忘れてやしませんか?ヽ(゚Д゚)ノ去年のノーベル物理学賞「量子コンピューター」

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世間では、いや、未来館では『今年のノーベル賞は誰の手に?』などと盛り上がってますが、そんなことでいいんですか!?

のど元過ぎればなんとやら…

そりゃ、今年のノーベル賞も大切ですよ。

でもね、去年ノーベル物理学賞を取った量子コンピューターだって、研究が終わったわけではなくて、ちゃんと研究が進んでるんですよ。

 

先日、量子テレポーテーションというセンセーショナルな記事がネットで注目を集めました。

テレポーテーション?

スタートレックじゃあるまいし...とお思いの方もいらっしゃるでしょう。

「量子」って何?「人間テレポーテーション」の話じゃないの?

 

 実は、東京大学の古澤明教授のグループが実験に成功したというのです。

 

転送したい情報をもった光の粒(光量子ビットといいます)を二手に分けて、一方でその情報を読み取る(観測する)と「同時に」もう一方の量子ビットの情報は消え、『転送完了!』となるので、量子『テレポーテーション』と言われます。

 

これまでも量子テレポーテーションの実験はありましたが、転送後、量子ビットを測定すると、都合の良い事象だけ選び出す「条件付き」転送成功だったり、そもそも、二手に分けること自体の成功確率が低いといったことがあったのですが、今回の実験では、この情報伝達の効率が格段に上がったというのです。

 

今回の量子テレポーテーションを理解するには、極微の世界特有のややこしさを知る必要があります。

電子や、原子などは、私たちの住む世界とはちょっと違う物理でなりたっているのです。

 

まずはじめに、量子という言葉。

電子や原子核は粒子だと思われていますが、実は、波のような振る舞いをします。これを最初に言い出したのはアインシュタインで、『光量子説』と言います。

光は波だと思われていたのに、「光を当てたら電子が飛び出す現象(光電効果)は、光を『粒』だと考えたら、うまく説明できるぞ」というんです。

波と思われていた光が粒の性質もあるというこの説の正しさがわかるようになると、逆に粒と思われていた電子や原子(核)も波としての性質を持っていることがわかってきました。こうした、粒でもあり、波でもあるこれらに「量子」という言葉を使うようになりました。

 

この量子の世界では、さらに不思議な現象が起こります。

それが、ハイゼンベルクが提唱した「不確定性原理」で「量子の性質は観測するまでは確率でしか知ることができない」というのです。

 

電子や光子は、例えば、位置を測定すると、正確な速度(運動量)がわからなくなり、逆に、速度を正確に計ると位置がわからなり、1個の量子に対しては1個の物理量(速度や、質量、位置など)しか決められません。

 

アインシュタインは、量子力学のこの考え方には懐疑的で、「神様はサイコロは振らない!」と言ったそうです。

さらにアインシュタインは、この不確定性原理の不備を説明しようと、これを逆手にとった、壮大な思考実験をしました。

(思考実験とは、実際に実験をするのではなく、頭の中だけで、理論から導かれるはずの結果を出すものです。理論から変な答えが得られた場合、元の理論に不備があったと考えます)

 

量子1個では1個の物理量が観測されるだけですが、同時に生まれたペアとなる双子の電子なら、片方の電子のスピン(電子の自転に相当する物理量)が観測されたら、もう一方の電子のスピンは逆向きと、量子2個について物理量が一度に決定されます。

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その上で、一方の電子をたとえ何万光年離しても、片方を観測してスピンが決定されたと『同時に』もう片方の物理量が決定されるとしたら、それは、光速度を超えて情報が伝わっていることになり、相対性理論に反する。だから、量子論は間違っているとアインシュタインたちは主張しました。

 

双子の量子の関係を『量子もつれ』といいます。そして、量子もつれ状態にある量子は、どんなに離れても、片方の量子の物理量が決定されると『同時に』もう一方の量子の物理量が確定されるという不思議なことが起こるというのです。

(この主張はアインシュタイン、ポドルスキー、ローゼンによって提唱されEPRパラドックスと呼ばれます)

