7/15のサイエンティスト・トーク講師の論文、Natureに掲載!

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7月15日(海の日)サイエンティスト・トーク「iPS細胞からヒト臓器を作る」で横浜市立大学大学院医学研究科の谷口英樹先生をお招きします。

その谷口先生のグループの研究成果が日本時間の本日7月4日に、世界的な学術雑誌Natureのオンライン版に掲載されました!15日のトークイベントでは、まさに世界レベルで最先端のお話を伺えることになります!

谷口先生は、iPS細胞を用いてヒトの臓器を作る研究を進めています。そして今回、ヒト細胞からなる小さな肝臓を作ることに成功しました。肝不全のマウスに移植したところ、移植した肝臓はきちんと機能して、マウスの生存率が高まることも確認しました。

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【iPS細胞から作った肝原基(臓器のもと)】(写真提供:谷口英樹先生)

iPS細胞は再生医療への応用が期待されていますが、iPS細胞のまま患者さんに移植することはありません。iPS細胞を治療に必要な細胞や組織などに変えてから移植します。どんな種類があるでしょうか。まずは、血液の細胞など。これは1つ1つバラバラの細胞でよいので、「」いわば一次元での開発になります。そして、先日、世界初の臨床研究が始まるという報道のあった網膜、それから皮膚などは、シート状ですから二次元での開発になります。

一方で、臓器などの三次元的な構造をiPS細胞から作り出すことは、大量の細胞を必要とするうえ、通常の細胞培養では平面的になってしまい、困難でした。さらに、臓器の場合、1種類の細胞だけでなり立っているわけではありません。たとえば膵臓ならば、インシュリンの分泌で知られるβ細胞のほかにもα細胞やδ細胞などいくつもの種類があります。血管など臓器を支えるあらゆる組織も必要となります。このため、臓器づくりは非常に困難とされてきました。

谷口先生は、まずiPS細胞を肝臓の細胞に変わる一歩手前の「前駆細胞」にしました。そして、細胞同士をつないだり血管壁などの細胞を生み出す「間葉系細胞」と血管の内膜となる「血管内皮細胞」を加えて、一緒に培養しました。これは、身体の中で実際に肝臓ができあがるときの環境を真似たそうです。

肝臓をつくる2

【iPS細胞から肝臓へ】

すると、これらの細胞が作用しあって臓器の「もと」のような構造を持つ立体的なものができました。これをマウスに移植したところ、直径約5ミリメートルの肝臓に成長しました。この肝臓には、ヒト細胞からなる血管ができて血液が流れ、薬物を分解する機能などもあることが分かりました。薬で肝不全にしたマウスを使った実験では、そのままでは1カ月後まで生き残れるのは約3割程度なのに対し、この肝臓を複数移植された肝不全マウスは約9割が生きていました。

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【マウスの中で再構成される肝組織】(写真提供:谷口英樹先生)

もともとは移植外科がご専門の谷口先生。移植を待ちながらたくさんの患者さんが亡くなっていくのを見て、別の方法で臓器を再生することはできないだろうか、と考えたのが研究の出発点だったそうです。

iPS細胞の研究は始まったばかり。谷口先生は、iPS細胞の登場は「アポロが月に行ったようなものだ」と仰います。確実に月まで行かれる方法が確立したわけではなく、誰もが行かれるわけでもありません。同じように、iPS細胞を使った治療法の確立にはまだまだ膨大な時間とお金がかかると話されています。

誰もがよくある医療として再生医療を受けられるようになるのはまだ遠い将来だと感じる方もいるかもしれません。一方で、将来自分もこうした医療を受けることになるかも、と想像されている方もいるかもしれません。現段階では、iPS細胞を用いた再生医療の実現には超えなければならない課題がまだたくさん存在します。たとえば、iPS細胞そのものがガン化のリスクを持っています。そして、新しい医療技術の人体に対する安全性の検討も欠かせません。動物の体を利用してヒトの臓器を作ることに対し、倫理的な問題があると感じる方や、動物から人体への移植に居心地の悪さを感じる方もいるかもしれません。

iPS細胞を用いた再生医療が現実のものになった時、あなたはそれを利用したいですか?判断をする時に、重きを置くのは何でしょうか?

医療行為のリスクを考える時、「自分の子どもにこれをできるだろうか?」と考えるという谷口先生。そんな家族を持つ人としての横顔を見せる先生のトークをみなさんもぜひ、聞いてみませんか?

谷口先生をお招きしたサイエンティスト・トーク「iPS細胞からヒト臓器を作る」は7月15日(月・祝日)、14:45~15:45です。本編開始前の14:30~14:40にかけて科学コミュニケーターがiPS細胞に関する基本的な内容についてミニトークを行います。詳しくはこちらをご覧下さい。

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