【速報】今年のノーベル化学賞は超高解像度の蛍光顕微鏡!

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今年のノーベル化学賞は超高解像度の蛍光顕微鏡を開発したEric Betzig博士、Stefan W. Hell博士、William E. Moerner博士に贈られました。賞金は3等分されるそうです。


光学顕微鏡では200ナノメートル以下を見ることができなかったのですが、今では、それ以下を見ることも可能になっています。200ナノメートルは、バクテリアのサイズ以下。ウイルスやDNA、1つのタンパク質までも見ることが可能になりました。

ヘル博士のアイデアによるSTED(STimulated Emission Depletion:誘導放出制御)顕微鏡は、光学顕微鏡にもかかわらず、光の波長よりも短いものを見ることができます。これはそれまでの常識を打ち破るものでした。これを可能にしたのはちょっとトリッキーなやり方です。科学コミュニケーター松浦が、レーザー光を使った1分子計測法を今年の予想ブログで紹介していますが、この原理を巧みに使っています。まず、レーザー光でサンプルを励起させ、その後に、見たいもの以外は抑えるような別な光をあてて、見たい物だけを光らせます。

 

電子顕微鏡を使えば、ウイルスやDNAを見ることができます。しかし、そのためには、前処理が必要になり、このプロセスで、細胞やウイルス、タンパク質は"死んで"しまうのです。STED顕微鏡は光学顕微鏡なので、生きたままの姿を見ることができるのです。

ベツッグ博士とモーナー博士は別々の手法で、1つの分子を見る工夫をした方です。タンパク質やDNAは分子としては巨大といってよいサイズですが、やはり、200ナノメートル以下なので、そのままでは光では見ることができません。そこで、蛍光タンパク質の分子を見たい物につけ、さらにその分子の光をオン・オフできるようにしたり、光るタイミングを変えて観察をしたりすることで、単一分子を見ることを可能にしました。

どの手法も蛍光顕微鏡を使っています。特定の波長の光をあてると、蛍光を出す物質を使い、この出してくる蛍光をとらえてみます。蛍光顕微鏡は電子顕微鏡とは異なり、生きたままの細胞をリアルタイムで観察することも可能になりました。最近の医学・生物学の研究では、なくてはならない存在になっています。

最近の生物学の分野で、大きな進展があったのが、この蛍光顕微鏡を使った解析でしょう。たとえば、自分が注目するタンパク質にあらかじめ蛍光物質を つけておきます。その知りたいタンパク質が細胞の中でどこに位置しているのかを、蛍光を頼りに突き止めることができます。2種類のタンパク質の分子と分子にそれぞれ蛍光物質をつけておくと、その2種類のタンパク質が近づいていく様を蛍光物質の接近としてみることができます。

ただし、今回のSTED顕微鏡にも弱点がありました。特定の波長で光るのに別の波長では光りが抑えられるという特殊な性質の色素を使うため、た くさんの色を同時に使うのはなかなか難しかったようです。

この10数年で、細胞の写真は非常にカラフルになりました。皆さんも科学雑誌などで緑や赤、緑などでカラフルに光る細胞の写真を見たことがあるかと思います。

ちなみに、細胞を緑に光らせるのによく使われている緑色蛍光タンパク質(GFP)というタンパク質は、オワンクラゲの発光色素から下村脩博士が分離したものでした。それを生物学の研究に目印として使えるようにしたマーティン・チャルフィー博士、ロジャー・Y・チエン博士とともに2008年のノーベル化学賞を受けたことはご記憶の方も多いでしょう。今では、医学・生物学の研究を支えるなくてはならない存在となっています。

昨日に続いて、「光」がテーマでしたね。

これが、なぜ化学賞なのか? それは分子を見るからだろうっと科学コミュニケーター松浦は言っております。この超高解像度の蛍光顕微鏡は、タンパク質1分子を見ることができます。松浦が予想したのは、リチャード・ゼア博士の「1分子計測」。いま、隣でくやしがっております。

※モーナー氏とベツッグ氏の貢献について、勘違いがありましたので、10月9日に修正しました。

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