「ダークマターの地図」をつくる SuMIRe計画

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もう夜空星々がきれいに見えてくるころです。星を見ていると、宇宙はいったいどれくらいの星で満たされているのだろう、星と星の間には何があるのだろうと不思議な気持ちになりませんか?

 冬の大三角

(冬の大三角 同僚の科学コミュニケーター谷が撮影)

今回は、宇宙に存在するものの分布を調べるSuMIRe計画をご紹介します。

 

東京大学や国立天文台が進めるSuMIRe(Subaru Measurement of Images and Redshifts)計画がターゲットにしているのは、星などのように私たちが見ることのできる「物質」ではなく、ダークマター(暗黒物質)。光はもちろんのこと、X線などを使っても見ることができず、その正体がよくわからないナゾの存在です。SuMIRe計画では、そのダークマターの分布を宇宙全体で調べ、3次元地図を作ろうとしているのです。

なぜこんなものが注目されているのかというと、宇宙で奇妙な現象が観測されているからです。

その一つは渦巻銀河の回転の速さ

私たちのいる地球は太陽の周りを回っています。地球より内側の水星などの惑星は太陽の重力に引き寄せられて早く回りますが、外側の惑星は重力の影響が小さくなり、遅くなります。一方、太陽系がある天の川銀河も中心を軸に回っているのですが、その速さが中心からの距離に関係なく一定なのだとか。なんとも不思議な現象です。これはダークマターという未知の存在を仮定しないとつじつまが合いません。

渦巻き銀河

 提供 国立天文台 すばる望遠鏡で観測された渦巻き銀河NGC2403

仮定した未知の存在について調べるために、2001年には米航空宇宙局(NASA)がWMAPという観測専用の天文衛星を打ち上げ、2009年には欧州宇宙機関(ESA)がさらに高感度なプランク衛星を打ち上げました。それらの観測によって、宇宙を構成しているものが詳しくわかってきました。結果は、以下の値です。

組成

何と、星や私たちを構成している物質はたった約5%しかないのです。ダークマターやダークエネルギーは宇宙の大部分を占めているにもかかわらず、目で見ることができず、それが何なのか今のところ誰にもわかりません。

しかし!

ダークマターは宇宙や銀河・星の起源、ダークエネルギーは宇宙の未来を決定するカギを握っている!」と研究リーダーで東京大学カブリ数物宇宙連携機構の村山斉先生は言っています。

 

<ダークマターを探るSuMIRe計画>

SuMIRe計画の目的はズバリ

見えないダークマターの3次元宇宙地図をつくること」と村山先生。

では、見えないダークマターをどうやって調べるのでしょうか?

それを調べる一つの方法は、「重力レンズ」による効果を見ることです。質量があると、そこを通る光が曲げられて私たちのもとにやってきます。質量がレンズのような働きをしているのですね。光の曲がり具合によって、どれくらいの質量があるのかがわかるので、どれくらいのダークマターがあるのかわかります。

重力レンズ

クレジット:国立天文台/カブリ数物連携宇宙研究機構

矢印は銀河団(SDSSJ1050+0017)のさらに遠方にある一つの銀河からの光が、重力レンズ効果によって大きく引き伸ばされたり複数に分かれて見える様子を表しています。

 

宇宙の3次元地図をつくると言っても、果てしなく広大な宇宙を、SuMIRe計画ではどうやって調べるというのでしょうか?

 SuMIRe計画は、ハワイにある国立天文台のすばる望遠鏡を使います。中でも、

○「HSCHyper Suprime-Cam(超広視野のデジタルカメラ)

○「PFSPrime Focus Spectrograph(超広視野の分光器)

という二つがポイントとなる装置です。

まずHSCで一度にたくさんの銀河の写真を撮り、選んだ銀河の光は集光器に集められ、その後、光を分ける装置、分光器(PFS)へと送られます。このPFSがすごいのは、一度に2400もの銀河からの光を同時に分光できる超高性能な分光器だということ。

今回の計画で調べたいのは約1000万個の銀河からの重力レンズ効果です。これまでにもダークマターの3次元分布を調べるCOSMOSプロジェクトなどがありましたが、その際に観測したのは約120万個。

広い視野をもつことで、広範囲な宇宙を効率よく観測できる、すばる望遠鏡だから可能なプロジェクトです。ハッブル宇宙望遠鏡だと1000年はかかるといわれているようで、かなり性能の高い装置を使うのだろうと想像できます。

HSCについて詳しくはこの秋に未来館を離れた村嶋の記事をご覧ください。

 

SuMIRe計画で分かること>

HSCPFSを組み合わせた観測によって、銀河の内部とその周辺にダークマターがどのように分布しているのかがわかるようです。HSCはすでに動いていますが、本格稼働は2014から。PFSによる観測は、今から約4年後、2018年から5年間の計画です。(2017年に試験観測を行う予定)

SuMIRe計画では、ダークマターだけでなく、ダークエネルギーについても探る予定なのだとか。いったいどのような宇宙の姿を新しく私たちに見せてくれるのでしょうか!とても楽しみです!

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