MERS。そして中国では、今・・・

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MERSに関しては、科学コミュニケーターの金がブログに書いたように、韓国では感染者だけでなく、死亡例も出ており深刻な事態になっています。同じ大陸にある私の出身地、中国も、MERSウイルスの脅威にさらされています

ことの発端は1人のMERSウイルス感染者でした。

5月26日に、韓国の男性(44歳)が技術交流会に参加するため、香港経由で広東省に入りました。中国での報道によれば、男性は韓国を出国の際に、すでに咳が出ていたそうです。香港に入る際に、「14日以内にMERS患者との接触がある否か」という質問には「NO」と答えたと報じられています。実際にはこの男性の父親はMERS感染者でした。

そして、5月29日、この韓国人男性は、広東に滞在中に病状が悪化し、病院でMERSと診断されました。香港と中国の当局はこの男性と接触した人と連絡をとり、香港では43名、広東では78名が隔離措置となりました。幸い、潜伏期間とされる2週間がたった6月11日までに発症した人はなく、2回の検査を得て、6月12日早朝に全員帰宅したそうです。

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「中国まるごと百科事典」提供の地図に陳が文字などを書き込み

肝心のMERS感染者ですが、異国での治療を余儀なくされ、最初は強いストレスを感じ、かなり精神的に追い詰められた状態だったようです。男性の滞在先である広東の恵州という町はそれほど大きな都市ではありません。もっと大きい病院への転院も検討されていましたが、感染拡大を防ぐため、専門家チームを派遣することになりました。そのチームのリーダーを担った人は鐘南山(チュン・ナンサン)という専門家です。

この鐘先生は中国では非常に名の知れた人です。鐘先生こそ、2003年に中国大陸でSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行っていた時に、医療リーダーを勤めた人なのです。鐘先生は当時、深刻な状態が続いていた広東省の第一線で患者の診療をつづけただけでなく、情報公開に積極的ではない政府を説得してWHO(世界保健機構)と連携をとり、SARSの被害拡大を食い止めることに尽力しました。鐘先生はこの際立った貢献から、中国の国民栄誉賞を受けています。中国でもっとも有名な医者といっても過言ではなく、市民からの信頼も絶大です。

そんな鐘先生をはじめ、合計25人の医者団が韓国人MERS患者の診療に当たりました。また、研究施設が乏しいことから、この患者のサンプルを分析する専用の検査室を立ち上げました。さらに、患者になるべく落ち着いてもらおうと、24時間体制が可能なように通訳を3人用意したほか、食事も韓国料理に変えました。

こうした治療のかいあって、6月5日からの5日間連続で、患者のウイルス検査の結果は陰性となりました。ほかの検査値も体内のウイルス量が減ったことを示しています。

さきほど少しふれていましたが、2003年の中国でSARSが流行したときのことは、まだ覚えているでしょうか。私はそのとき、北京の高校に通う高校3年生でした。学校は1ヶ月以上休みとなり、街中から人が消えていました。軽い咳をしても、まわりから痛いほどの視線を感じていました。病院の近くの住宅まで死者が出て、医療関係者すらマスクや消毒剤を手に入れられなかったそうです。

2002年に最初の患者が見つかり、2003年に大流行となったSARSでは、中国(香港、マカオを含む)では7082人が発症し、647人がなくなっています(世界全体では8069人が発症し、775人が死亡。いずれもWHOの2003年7月11日の最終報告)。

そんな悪夢のような感染症を経験しているからこそ、今回のMERSに対して中国の人々は非常に敏感になっています。必要以上に怯え、同じ街にいるだけで自分も感染しているのではないかと考えすぎている人が続出しています。今回は、急遽、現地で心理カウンセリングを行うことになりました。MERS患者を看ている看護師はこんな呼びかけをしています

「本当の猛毒となるのはウイルスではなく、根拠のないデマです」。

これから、中国では冷静な対応が必要になりそうです。

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