「最近、地震が多い」は本当?!

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5月30日(土)の晩に日本全国を揺らす地震がありました。とくに関東では大きく揺れ、電車が止まるなどの影響が出ました。家にいた私は、テレビを見ていました。

感じた揺れは2回あり、最初は弱い横揺れがきて、数十秒後には強い横揺れが1分ほど続きました。

その時、あれ、何か変だなとすぐに思いました。何が変だというと、1分も続く横揺れもあるので、直下型地震ではないはずです。しかし、結構強い揺れなのに、緊急地震速報(警報)は全く出されていなかったのです。

なぜだ?

ちょっと腑に落ちないところも感じつつも、揺れが収まると、すぐに外出できる服装に着替え、防災非常用の鞄を取り出し、いつでも避難できる準備を整えていたところ、テレビに速報「地震規模マグニチュード8.5(M8.5 )、震源の深さ590km」が流れて来ました。(のちに、この速報値は修正され、M8.1、震源の深さ682kmとなりました)

「なぜ、緊急地震速報(警報)が出なかったのか?」この速報で、納得しました。機器のトラブルなどではなかったのです。深発地震では、正確な震度の予測が困難であるため、警報を発表していないのです。現在の緊急地震速報は、震源の深さが150kmを超える場合は警報を出さないシステムになっています。

jiang_0615_Hinet.JPG

1:未来館5F展示Hi-netの震源プロット図。 
地震の表示期間は、2013/10/10~2015/05/31で、赤い点は、震源位置160km以上のものを示しています。

「深発地震」とは、名前の通り、震源が深いという地震のことです。では、なぜ震度の予測が難しいのか?気象庁の記者会見の中でも、説明がありました。

震源が浅い地震の場合は、震源からの距離が遠くなればなるほど、揺れは弱くなるという性質があるため、これを利用して本震の強い揺れの到着時刻を、素早く計算し緊急地震速報を出すことができます。

(緊急地震速報の仕組み:

http://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/nc/shikumi/shikumi.html

しかし、深さが150kmを超える地震の場合、この性質を利用できないため、正しく計算できないわけです。

(もっと詳細を知りたい方は、気象庁の「異常震域」という現象をご参照ください。

http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/faq/faq27.html#28

今回の地震の場合、震源が682kmの深さでしたから、震源からの距離という意味では、地表面では日本中どこでもそれほど大きな差がない、ということになってしまいます。

ところで、最近は地震がずいぶん多いと思っている方も多いかもしれません。

では本当に多くなっているでしょうか?実際に調べてみました。

気象庁では今までの地震のデータをインターネットで公開しています。

http://www.data.jma.go.jp/svd/eqdb/data/shindo/index.php

こちらのウェブページで、調べたい期間や地震の大きさを設定すれば、すぐに詳細データと震源地図をみることができます。

今回私は、2009年6月~2015年5月の6年間に、日本で発生する最大震度4以上の地震データを調べました。

そして、そのデータを用いると、下記のような表になりました。

表1.png

表1:日本の直近6年間月別の地震発生数(震度4以上) 

2011年3月の東日本大震災を本震とする余震がとても多いため、2012年までに震度4以上の地震がかなりありました。しかし、その後から現在までの地震活動が徐々に落ち着いてきたことが、この表で確認できます。

さらに、2012年3月以降から2015年5月までの地震を抽出すると、このような表が得られます。

表2.png

表2:2012年~直近までの日本月別地震発生数(震度4以上) 

この表を見て、皆さんはどう思うでしょうか?最近地震がとても多いとよく言われますが、実際には「とても多い」と言えないかもしれません。

では世界の地震はどうでしょう?

