2013年ノーベル賞 皆さまの予想~化学賞その1

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いよいよ、今日からノーベル・ウィークの始まり! 今晩7日の生理学・医学賞を皮切りに、物理学、化学と続いていきます。

特設サイト「ノーベル賞を予想しよう2013年」には、わたくし詫摩の予想に反して(ごめんなさい!)、たくさんの方から予想の書き込みをいただきました。ありがとうございます!

生理学・医学賞その1生理学・医学賞その2物理学賞に続いて、「化学賞にお名前の挙がった方々とその業績を簡単に紹介しますね。

NobelChem

化学賞は予想が一番難しい賞です。投票サイトでも、見事なまでに票が割れています。それに、「その研究テーマは物理学賞では?」とか、「生理学・医学賞でもいいのに」と思うような研究者が過去にもたびたび受賞しています。

皆さまの予想でも、生理学・医学賞や物理学賞で候補者としてお名前の挙がった人が、化学賞でも挙がっていました。

Jean Frechet

高分子「デンドリマー」の開発で有名な方です。デンドリマーは中心の分子から枝分かれしながら別の"手"が伸びていくような構造をしていて(デンドロは樹木の意味です)、薬物送達システムなどでの応用が期待される、注目の高分子です。今年の日本国際賞を受賞したので、最近お名前を聞いたぞという人もいるはず。受賞の対象テーマは半導体の製造で使う「フォトレジスト」でした。波長の短い光に高感度に反応する化学増幅型フォトレジストという高分子を開発したことにより、小さなチップによりたくさんの回路を詰め込めるようになったのです。実は詫摩は恥ずかしながら日本国際賞が発表されるまで、デンドリマーの方しか知りませんでした。医療に使えるものも半導体産業に使うものも手がけるなんて、化学の専門家ってすごいなと改めて思った次第です。

 

大村智

予想チームのうち、化学リーダーの田村真理子が大村先生のお名前を強く挙げていました。有用な天然有機化合物を数多く発見した方です。一番よく知られているのは、イベルメクチンでしょうか。日本ではあまり知られていませんが、「河川失明症(オンコセルカ症)」という、熱帯地域特有の寄生虫病があります。ブヨが媒介する感染症で、放置すると目に入り込んだ寄生虫のせいで、失明してしまいます。幸い、大村先生のイベルメクチンを投与すれば、失明を防ぐことができ、さらに良いことにそれ以上の伝染の広がりを防ぐことができます。つまり、根気よく治療を続ければ、この病気の撲滅ができるわけです。

 

野崎京子

お名前とともに、「ファンです」と添えてありました。野崎先生にインタビューをした記事などを見ると、どれもそのお人柄のすばらしさと研究室の雰囲気の良さに触れています。ご研究の内容は「分子触媒」。普通に合成すると、2種類の光学異性体が半分ずつできてしまうところを、一方だけが作られるようにする不斉合成などの触媒を手がけていらっしゃいます。

片岡一則

生理学・医学賞でもお名前が挙がっていましたので、ご研究に関しては、そちらのページに書いた内容をコピペします。「薬が身体の中に入ってくると、身体はこれをすぐに分解して、排泄しようとします。これでは、薬の効果が得られなかったりします。また、副作用などを考えても、分解されにくいカプセルのようなものに入れて、患部に到着して初めて中の薬が出てくるようにできれば理想的です。こうした仕組みをDDS(ドラッグデリバリーシステム、薬物伝達システム)と呼びます。片岡先生は、DDSとして使える小さな中空粒子をいくつも開発した人です。生理学・医学賞でも化学賞でも、複数の方が片岡先生のお名前を挙げていました。」

 

岸義人

科学コミュニケーターの大渕が受賞予想者として挙げた中西香爾先生と同じく、天然有機化合物がご専門です。さまざまな天然有機物の合成に成功した方です。岸先生が手がけた天然有機物は本当にたくさんあるのですが、一番有名なのはテトロドトキシンでしょう。日本人には「フグ毒」としておなじみです。テトロドトキシンの構造自体は100年ほど前にわかっていたのですが、合成するのは難しく、それに成功したのが岸先生で、1970年代のことでした。中西先生同様、日本の頭脳流出の先駆け的な方でもあります。

 

藤田誠

いくつかの分子が集まってできる構造体「超分子」を研究なさっています。藤田先生のご研究テーマのキーワードは「創発」。もう少しなじみのある言葉でいうと「自己組織化」です。たとえば、カプセル状をしたウイルスの殻は、いくつかのタンパク質があわさってできたものです。複数の分子が自分たちで自然に組み上がっていくプロセスが、自己組織化です。藤田先生は、まさにこれを化学合成で実現させようとしているのです。

 

飯島澄男

物理学賞の方でも複数の方がお名前をあげていましたが、化学賞でもやはり複数の方が推していました。ご研究に関しては、物理学賞のページに書いた内容をコピペします。「カーボンナノチューブを発見した方です。ダイヤモンド、黒炭などと同じように炭素原子だけでできているサッカーボール型をしたC60(フラーレン)、平面のグラファイトの発見者はいずれもノーベル賞を受賞しています。カーボンナノチューブはその名の通り、管状をしており、さまざまな用途が考えられています。」

 

遠藤守信

すぐ上の飯島先生同様、カーボンナノチューブの研究で知られる方です。飯島先生は炭素の電極を使った実験でできたススの中から、カーボンナノチューブを発見した方でしたが、当初から、安く大量生産する方法が課題になっていました。遠藤先生はその大量生産法を開発した方で、カーボンナノチューブの実用化に大きく貢献したといえるでしょう。

 

Frederick Sanger

でましたね、サンガー博士!お名前を挙げた方は「RNAの解析技術で」と書いていらっしゃいました。ご存知の方も多いと思いますが、サンガー博士は、タンパク質のアミノ酸解析法とDNAの塩基配列の解析法を開発した方です(どちらも「サンガー法」と呼ばれたりしています)。そして、この2つの業績で2回ノーベル化学賞を受賞しています。DNA→RNA→タンパク質という3つの鎖の解析法を、すべて成し遂げたのがこのサンガー博士なのです。RNAの重要性はこの10数年で大きく変わりましたから、3回目のノーベル賞も現実味があるかもしれません(ちなみに、平和賞で3回受賞した団体はありますが、個人で3回ノーベル賞を受賞した人はまだいません)。

 

Elwood V. Jensen、Pierre Chambon、Ronald M. Evans

ステロイドホルモンなどの影響で、いっぺんに身体ががらりと変わることがあります。それは核内受容体と呼ばれる細胞の核の中で働いている分子のおかげ。このお三方は核内受容体の研究をした方です。今年の未来館ノーベル賞チームのリーダーをしている科学コミュニケーター西原が、昨年、このお三方が生理学・医学賞を受賞するとして記事を書いています。詳しい研究内容は、西原による2012年の予想ブログ記事をご覧ください。

 

ほかにも、以下の先生方のお名前が挙がっていました。

柳田敏雄、William Moener、Richard Zare

藤嶋昭

岡本佳男

A. Paul Alivisatos

K. C. Nicolau

新海征治

北川進

原田明

澤本光男

ご研究の内容に関しては、次回にさせて下さい!

 

いよいよ、今晩からノーベル賞の発表が始まります!

 

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投票サイトに寄せられた皆さまの予想

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