iPS細胞、いよいよ臨床研究へ!

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6月26日、目の病気に対してiPS細胞(人工多能性幹細胞)を 使う治療法の臨床研究が厚生労働省によって承認されました。

今回の臨床研究は「加齢黄斑変性」という年齢とともに網膜の黄斑と呼ばれる部分の機能が低下し、視力が落ちたり失明に至ったりする病気に対して行われます。この疾患はレーザーなどで進行を抑えることしかできず、症状が進んでしまった場合は元に戻すことはできません。今回は、機能が低下した部分の網膜を取り除き、iPS細胞でつくった網膜色素上皮のシートを黄斑に移植します。早ければ来年の夏にも患者に移植される予定です。患者にiPS細胞からつくった治療用の組織などが移植されるのは、世界でも初めて。世界初のiPS細胞の臨床研究なのです。

【未来館で展示中のiPS細胞から作った網膜色素上皮】

昨年の山中伸弥先生のノーベル賞受賞で一段と注目を浴びるようになったiPS細胞。網膜色素上皮は、実用化に向けた臨床研究の実現にもっとも近いと言われていました。

注目のポイントは2つあります。1つ目は作りやすさ。網膜は「膜」と名がつくように、薄いシートの形をしています。iPS細胞を使った治療の中でも、培養皿で網膜色素上皮細胞の二次元の膜を再生するのは、血管や神経などが必要な臓器を三次元で再生するよりも、早く実現できたのです。

2つ目は移植後の安全性。移植した網膜に何か異変が起きていないかを、瞳孔ごしに簡単に目で見て確認できるという利点があります。何か問題が生じた場合も、比較的簡単に対応が可能です。内臓への移植の場合は、こうはいきません。

この研究プロジェクトのリーダーを務めるのは、理化学研究所の高橋政代先生。2012年4月28日、未来館では高橋先生をお招きしてサイエンティスト・トークを行いました。

トークの中では、安全性・コスト・時間のせめぎ合いの中で、治療の実現に向けた努力についてお話しいただきました。

さて、このiPS細胞、みなさんは実物を見たことがありますか?実は、iPS細胞もiPS細胞からつくった網膜色素上皮も、未来館で見ることができます。5階の生命エリアに並んでいる顕微鏡の一つがそれです。

【未来館5階のiPS細胞を見られる顕微鏡】

未来館では、他にもiPS細胞に関する展示や企画を行っています。そもそもiPS細胞って何?という方は、「ともに進める医療」のiPS細胞のコーナーや当館の科学コミュニケーターによるミニトーク「iPS細胞がもたらすこれからの再生医療」をぜひご覧下さい。

また、未来館では新しい医療技術について、その長所・短所を踏まえつつ、市民と研究者や医療従事者の対話によって進めていくことが大切だと考えています。来館者から直接の声を拾う「エンドクサ」では、過去にiPS細胞を使ってベンチャー企業をおこしてみたいですかとの問いかけをしました。

【エンドクサ集計結果の一部】

寄せられた意見の中には、「事故で体の一部を失った人、病気で移植が必要な人が救われる世の中になってほしい(38歳男性)」、「障害(目、耳、心臓など)を防いだり、治療を簡単にできるようにする(11歳女性)、「人工臓器の開発 (24歳男性)」などがありました。

再生医療の様々な分野で期待が高まるiPS細胞。今回の臨床研究では二次元での応用ですが、三次元での応用、つまり立体的な構造を持つ臓器に関する研究はどの程度進んでいるのでしょうか?

2013年7月15日(月・海の日)に未来館では、iPS細胞を用いてヒト臓器を作る研究を進める谷口英樹先生をお迎えし、サイエンティスト・トークを行います。

谷口先生は、マウスの体内でヒトの肝臓を作ることに成功しました。臓器などの立体的な構造をiPS細胞から作り出すことは、大量の細胞を必要とするうえ、血管など臓器を支えるあらゆる組織が必要で困難とされてきました。谷口先生が作った肝臓は、私たちの体内にある肝臓と同じように、血管があり、薬物を分解する機能を持っています。それはどのような工夫によって成し遂げられたのでしょうか?

iPS細胞研究の最先端のお話をうかがいながら、私たち一人一人がこれからの医療とどのように向き合うのかを考えます。

今回は、講師をお迎えする前に、iPS細胞とは何かについて科学コミュニケーターが10分間のミニトークを行います。谷口先生によるトークをより深く理解するための前知識として、ご関心のある方は開始15分前に会場にお越し下さい。みなさまのご参加をお待ちしております。

■イベント情報■

サイエンティスト・トーク「iPS細胞からヒト臓器を作る」

開催日時:【本編】 2013年 7月15日(月)14:45~15:45 (受付:14:25〜)

※本編の前に、14:30~14:40にかけて科学コミュニケーターがiPS細胞に関する基本的な内容についてのミニトークを行います。

開催場所: 日本科学未来館 3階実験工房

対象年齢:中学生以上(内容は中学生以上ですが、小学生も参加可能です)

定員:45名

事前申し込み不要

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