 

果たして、アインシュタインが正しいのか、量子力学が正しいのか。

 

この実験は、実際に行って検証するのは非常に難しく、確かめられたのは1980年代に入ってからでしたが、なんと、量子もつれの不思議な現象は本当に起こりました。これによって、高速を超えて情報が伝わる「量子テレポーテーション」が可能であることがわかったのです。

 

ところで、量子もつれは未来館の3階の「量子コンピューター」の展示にあります。

量子状態を0でもあり、1でもある状態と表示して、0と1のメダルがくるくる回ります。

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その右隣に、メダルが2個並んでいて、startボタンを押すと両方くるくる回るのですが、何もしないでstopボタンを押すと、0と1がばらばらに表示されます。

ところが、レバーを引いてお互い近づけてやってstopボタンをおすと、「もつれ」がおこるために同じ0同士または1同士になります。

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さて、ここまでは、量子もつれのはなし。

 

これから、『量子テレポーテーション』のはなしです。

 

2つの電子や光子などを量子もつれ状態にするのは、今やレーザーなどでできます。いったん量子もつれ状態の量子AとBを作ると、量子Bを遠方に送り届けてしまえば、量子Aを観測すると、量子Bの物理量が決定されます。

つまり、量子Aの情報が観測と『同時に』量子Bに『伝わる』のです。

(ちなみに、未来館の上の展示も、一回右のメダルを近づけてやると、離してからstopボタンを押しても、量子もつれを起こしてしまうと、0同士または1同士にそろいます。これぞ「量子テレポーテーション」!と、勝手に思っています)

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イラストに描いてしまえば、簡単なことのように思えるかもしれませんが、量子もつれ状態にあるのに、それをどうにかして他方に運ぼうというそのアイディアと忍耐がすごい。

だって、量子コンピューターで計算できるのもすごいけど、やっぱり、通信できなきゃね。

 

今回の古澤先生の実験では、量子もつれ状態にある量子の輸送方法に工夫があり、『完全な』量子テレポーテーションに初めて成功というセンセーショナルなニュースとなりました。

『完全な』という以上、以前からも研究されていたと言うことですが、とにもかくにも、今回のアイディアのポイントは、量子もつれ状態にある光子を、同種類の光の波の性質を使って『運んでやる』点にあります。

『朱に交われば赤くなる』?『同類相哀れむ』??

『ハイブリッド輸送』???…

う~ん、いい表現が思い浮かばないけれど、とにかく、うまく運んであげた点がすごい。

 

もちろん「量子コンピューター」自体も全く新しいタイプの超高速計算機として期待されています。

これまでの、0と1だけ(電流を出す・出さない)を情報の単位として扱うのではなく、量子もつれを利用して原子、電子、光子などの波の状態をそのまま「計算」に使ってしまおうという斬新なアイディアです。

 

それにしても、時代は変わったなぁ~と思うのです。

 

ハッブル天体望遠鏡やすばる望遠鏡だって、宇宙の果てまで見ようとしているけれど、そんなに遠くが見られるってことは、近所の星はもっとよく見えるわけでありまして、最近、青い惑星が見つかったとか。地球に似てるかも!

“宇宙人のお友達”も何だか現実味を帯びてきました。

 

その一方で、量子テレポーテーションの話題だって、80年ほど前、机の上でしか議論できなかったことが、いまや、生活になくてはならないコンピューターの開発に活かされようされようとしているんです。

 

今では、素粒子論では、加速器の中で初期宇宙を作ってしまえるほどのエネルギーレベルを実現しつつあります。

 

これが、私たちの日常になくてはならないものになったら…

例えば、万物の質量の元は、ヒッグスです。

 

「この夏、あなたも『ヒッグス』ダイエットで、理想のボディをゲットしませんか?」なんてCMが流れる日がやってくるかも。

 

来週は「2013年のノーベル物理学賞の発表だぁぁぁぁ!!!」

みなさん、ヒッグス博士が取ったとしても、決して浮かれてはいけませんよぉぉ。

(うきうき…)

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