ストックホルムから「ノーベル賞Xファション」

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未来館で「ノーベル賞予想フィーバー」が始まったぞ!

去年、私も物理学賞の受賞者を予想しましたが、今年は予想するチームを後ろから応援する役目です。(応援団みたいに)

じゃ、私は今年予想しないから「2012年ノーベル賞・ファション振り返りブログ」を書きます!「ディミ、日本語おかしいよ。どういうこと?」といわれそうですが、読んでみて下さい。

6月にデンマーク、スウェーデン、ノルウェーに行ってきました。北欧にいた間にさまざまな科学館と博物館を見学しました。ストックホルムにあるノーベル・ミュージアムに行く前にJeanette Peterbergというキュレーターに会う約束を申し込んでいました。彼女が担当したプロジェクトが気に入ったので、会ってみたくなったのです。どんなプロジェクトだったか紹介しますね。 IMG_6043

Jeanetteが考案したプロジェクトは「Fashion Innovation」といいます。ストックホルムにある「Beckmans College of Design」というファションの専門大学と一緒に「ファション、文化、科学を融合する企画展」を開催しました。

2011年に第1回を開き、去年は2回目でした。ノーベル賞の受賞者が発表されると、Beckmansファションカレッジの1年生たちを集めて、各賞の内容を説明します。学生たちはこの説明に基づいて、2週間で受賞の対象を解釈してファションに仕上げなくてはならなかったのです!たった2週間で!さらに1年生はカレッジに入ったばかりなのです。日本と違い、スウェーデンでの入学は9月で、ノーベル賞の発表は10月。経験のあまりない18歳のスウェーデン人は、こんなハイスピードな企画に成功できるのでしょうか?


さて、去年のノーベル賞の内容を思い出しながら、彼らが作ったドレスをみてみましょう。

物理学 ・ Physics

Physics

「個別の量子系に対する計測および制御を可能にする画期的な実験的手法に関する業績」により、Serge HarocheとDavid J. Winelandが受賞。

原子や光子を1個ずつ、量子状態を壊さずに操作・観測するという手法を発明し、発展させました。従来、実現は困難とされてきたことを、実際に行えるようにした画期的な研究です。

 ある素粒子が同時に2カ所に存在することは可能でしょうか?去年のノーベル物理学賞の受賞者が開発した手法は、このようなことを証明しました。上記のドレス(ドレスじゃないね・・・)は二つの異なる状態の間の物理的なコントラストを表しています

物理学賞の研究内容についてはこちら(同僚の本田が書いた記事)

 

化学 ・ Chemistry

Chemistry

「Gタンパク共役型受容体の研究」によりRobert J. LefkowitzとBrian K. Kobilkaが受賞。

人間は恐怖を感じると、アドレナリンが分泌されて身体を駆け巡り、逃げたり、闘ったりしようとします。Gタンパク共役型受容体はこうした身体の生体反応にかかわっています。

学生は恐怖や不快感がもたらす、息苦しさや圧迫感に焦点をあてて、閉じ込められた感じを目で見える形で伝えることができるか検証しました。繭の閉塞感で表現できるのではというインスピレーションになりました。

Gタンパク共役型受容体について詳しくはこちら(同僚の田村が書いた記事です)

 

生理学医学 ・ Physiology or Medicine

Medicine

リプログラミングにより成熟した細胞に多能性(分化万能性)を持たせられることの発見」により、John B. Gurdonと山中伸弥が受賞。

学生たちは細胞が異なる成熟ステージへと変わっていく様子を、「老い」と「若さ」の概念に重ね合わせて考えました。「老い」と「若さ」のコントラストを、使用する材料の組み合わせとシルエットで表現しています。細胞のダイナミックさとゆるやかな成長をイメージする素材を選びました。

細胞のリプログラミングについて詳しくはこちら(同僚の鈴木が書いた記事)

 

文学 ・ Literature

Literature

幻想的なリアリズムで民話、歴史、現代を融合させた莫言Mo Yan)が受賞。現代中国を代表する作家で、中国文学から現代文学への橋渡しをしたといわれる。1955年に山東省の貧しい農村で生まれ、1981年から執筆活動を開始。農村の生活や人間の欲望・残虐性を描いた小説が多い。1986年に発表された小説「赤い高粱」が有名。ノーベル文学賞は、中国国籍の作家として初めての受賞。

 学生たちはMo Yanが書いた「Life and Death Are Wearing Me Out, 生死疲劳」という本を元にしてドレスをデザインし始めました。中国の伝統的な衣装とスウェーデンのラグマットを組み合わすことにより、この新しい創作物の中で中国とスウェーデンが一つになりました。布の切れ端を再利用して、新しいものを創りあげることで、生まれ変わりを表現しています。

 

平和 ・ Peace

Peace, foto Simon Larsson

ノーベル平和賞2012年は欧州連合(EU)に授与されました。EUとその前身であるヨーロッパ共同体は、平和や和解、民主主義、ヨーロッパにおける人権の発展などに60年以上も貢献してきました。EUは異なる国、文化、言語、人々が友情の絆をむすぶ集合体として解釈されています。それぞれの絆はこのショールで重要なリンクを構成しています。ドレスのシルエットは、ヨーロッパのさまざまな風景からひらめきを得ています。

 

経済学賞 ・ Economic Sciences

Ekonomics, foto Simon Larsson

安定した配分の理論と市場設計の実績」によりAlvin E. RothとLloyd S. Sharpleyが受賞しました。なお、ノーベル経済学賞の正式な名前はアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞といいます。

臓器提供者と患者、就職活動中の学生と企業などは、従来の市場原理では需要と供給のバランスが適切になりにくい。こうしたケースにおいて、2つの集団の最適な組み合わせを決める理論の研究が評価された。シャプレー氏はゲーム理論を応用して組み合わせを導き出す理論を提唱し、ロス教授は実験経済学をもとに、それを現実社会に応用。さまざまな社会制度構築に貢献した。

異なる集団を最適に組み合わせるには、安定性がもっとも重要なことです。混沌とした環境で安定性を見つけることの大切さ表すために、このドレスでは、スカートのような銅の構造を起点としました。銅の骨組みは、不安定さを囲み、安らぎを得る基盤となっています。

 

なんてすばらしいプロジェクト!科学にあまり触れないファション系の人とファションに触れない理系の人は「Fashion Innovation」のおかげで新しい共通点を見つけたかもしれません。私もこのような独創的な企画をしたいです!がんばらなきゃ。

10月7日から今年のノーベル賞の発表があります。未来館の科学コミュニケーターはこの数カ月の間、一生懸命リサーチして今年の受賞者を予想しようとしています!当たるといいね。

そしてノーベル・ミュージアムでは今年も「Fashion Innovation」を開催しますよ!10月以降にストックホルムに行くならぜひ今年の受賞を解釈したドレスを見に行ってね。(Jeanetteによろしく!)

 

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