あなたも歴史的偉業で受賞するかも!?

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ブログをご覧の皆様こんにちは。科学コミュニケーターの野副です。

今年のノーベル賞の結果、皆さんはどのように受け止めたでしょうか。青色LEDに関する受賞は、世界はもちろん、日本のモノづくりの現場にも明るいニュースでした。さて、そんなノーベル賞の興奮が冷めやらぬ間に、別の歴史的偉業に賞が贈られたことをご存じでしょうか。その名も......

IEEEマイルストーン!

ハイ、何のこっちゃ!?と思った人、手を上げて~♪......うん、たくさんの手が上がりました。確かに「マイルストーン」はおろか、そもそも「IEEE」ってなぁに?っていう人も多いでしょう。でも皆さん、「IEEE」って実は身近なところにたくさんあるんです。その説明の前に、今回受賞したものが何か、ご紹介しましょう。それがこれ!

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え、未来館の展示物が受賞!?いやいや、さすがにそれは......。

......失礼しました。受賞したのは展示物ではなく、スーパーカミオカンデに用いられている「光電子増倍管(写真の下の電球みたいなもの)」です。これがこの度、IEEEのマイルストーン認定を受けたのです!

だから、それってなんなのさ!?

そうでした。まずIEEEからご説明しましょう。これは、米国電気電子学会のことで、アメリカに本部を置く世界最大の電気・電子機器関連の技術者組織です。国際学会の開催や技術教育などと合わせて、電子機器の規格に関する標準化も行っています。学会や教育となると、技術者でもない限りほとんどご縁がないと思いますが、最後の標準化については、わたしたちの生活と切っても切れない関係があります。

え?IEEEなんて今まで見たことないけど?

いやいや、そんなことはありません。意識していないだけで、皆さんもどこかで少なくとも1回は見たことがあるはず。手っ取り早く見つけたいのなら、スマートフォンの説明書を見てください。説明書のどこかに「IEEE802」といった記載を見つけられるはず。......そう、多くの人がすでに当たり前のように使っている無線LANの規格も、この団体が定めているのです。

で、マイルストーンってなんなのさ!?

はい。お次はその話。「マイルストーン」というのは、もともと鉄道などの起点から距離を示す標識のことですが、そこから転じて「道しるべ」とか、プロジェクトや事業などの「節目」といった意味を表すこともあります。IEEEが定めるマイルストーンは、電気・電子機器の歴史で道しるべとなる偉業を成し遂げた製品に贈られるものなのです。そのすごさっぷりを例えるなら「エレクトロニクス界のノーベル賞」って言えちゃうほどなんです!

受賞理由は?

今回受賞した浜松ホトニクスの光電子増倍管は、素粒子ニュートリノを観測するために建設されたカミオカンデに使われている20インチのものです。2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が同社に依頼して作ったものです。ニュートリノの観測に貢献したことが受賞理由です。

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カミオカンデ用20インチ光電子増倍管(画像提供: 浜松ホトニクス)

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豊岡製作所に設置される銘板(画像提供: 浜松ホトニクス)

日本のものが受賞したのは初めて?

いえ、過去にもいろいろ受賞しています。例えば東海道新幹線(受賞対象が1964年で、受賞は2000年7月)や、電子式卓上計算機の先駆的事業(同1964~1973年, 同2005年12月)などがあります。数が多いので全部は挙げませんが、実は日本のものが受賞した中で、最も古いものをご存じでしょうか。それが2014年4月に受賞した「日本の一次・二次電池産業の誕生と成長」で受賞した屋井乾電池です。受賞対象年はなんと1893年。

1893年といえば、19世紀ですよ!

この受賞では、鉛蓄電池と乾電池、リチウム一次電池、ニカド電池でそれぞれGSユアサとパナソニックも含まれていますが、屋井乾電池は日本で受賞したもののなかで現在のところ唯一、19世紀を対象として受賞しています。

屋井乾電池って何?

このブログで初めて目にする名称かもしれません。正確には、屋井乾電池社が受賞していて、乾電池の発明という業績に贈られたものです。......そう、あまり知られていませんが、乾電池の発明は日本人だったのですよ!その会社を作ったのは、新潟県長岡出身の屋井先蔵(やいさきぞう)です。

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乾電池を発明した屋井先蔵(画像提供: 一般社団法人電池工業会)

乾電池の誕生にドラマあり!

屋井氏は、15歳のときに時計店へ働き始め、機械技術を勉強します。働きながら進学も志し、上京して高校受験に望みます。最初の受験は不合格となり、次の受験に望みますが、なんと年齢制限で受験のチャンスは最後。そして受験当日。なんと彼は寝坊してしまうのです。このとき、正確に動く時計を作ろうと決心したのだとか。そこから屋井は働きながら電気時計の開発に注力しますが、当時主流だった「液体電池」では液体が漏れたり、冬場は凍結して使えないなど、時計に組み込むには扱いが難しかったのです。そのため、どうにかして「乾電池」を作れないかと試行錯誤を繰り返し、ついに乾電池が発明されたのです。

まだまだドラマは続く!

でも、この発明はちょっと早すぎました。当時は、乾電池を必要とする電化製品がほとんどありませんでした。そう、時代が追いついていなかったのです。しかしその後、日露戦争が始まって戦地で使うようになり、乾電池の需要が一気に増えて大評判になりました。会社は大きくなり、彼は「乾電池王」となりました。......あれ、これってなんだかノーベルさんに似ていると思うのはわたくしだけ?

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屋井乾電池(画像提供: 一般社団法人電池工業会)

屋井氏がなくなった4年後、「ナショナル乾電池」が発売されます。一般家庭用の乾電池の発売により、乾電池は一般家庭に広く普及することとなりました。屋井がもっと長生きしてノーベルのような賞を創設したかどうかはわかりませんが、彼の発明のおかげで、わたくしたちは今日の便利な生活ができるとって過言ではないでしょう。

もしかしたらあなたも受賞できるかも?

屋井氏の発明の動機は、「もう遅刻したくないから」でした。皆さんも、困ったことを解決したり、自分の望みを叶えたいと思ったことはあるでしょう。その動機が発明や開発の原動力となり、わたくしたちのくらしを変えていきます。

innovation1.jpg技術革新の原動力の展示

未来館の常設展3階「未来をつくる」の中に、「技術革新の原動力」という展示があります。この展示は、ボールを投げ入れる願いの泉から始まります。その願いから流れ出た「創造力」が5本の川となって革新的技術の紹介につながっています。

innovation2.jpg豊穣の海

そして行き着く先は「豊穣の海」。創造力によってもたらされた技術や知識をどのように使って未来の社会を作るか、皆さんの考えを書き込む展示です。ここに書き込んだ考えの中から、もしかしたらIEEEマイルストーンやノーベル賞を受賞するようなものが出てくるかもしれません。

ちなみに今日11月11日は「1」が並ぶ日ということもあって、一年で一番記念日の重なっている日だそうです。そのうちのひとつに「電池の日」があります。今日の日付を漢字で縦に書くと、「±月±日」でプラスマイナスが並ぶからなんですね。こんな記念日が設定されるとは屋井氏は思ってもみなかったでしょう。

先の豊穣の海に書き込んでみたい画期的なアイデアがあったら、ぜひ休館日明けの明日以降、未来館にお越しください。ぜひ書き込んで、科学コミュニケーターとそのアイデアについて語り合いましょう。

お待ちしています。

 

 

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