話すのは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究員の和辻智郎(わつじ・ともお)さん。鉄の鎧を作り出す主役は、殻とうろこの表面にくっついた「微生物」だと考えました。

硫化鉄を作り出すには、「鉄」と「硫化水素」が必要です。殻やうろこにくっついた微生物が、海水中の「硫酸」を「硫化水素」に還元。さらに、熱水噴出孔から吹き出る熱水に含まれる「鉄イオン」と反応し、硫化鉄ができるのではないか・・・。

黒スケの表面を調べると・・・。確かに、硫酸を硫化水素に変える能力を持つ微生物が見つかりました!もう一方の白スケの表面に、この微生物がいなければ、この説は正しそうです。和辻さん!その結果は・・・?

 

「白スケにも黒スケと同じ数の微生物がいました(苦笑)」

 

残念!どうやら「微生物が鎧をつくる」の説は違うようです。

 

◆ 仮説②「環境説」 「黒たまご作戦」で検証!

予想がはずれて悔しがる和辻さんですが、黒スケを眺めていて「あるもの」を思い出しました。

 

「“1個食べると7年寿命が伸びる”という

箱根・大涌谷の「黒たまご」。

横に並べると、そっくりでしょ?(笑)」

 

どうやら、黒スケの硫化鉄と黒たまごのでき方に関係があると考えているようです。黒たまごは玉子を温泉で茹でて作ります。玉子を温泉の中に入れると、気孔の多い殻に温泉成分の鉄が付着。そこに同じく温泉成分の硫化水素が反応して硫化鉄の層になり、黒い殻のゆで玉子になります。つまり、「熱水噴出孔が作り出す環境によって鉄の鎧ができる」と考えました。

そこで和辻さんは、硫化鉄がない白スケの殻とうろこをかごに入れ、黒スケが住む熱水噴出孔の周りに設置しました。うまくいけば、黒たまごのように硫化鉄の層ができて黒くなるはず。

名付けて「黒たまご作戦」結果はいかに・・・。

 

「かごは今もインド洋に眠っています(泣笑)」

 

悪天候が続いたため、今回の2カ月間の航海で黒スケがいる熱水噴出孔に行けたのは1回だけ。かごは回収できませんでした!結果は次回の航海まで持ち越しに。いったいどうなったのか、気になります!

 

◆ 仮説③「硫化鉄のネイル?」

 

「環境だけじゃだめ。

環境とスケーリーフットが持つたんぱく質との

相互作用で黒くなった」

 

前回のブログにも登場したJAMSTEC研究員の宮崎淳一さんは、別の説を挙げています。黒スケのうろこの主成分は、人間の爪にも含まれるたんぱく質「ケラチン」。この中の結合が硫化鉄に置き換わり、結晶化したのではないかと考えています。人間の爪も熱水噴出孔の近くにあると、硫化鉄のネイルができるのかな?と妄想してしまいますね!

どの説が正しいか分かりませんが、いろいろ考えを巡らせるのはわくわくしますね!今後の研究結果に注目です。

 

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