IRIS [ Incorporated Research Institution for Seismology ] という、米国立科学財団やその他の連邦政府機関、大学、および私立財団の支援のもとに運営され、地震データの収集・配信を通して地球内部の調査活動を行っている機関が発表したデータを見てみましょう。

http://ds.iris.edu/seismon/

jiang_0615_表3.png

表3:世界地震の年別発生数(マグニチュード7以上) 

こちらは、1990年1月1日~2015/05/30のマグニチュード7以上の地震の数を年別で表しています。今年のデータは5月末までのものですが、1年で換算して他の年と比べても、世界全体で見て最近地震が多いとは言いがたいデータです。

では、最初の日本の地震発生数に戻りますが、表1は最近6年間のデータだけでした。それよりも昔のデータを調べたらどのような傾向が見られるのか? とても気になりましたので、さらに昔の日本の地震データを調べてみました。

表4.png表4:日本の最近35年間の年別地震発生数(震度4以上) 

こちらは、1980年から2015年5月末までの年別データです。

2011年では、東日本大震災の影響で、余震がたくさん発生したことが分かると思います。しかし、2000年を見ると、震度4以上の地震は、2011年よりもずいぶん多い(312回)ではないか!これは一体どういうこと!?

さらに調べてみたら、2000年に日本の違う場所でいくつ大きな地震が起きたことが分かりました。

日時

マグニチュード

震源

震度

2000年7月 1日

6.5

新島・神津島近海※

6弱

2000年7月30日

6.5

三宅島近海

6弱

2000年10月 6日

7.3

鳥取県西部

6強

※新島・神津島近海を震源地とする6弱の地震が、2000年7月1日~8月29日の期間に5回起きていました。

このぐらいの規模の地震が起きたら、余震がともなうものです。そのため、震度4以上の地震は頻発しました。

最近の地震が多いと感じるならば、2000年の時は、一体どのように皆さんが感じたのかについても気になるところです。(残念ながら2000年の報道状況や口コミについて情報がとても少ないため、当時はどのように思われたかについて判断できません。何か情報がある方は、ぜひコメントいただけたら幸いです。)

以上のように、科学的なデータで見てみると、地震の真相が見えてくるかもしれません。

■多い、少ないという感覚は、周りの情報によって感じ方が変わる。

①自分が体感する地震の数という情報

こちらの「都道府県別・地震回数ランキング」をご覧ください。

http://jisin.jpn.org/rank30Pref2015.html

2015年の現在まで、茨城県、岩手県、宮城県がTop3になります。

こちらの3県にお住まいの方は、当然他の県の方より地震がよく起きると感じるはずです。

②メディアなどからの情報

メディアやインターネットの情報が煩雑になっている今、自分で判断しければならないものがたくさんでてきました。「地震が多い」という情報がよく耳に入るから、「多くなった」と感じることがかなりあると思います。

周りの情報に惑わされないで、皆さんが科学的なデータを調べてみて判断していただきたいと思います。(もちろん、地震だけに限らずです。)

■地震の発生数だけを調べても、大地震がいつ来るか分からない

2011年の前に地震の数が、特別に多いわけでも、少ないわけでもなかった。あくまで平年通りでしたが、いきなり大地震が起きました。(こちらで言う多い、少ないという感覚は、あくまで人間の日常感覚で、35年間のデータしかありません。しかし、地殻変動のような地球規模の変化は、数百・数千万年のスパンで研究しないと、正確な結論が出せません。)

今の知識や経験では、いつ、どこで地震が起きるのを、正確に予想することが難しいです。しかし、いつ来るか分からないがゆえに、常に備える必要があると思います。私の以前のブログでも紹介しましたが、地震への備え方がとても重要です。

日本に住んでいる限り、地震と付き合わないわけにはいきません。このことを忘れずに、今回の地震を機に、今一度その備え方を見直していただけたら幸いです。

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この記事への2件のフィードバック

すごく分かりやすい記事だと思いました。客観的に見るということの大事さと地震は常に起こりうるということをもう一度肝に銘じておこうと思いました。最近ではTwitterなどの口コミに頼りがちなので気をつけようと思います

戸田 様

いつもコメントいただき、ありがとうございます。
評価していただき大変感謝しております。

インターネットの口コミは、今や重要な情報収集の手段の1つになっております。私もTwitterやFacebookをよく使います。しかし、全部そのまま鵜呑みをすることが良くないので、ぜひ様々な視点から見ていただけたら幸いでございます。

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