春なんてまだ先だ...って思ってるでしょ?

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今日は、二十四節気の立春です。

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東京は昨日までの4月並みの暖かさから一転、強烈な寒さがやってきました。

立春のニュースに、
「寒いし、周りは枯れ草だらけだし、春なんてまだじゃないか!」
とお怒りの方もいらっしゃるでしょう。

私も以前はそうでした。 

そう、"ある場所"に出会うまでは......。

 

 

ある場所とは、

です。

この時期の磯なんて、どんなに寒々しい場所かと思いきや、ほら、このとおり!

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ある年の千葉県内・外房の1月下旬の磯

 

磯はもう、こんなに緑色です!

海風は冷たくても、季節はちゃんとめぐっています。
海辺の実験所でウミウシの研究をしていた学生時代、寒くても緑色になった磯を見て「立春が来た!もうすぐ春だ!」とわくわくした気持ちがよみがえります。

 

でも、なんでこんな時期に緑色になるの?

視点を未来館のある東京・お台場に戻すと。

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見るだけで寒々しい......。

芝生は薄茶色、街路樹は枝だけで、緑が見えません。

 

「そりゃあ、陸上の植物と、磯に生える緑のやつは全然違うものだから」......?

どうなのでしょう?

 

まず、磯に生える緑色の正体は何か。

 

やつらは「緑藻」と呼ばれる海藻たちです。

冒頭の写真では、焼きそばやたこ焼きでおなじみのアオノリ類や、沖縄ではアーサと呼ばれ、汁ものや天ぷらになっているヒトエグサがほとんどです。

この緑藻たち、近年の研究では、陸上の植物とともに「緑色植物」グループにまとめられています。同じ海藻でも、ワカメやコンブ類は「褐藻」で、緑色植物グループとは別のグループにまとめられています。

つまり、アオノリ類やヒトエグサは、ワカメよりも陸上植物に近いということ。
ちょっと意外!

 

でも、生活の様子は大きく違います。

 

身近な植物、サクラ(ソメイヨシノ)と、緑藻の一種、ヒトエグサの1年を比べてみましょう。

サクラは、ご存じの通り、冬は枝だけ、春には花が咲き、花と入れ替わるように葉が茂ってゆきます。初夏から秋の始めぐらいが、緑色の季節。その後、葉の色は変わり、散ってゆきます。

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一方、ヒトエグサはというと。

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※わかりやすいように、イラストではわざとカラフルに表現しています

 

だいぶ様子が違いますね。

ヒトエグサは、冬は、海藻らしい姿で大きく育ちます(葉状体=「ようじょうたい」といいます)。春先になると配偶子(はいぐうし:イラストでは橙と青の粒)を出し、葉状体は夏を待たずに消えていきます。

配偶子は合体して接合子(せつごうし:受精卵に相当)を作り、そのまま夏の間は人目につかずひっそりと過ごします

秋になると接合子は大きくなって、中から遊走子(ゆうそうし:緑色の小さな粒で表現)を出します。そして、再び大きな葉状体へと成長していきます。

磯の上部、潮の満ち引きの影響が大きな場所に生える海藻たちにとって、夏は昼間に潮が引き、長時間直射日光にさらされる過酷な季節です。ヒトエグサは、それを避けるためにこんな生活をしているのかな、と想像しました。

 

ちなみに、アオノリ類には小さくなる時期はなく、接合子も大きな葉状体の姿に変わるのだそう。(配偶子を出す前も、遊走子を出す前も葉状体になります。)
......同じ緑藻なのに、生き方が違う!!

 

うーむ、海藻の世界は奥が深いです。

 

その深さは、種類ごとの生き方を紹介しまくる専門書が出ているほど。(1冊400ページ以上!しかもグループ別で3巻!)
また、なぜ生き方が違うのか、その原因をつきとめようという研究も興味深いです。(

 

立春の思い出から、奥深い海藻の世界の一端をご紹介することとなりました。

立春が過ぎたらもうすぐ、磯の季節のはじまり!
体調管理に気をつけて、すてきな春をお迎えください。

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よく見れば、ほら、陸上にも春が近づいています。

 

<取材協力>
 菊地則雄 主任上席研究員
ヒトエグサについて詳しく教えていただきました。ありがとうございます。
(海の博物館では、2月15日から海藻の企画展が開催されるそうです!)

<参考文献>
「藻類30億年の自然史 藻類から見る生物進化・地球・環境」井上勲・著 東海大学出版会
「藻類の生活史集成 第1巻 緑色藻類」堀輝三・編 内田老鶴圃

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