ご当地災害を見直そう

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 みなさんは自分が住んでいる土地で、どんな災害が起きたか知っていますか?

 自然災害を予測することは非常に難しく、災害を絶対に起こらないように自然を制御することは不可能です。災害が起きた際に被害を少なくなるように対処するには、前もってその土地でどのような災害が起きたかを把握しておく必要があります。海岸の近くでは津波、山のふもとでは土砂災害、というように地域によって起こりうる災害は異なるため、自分の住んでいる土地でどのような災害が過去に起きたかを知ることはとても重要です。

 例えば、今年の9月に御嶽山で噴火が起き、その後御嶽山が再噴火するか引き続き注目されていますが、噴火にばかり気をとられて良いのでしょうか。今回の御嶽山の噴火を受け、一般財団法人砂防フロンティア整備推進機構の井上公夫先生にお話しを伺ってきました。井上先生は、「御嶽崩れ」の専門家です。皆さんは、「御嶽崩れ」を聞いたことがありますか?

 1984年に御嶽山の麓にあたる長野県西部で震度6の直下型の地震が起きました。直下型の地震は、規模は小さいものの震源が比較的浅いため、揺れが大きくなる傾向があります。このときの地震による直接的な被害は少なかったのですが、前日までの大雨の影響もあり「御嶽崩れ」と呼ばれる山体崩壊が発生しました。山体崩壊とは、もともともろく崩れやすくなっている地層が、大きな地震や噴火などが引き金となって、大規模に崩壊することをいいます。「山体崩壊」の名の通り、山の一部が崩れるほどの大規模なものです。御嶽崩れでは山の南側で大規模な土砂崩れが起きたのです。この土砂崩れの被害は大きく、29名もの方が犠牲になりました。

 

 御嶽山は1979年に今回と似た噴火を起こし、その5年後に御嶽崩れが起きたという話を井上先生から伺いました。5年というと、かなり時間が経っているという感覚を持つ方が多いと思いますが、地球科学の世界では5年というのはあっという間です。地球科学の眼で見ると、噴火のすぐ後に御嶽崩れが起きたといえます。御嶽崩れのきっかけとなった地震の遠因が、5年前の噴火なのかどうかは意見が分かれています。しかし、1979年の噴火のときも、再噴火ばかりに注目が集まり、地震や大崩壊が起こるとは考えられてはいませんでした。

 

 大きな災害があると、 被害状況や、引き続いてのさらなる災害が起こりうるか、救助が適切にされているか、災害を予測できなかったのかという点に関心が向かいがちです。しかし、これでは根本的な改善にはなりません。 一度その土地でどのような災害が起きているかを、10年や20年ではないもっと長いタイムスケールで紹介し、見直すことを啓発すべきではないでしょうか。

 

 人口の増加にともない、昔は人が住んでいなかった場所にも人が住むようになりました。誰もが自然災害の起きない場所に住むということは実質不可能であり、科学技術が発展することで、自然災害が起きる場所にも安全に住むことができるようになったと考えられています。 しかし、災害が絶対に起こらないように自然を完全に制御すること、どんな災害が起きても安全なものをつくることは不可能です。安全といっても、自然に対して100%はあり得ません。

 

井上先生が、明治・大正時代の物理学者であり、随筆家としても知られる寺田寅彦の

「天災は忘れた頃にやって来る」

 という言葉をおっしゃっていました。自然現象は、100年単位や1000年単位、それ以上といった、人間の感覚からすると非常に長いタイムスケールで起こるものもあります。過去にどのような災害があったかを知りそれを忘れないこと、災害が起きたらどのように行動すべきかイメージしておくことが身を守るために大切ではないでしょうか。

 

 先日11月22日の午後10時過ぎ、長野県北部で震度6弱の地震が起こりました。この地震については、先日私のブログで取り挙げましたが(ブログはこちら)、今年9月に起きた御嶽山の噴火とは関係がないと考えられています。

  震度6弱という大きな地震が起きたにも関わらず、死者・行方不明者が一人も出なかったことは不幸中の幸いでした。住民が協力し救出が行われたことが被害を最小限にとどめた理由だと言われています。これは、2004年の梅雨前線豪雨や中越地震において、無事に避難で来た人の75%が地域の人の支援によるものだったという経験をきっかけにできた、「災害時の支え合いマップ」というものの成果です。過去から学び、日頃から備えていたことが死者・行方不明者が一人も出なかったことに繋がりました。

 

 今回震災が起きた長野県の北部では土砂災害危険個所とされている場所が含まれており、今後も警戒が必要です。土砂災害といった二次災害がおきないこと、さらには被害に合われた方ができるだけ早く平穏な生活ができるように心からお祈り申し上げます。

 

 繰り返しになりますが、災害はその地域によって異なります。ご当地キャラクターが根付いて久しい世の中ですが、ご当地でどのような災害があったかを、各自見直してみてはいかがでしょうか?ご当地災害の知識を持つことが、あなたの身を守ることに繋がりますよ。

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この記事への2件のフィードバック

こんにちは!はじめてコメントさせていただきます…

私は大学で災害医療を研究しております。地震災害が中心ですが、被害が地震によって全然違うこと(当たり前ですが…)やそれが震度やマグニチュードとは必ずしも結び付かないことに悩んでいたこともありました…

そこでこのご当地災害という言葉!最近の私の考えとぴったりきて驚きました!この言葉、頂きたく思います(^O^)

コメント頂きありがとうございます。

おっしゃるとおり、定量化できるものはあくまで震源の深さや、地震のエネルギーであり、被害の大きさはこれに結びつきません。

「ご当地災害」という言葉を気に入って下さいましてありがとうございます。
是非、ご活用下さい。

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