いざ参らん!ノーベル賞のその先へ(生理学・医学賞編)

このエントリーをはてなブックマークに追加

ノーベル賞を受賞した研究分野は、それで「ゴール」というわけではありません。 研究者の皆さんは、「その先」「もっと先」を明らかにすべく、日々研究を進めています。

こんにちは。志水です。

今年のノーベル賞は、日本の研究者が受賞したこともあり、大変盛り上がりました。 我々、科学コミュニケーターもテレビに出演するなど大忙しでした(ふぅー)。

でも、このお祭り騒ぎの裏で、今日も研究者の皆さんが地道な研究を進めています。 そこで私は、埼玉県和光市にある理化学研究所脳科学総合研究センターで、日本を代表する2人の研究者にお話を伺ってきました。

20141020_shimizu_01.jpg 

お二人は今年のノーベル賞の対象となった研究分野を手がけていて、「その先」を明らかにしようと奮闘されています。

今日ご紹介するのは、脳の研究をなさっている山口陽子先生。

(宮脇先生にノーベル化学賞について伺ったお話は、次回のブログでご紹介します。)

脳、といえば、今年のノーベル生理学・医学賞は脳に関する研究に贈られました。 今年の受賞内容は、今後どのように展開されていくのか、 わくわくするような最先端を覗いてみましょう!

 ==============================

ノーベル生理学・医学賞について、山口陽子先生に聞いてみました!

(今年の生理学・医学賞について知りたい方は、志水の記事もご覧ください。)  

20141020_shimizu_02.jpg

山口陽子先生。先月に開催された学会のポスター(おしゃれ!)の前で。

今年のノーベル生理学・医学賞の受賞対象研究は「場所を認識するための細胞が脳にあること」。自分がいる場所を認識するためには、2種類の神経細胞、「場所細胞」と「格子細胞」が重要であることを明らかにしたものです。

でも、「どのようにして」場所を認識しているのか、まだ分かっていない点も多いのです。そこで、山口先生は、脳の「リズム」に注目してメカニズムを明らかにしようとしています。

脳の中のリズムをつくるのは、「シータ波」とよばれるものです。

なんか聞きなれない言葉が出てきましたね。 では「アルファ波」は聞いたことがありませんか? どちらも、脳の中でリズミカルに変化する電気信号のことを指します。 変化するリズムのテンポによって、シータ波やアルファ波などに分けられます。 山口先生が着目するのは、1秒間に約8回リズムを刻むシータ波です。

シータ波は、いわば脳の指揮者。

脳のリズムをつくります。 では、このリズムがどのように役に立つのでしょうか? 下の図をご覧いただきましょう。

20141023_shimizu_03.jpg

 (山口先生の図を元に志水が作成)

ネズミが左から右へ通り抜けます。通り抜ける順番に合わせて、場所をに分けてみましょう(これが場所の順番です)。1つの「場所細胞」が、ネズミが走りぬける場所1カ所に反応します。場所細胞Aは赤いところに場所細胞Bは緑のところに、といった具合です。この場所細胞も脈をうつように電気信号を出すのですが、そのリズムは、ちょっとだけシータ波のリズムより先走ります。

いやいや、指揮者無視されているよ(失笑)。

と、いうわけではありません。3つの場所細胞を一緒に見てみましょう。それぞれの場所細胞が「同じように」先走っています。みんなせっかちなのですね。でも、同じように先走ることで、全体としては、1つのパターンが現れます。

最初は赤の位置に対応する場所細胞Aが先走り、次に場所細胞B、そしてC、と順番に先走ります。シータ波を指揮者に例えるなら、場所細胞が活動する様子は、「かえるのうた」の輪唱といったところでしょうか。 このように指揮者であるシータ波を基準として、場所細胞が順番に活動することで、場所の順番を認識することができると考えられています。 こんなことも脳の「リズム」を数学的に研究することで分かるそうですよ。

この「リズム」は、空間の地図をつくる「格子細胞」にとっても重要です。格子細胞も同じようにシータ波のリズムから少しずれながら活動します。このリズムのおかげで、格子細胞から電気信号を受け取った場所細胞が、空間のたった1カ所に対して反応できると考えられるそうです。

詳しくはこちらの映像をご覧ください。

山口先生のサイトから、先生による様々な動画をご覧いただけます。
場所を認識する仕組みについて、より良く分かりますよ。

山口先生は最後にこんなことを語ってくださいました。

「今回の受賞分野ほど、神経の活動が時間軸と空間軸の上で定量化されて、理論化をわくわくさせる分野は他にあまりありません。」

実験をして、脳の活動についてのデータをたくさん集めたとしても、そのデータから「リズム」を見つけて、さらにリズムを組み合わせて理解するための「数学モデル」がないと脳については理解できないのです。 「脳」と「数学」、一見関係のなさそうな2つの分野が、科学の最前線で出会っていました。

==============================

山口先生のお話をもっともーっとご紹介したいところなのですが、今日はここまで。

はい、そこ、「えーっ」とか言わない!

そんな皆様のために、今年のノーベル賞を振り返るイベントを10月25日(今週の土曜日!)に行います 科学雑誌「Newton」と「日経サイエンス」から編集者の方をお招きし、我々科学コミュニケーターとともに、ニコニコ生放送でお届けします。日本の研究者の受賞に沸いた物理学賞に加え、生理学・医学賞、化学賞についてもたっぷりお話しします(堀川さん高橋さん、任せた!)。名物科学コミュニケーター「予想屋さん」もやってくる生放送、ぜひお楽しみに!

==============================

ニコニコ生放送「誰でもわかる今年のノーベル賞」

日本科学未来館チャンネルよりお届けします! 

http://ch.nicovideo.jp/miraikan

放送日: 2014年10月25日(土) 19:30~20:30

出演:Newton編集部 板倉龍氏

日経サイエンス編集部 古田彩氏

科学コミュニケーター・堀川晃菜、福田大展、髙橋麻美、詫摩雅子

司会:増子瑞穂氏

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

コメントを残す