2013年ノーベル賞を予想する!~生理学・医学賞その3~

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こんにちは、科学コミュニケーターの濱です。

夏の暑さも和らぎ、秋らしさが感じられるようになってきました。

秋の楽しみはたくさんありますが、忘れてはならないのは

ノーベル賞の受賞者発表!

昨年はiPS細胞の研究で知られる山中伸弥先生が受賞したことも記憶に新しいですね。今年もぜひ日本人研究者に受賞していただきたいものです。日本にもノーベル賞級の研究をしている方々が大勢います。

その中でも私がご紹介したいのは、筑波大学の柳沢正史先生です!

濱の予想する生理学・医学賞

受賞者: 柳沢正史(日本)

受賞テーマ:オレキシンの発見

M  Yanagisawa

 

◇この研究のここがスゴイ!◇

私たちは夜になれば眠くなり、朝になれば目覚めるという生活をしています。当たり前のこと過ぎて、どのようにして私たちの睡眠と覚醒のリズムがコントロールされているのかなんて考えもしないかもしれません。

では、逆の場合を想像してみてください。夜になっても眠れない、朝になっても目覚められないとなれば、生活に支障が出るのは必至。会社や学校に遅刻して困っちゃう!だけではなく、健康にも大きな影響が出ます。

たとえば一晩徹夜をしただけでも心臓は正しくリズムを刻むことができなくなるのです。徹夜明けに、どうも胸が苦しい、変にどきどきするな?なんて経験のある方も多いのでは。

私たちの健全な生活と切り離せない睡眠、まだまだ謎がいっぱいです。

そんな中で、睡眠と覚醒の正常なリズムをコントールする物質として知られるようになったのが、柳沢先生が発見したオレキシンなのです。

オレキシンの発見により、睡眠に異常を起こす病気「ナルコレプシー」の治療や新しいタイプの睡眠薬の開発、果ては生活習慣病の改善薬も作ることができるかもしれません。

 

◇オレキシンはこうして発見された◇

オレキシンを英語で書くと“orexin”、ギリシャ語のorexis=食欲から名付けられました。睡眠欲ではなく、食欲? なぜこのような名前がつけられたのかは、発見の経緯にありました。発見当時、オレキシンは食欲をコントロールしていると考えられたのです。これには大きく二つの理由がありました。

まずひとつめの理由はオレキシンのはたらいている場所です。脳の視床下部、特に食欲をコントロールすると考えられていた場所にオレキシンがたくさん存在していました。

またふたつめに、オレキシンを脳内に注射されたネズミは食事量が増えました。しかも、おなかをすかせている時のネズミの脳内ではオレキシンが増えていることも確認されました。

このような実験結果から、オレキシンが増えることによって食欲が増す、つまりオレキシンによって食欲がコントロールされているのではないかと考えたわけです。

続いて、柳沢先生らは遺伝子操作によってオレキシンを作れなくしたネズミを作り出しました。オレキシンを失ったネズミは、食欲を無くして、やせ衰えていくはずでした。

では、その結果は・・・、

図1

わずかに食事量が減っただけで、むしろ体重は増えていたほどでした。

 

がっかり……。

 

となるかと思いきや、一流の研究者は違いますね。

「絶対にオレキシンには重要なはたらきがある」とにらんでいた柳沢先生はネズミの観察を続けました。

すると、一見普通に見えるネズミが、夜間におかしな動きをしていることに気がつきました。

ネズミは夜行性なので、本来ならば夜にはえさを食べたり毛繕いをしたりと活発に動き回っているはずです。しかし、オレキシンを失ったネズミは何度も突然倒れ込み、数十秒から数分動かなくなってしまいました。このネズミは「ナルコレプシー」を発症していたのです。

ナルコレプシーは、直訳すると「Narco=眠り」「Lepsie=発作」となり、その名の通りに突然に眠りに落ちて意識を失ってしまう病気です。日本でも少しずつ知られるようになってきましたが、まだまだ認知度は高くありません。しかし、日本の患者は600人に1人ほどで、世界平均に比べると4倍近くなります。

原因不明の精神疾患と思われていましたが、オレキシンの欠乏が原因だったのです。病気が見つかってから100年以上たちましたが、原因がわかったことで、やっと治療の可能性が見えてきました。

こうして、オレキシンは正常な睡眠と覚醒をコントロールする物質だと明らかになったのです。

 

◇オレキシン研究の今後◇

オレキシンによって、ナルコレプシーの治療が可能になることはたやすく想像できます。正常にインスリンを作れなくなるⅠ型糖尿病ではインスリンを注射することで治療ができるのと同じですね。そして発想の転換、オレキシンのはたらきをブロックすることで眠気を引き出す新しい睡眠導入剤の開発も進められています。

オレキシンの可能性はそれだけではありません。ナルコレプシー以外にも睡眠に異常を起こす、うつなどの精神疾患、時差ぼけ、夜間労働などに対しても、オレキシンは正常な睡眠と覚醒のリズムを取り戻させる効果を発揮するかもしれません。また、睡眠に限らず、肥満による生活習慣病の予防効果も期待できます。先に述べた、オレキシンを失ったネズミが食事量は減ったにもかかわらず、太っていったことを思い出してください。オレキシンの増加によって、肥満を予防できるという実験もネズミを使って行われています。いつの日かオレキシンによって、現代人の病ともいえる睡眠障害と生活習慣病が解決される日が来るかもしれませんね。

 

 

ノーベル生理学医学の発表は10月7日(月)日本時間の18時30分から。 お楽しみに!

特設サイト「ノーベル賞を予想しよう!2013 」もぜひご覧ください。

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