【クローズアップ・ニュース】福島から、科学技術に夢をたくして -高校生たちの挑戦

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「学んだことを活かし、エンジニアとなって、多くの人に喜びや感動を与えられるような人物になりたいです」

そう語るのは、福島県立郡山北工業高等学校を3月に卒業したばかりの鈴木智弥さんです。
頼もしい言葉をくれた鈴木さんは、想像していた通りの人物だと思いました。

私が彼らとその活動を知ったのは、報道番組の中です。
福島県の高校生が、災害時や緊急時に、地域住民、とくに仮設住宅で暮らすお年寄りに、速やかに危険を知らせるロボットの開発をしているのだというのです。国内外において、ロボットのアイデアや製作技術を競う競技会では、数々の賞を受賞し、注目を集めているとも報じられました。
学生服に身を包んだ画面の中の彼らは、情熱にあふれ生き生きとしていて、その魅力に吸い寄せられました。これが彼らに話を聞いてみたいと思ったきっかけです。

そして4月、申し出を快く引き受けて下さった先生、そして生徒の皆さん対し、メールでさまざまな質問を行うことができました。

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福島県立郡山北工業高等学校には、コンピュータ部があります。

10年前からこの部では、コンピュータなどによる制御技術を学ぶために、ロボット製作を活動の中心に据えてきました。今回注目を集めることになったのは、「Pro ROBO(プロロボ)」という、部の活動で開発されたロボットです(写真参照)。小型で持ち運びもできる多機能型セキュリティロボットで、1台で様々な対応が可能なのだといいます。具体的には、地震や火災、さらには気圧の変化を検出してゲリラ豪雨などを予測するほか、温度の上昇から熱中症の危険性を警告してくれたりもします。また留守番ロボットとしても活用でき、侵入者があった場合に警告を発し、電子メールを外出中の家主に送信することもできます。さらには、災害が発生した場合、探査ロボットとしても活用が可能です。

こんな高機能で本格的なロボットの開発を、10代の高校生が行っている、というのは驚きでした。

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そしてこの開発には、もう一つ大きな意味が有ります。
2011年3月の東日本大震災。
震災後、様々な面で注目、心配されている福島の工業高校として何かを発信したい。そんな思いもまた、込められているのです。

開発には苦労もつきもので、特にプログラミングと英語に悩まされたのだといいます。意外な取り合わせに感じつつ、その理由を聞きました。

Pro ROBOにはタブレット端末を搭載しています。端末を動かしているのはスマートフォンにもよく使われているアンドロイドというシステムです。このアンドロイドタブレットと各種センサの接続(インターフェース)をどの様にするかで苦労したそうです。様々な情報を検知できるようにしようと、複数のセンサーを使えるようにしたので、アンドロイドタブレット側でのプログラミングも複雑になり大変だったとのこと。たとえば、個々のセンサによって出力データの形式が違い、変化量がアナログの電圧値の変化で出力されるものや、I2Cインターフェースが組み込まれていて、デジタル信号で出力されるものなどが混在していました。そのため、端末と各センサを連動させるプログラムを作ることが難しかったのだといいます。
また福島での取り組みを、海外にも発信するため、英語のプレゼンテーションやパネルディスカッションを行い、質疑応答にももちろん英語で対応しました。自分たちの作成したPro ROBOの内容を正しく伝え、理解してもらうために必死で取り組んだのだと話してくれました。

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そんな鈴木さんはこの春から、生産設備の研究開発を行う企業に就職を果たしました。
Pro RPBOの開発は、引き続き後輩たちが担います。現在は、実用化に向けた小型化などが目下の課題のようです。

最後に、コンピュータ部の顧問を務める深澤剛先生にお話しを伺いました。
「将来的にはPro ROBOを各家庭に配備し、ネットワーク化することで、地域コミュニティを形成し、防災減災に強い街づくりができればと考えています」
と話す深澤先生は、さらにものづくりと生徒たちへの想いについて、
「ものづくりにおいて大切な『諦めないこと』、『挑戦しつづけること』を実践した結果、国内外で注目されるロボットの開発ができました。ものを生み出す喜びを感じながら『飽くなき挑戦』を続ける姿は、工業高校の誇りです」
と話して下さいました。

20150601_nishioka_04.jpgそして同時に嬉しい報告も頂きました。

4月16日、第6回国際ナノ・マイクロアプリケーションコンテスト国内予選が、宮城県仙台市で開催されました。そして同校は、みごと世界大会への出場権を獲得しました。世界大会は6月20日に米国アラスカ州アンカレッジで開催され、日本からは2チームが出場予定です。なお今回出場を果たしたのは、「Shadow(シャドー」というロボットで、ShadowはProROBOの機能のうち、監視探査機能に重点をおき、小型化し、機動力を向上させたものです。企業の工場や、大規模な倉庫などの監視ロボットとして、活用が期待されます。

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初めて彼らの取り組みを知った報道番組の中で、彼らはPro ROBOを携え、仮設住宅のお年寄りの部屋を訪れていました。Pro ROBOを実際に仮設住宅で使い、有用性や操作性を確認するためです。Pro ROBOの使い勝手もさることながら、何より「若者が頑張っている姿を見ると、元気が出る」と笑顔で語る家主のお年寄りと、真剣なまなざしの彼ら。小さなロボットと家主を囲み、情報を必死に書き取っている様子は、まさに未来を背負って立つ技術者を見るようでした。
そんな姿に確かな光を感じたことを、あらためて思い出しました。

未来館では、福島県の復興を微力ながら応援していきたいと考えています。
私も引き続き、同校の活躍を見守っていきたいと思います。

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