箱根山のニュース。気づきましたか?表記の変化

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2015年6月30日の13時前。お昼ご飯をちょうど食べ終えたところで同僚から

「噴火したよ!」

と声をかけられました。

そうです。箱根山のことです。地学を専門とする科学コミュニケーターの私に、箱根山が噴火したと同僚は知らせてくれたのです。私はついにきたかと思うとともに、どのくらいの噴火だったのか、被害はどの程度のものだったのか、箱根に住んでいる友人は大丈夫か、などとさまざまな疑問や不安が浮かびました。

すぐにデスクに戻り、インターネットのニュースを検索したところ、私が調べた限りでは、「避難警告のレベルが上がった」という見出しはあっても「箱根が噴火」、といったものは見当たりません。

どうやら、直接被害が出るような大きな噴火は起きてない、ということを確認し、まずはほっと一息。安堵したところで、一概に「噴火」といってもいろいろあるな、としみじみ思いました。

噴火とはなんでしょうか?さらには、噴火の規模は大小とても大きい幅がある中で、どの規模から噴火というのでしょうか?

「噴火」とは、地球内部から、物質が比較的速いスピードで放出される現象のこと

と、言われています。そのため、どんなに小さな規模でも、噴火は噴火です。しかし、それでは記録するのが大変ですので、気象庁の中では「噴火があった!」と記録するかどうか、しっかりとした基準があります。

その気象庁の「噴火の記録基準」を引用してみましょう。

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噴火の規模については、大規模なものから小規模なものまで様々であるが、固形物が噴出場所から水平若しくは垂直距離概ね100~300m の範囲を超すものを噴火として記録する。

確認の方法等は以下のとおりとする。

(1)遠望カメラによって基準に合致すると考えられる火山灰の噴出が確認できた場合

(2)後日の現地調査で基準に合致すると考えられる現象が確認できた場合

(3)地震計・空振計等によって基準に合致すると考えられる現象が発生したと推定できた場合

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いかがでしょうか?

噴火というと、ある程度大きな爆発現象、それによる被害を想像される方がほとんどだと思います。しかし、実際は噴火といってもさまざまの規模があります。今回の箱根山では大涌谷に設置している遠望カメラによる観測において、6月30日に新たな噴気孔とその周囲に火山灰等の噴出物による盛り上がりを確認した程度と、非常に小さなものでした。

今回、情報収集をしてわかったのは、「噴火した!」と騒がずに、「箱根山の噴火警戒レベルを引上げた」という報道がされていたという点です。とても冷静に状況を注視している印象を受けました。

さて、今回ブログのタイトルにもしましたが、皆さん、報道をみて、ある表記の変化に気がつきましたか?

これまでの報道では「大涌谷周辺(箱根山)」という言葉が使われていたのに対し、急に「箱根山」、という言葉が使われていました。

実は6月17日の時点で、

・箱根山の噴火警戒レベル2(火口周辺規制)の時は、警戒が必要な区域を「大涌谷周辺(箱根山)」と表記する。

噴火警戒レベル3(入山規制)へ引上げられた場合は、「箱根山」という名称を用いる。さらに、記者会見等において、警戒すべき範囲を明示し、丁寧に説明する。

るという情報発表の方針を気象庁が決めていたのです。

6月30日付けで、警戒レベルが3になったため、箱根山という表記が使用されるようになりました。具体的な警戒内容は、「今後、大涌谷周辺の想定火口域から700メートル程度の範囲まで影響を及ぼす噴火が発生する可能性がありますので警戒してください」というものです。

このように、情報発表においても、しっかりと防災をすること、警戒すべき地域はどこなのかを明確にすること、箱根山全体が危ないという誤解を生じさせないこと、風評被害が出ないようにすることなど、さまざまなことに気を配っているのです。

箱根山とどのくらい密接に生活しているかにもよりますが、必要以上に不安にならずに生活や観光ができるような観測・報道体制が箱根山に敷かれていると感じました。

箱根にお住まいの方、観光へ行かれる方は、気象庁から発表されている以下3点にご留意ください。

・大涌谷周辺の想定火口域から700メートル程度の範囲では小規模な噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石に警戒すること

・風下側では、火山灰や小さな噴石が風に流されて降るおそれがあるため注意すること。

・地元自治体などの指示に従って危険な地域には立ち入らないでください

この3点に気を配りながら、生活を送り、観光をしていただければと思います。

話の最後に私の個人的な思いを。

昨年12月に箱根へ遊びに行きました。帰りに箱根湯本駅のホームで、大涌谷名物の「黒たまご」を持っている人を見かけ、また来て、次は絶対にあれを食べよう、食べに来ようと心に決めました。そんな矢先、このような事態になってしまいました。

箱根山の火山活動が落ち着くまでには、まだ時間がかかりそうですが、平穏な時間が戻ることを願ってやみません。早く「黒たまご」を食べに行けますように。

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この記事への4件のフィードバック

とても非科学的なブログですね。
例えば、神奈川県温泉地学研究所の下記の情報をみましたか?
http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/modules/mysection1/item.php?itemid
=44
カルデラ内の大半の所で地震が起きてます。だから、「箱根山」でしかありえません。「大涌谷」限定は間違いです。事実、過去には大涌谷の外、上湯場で噴気も上がっています。
「(箱根25)現時点で箱根山の噴火についてわかっていること。(http://togetter.com/li/841609)」
こんな解説をしてくれる先生もいます。
噴火の予知が出来ない現在において、不確かの安心感を与えることは、とても危険です。
科学に携わるのならば、科学的に話をしましょう。
情緒的な話はだれでも出来ます。だから風評被害が起こるのです。
有識者が、100%でない話をあたかも100%のように言うのは(ある意味)犯罪行為です。

としろうさま

コメント頂きまして、ありがとうございました。

 火山による被害を考えたとき、噴火によって命を失う、ケガをするといった直接的な被害に注目されがちですが、噴火の予兆によって、それまで通りの生活ができなくなってしまうことも見過ごせない被害だと考えています。
 3.11の震災をはじめとする過去の大きな災害を振り返っても、それまで通りの生活ができなくなってしまったことがきっかけで体調を崩し、最悪、死に至ってしまうケースもあります。
 直接的な被害と間接的な被害のバランスをコントロールすることが、自然災害の減災、ひいては自然と人間が付き合っていくために大切と考えています。今回の気象庁の情報発表の方針はこのことが垣間見えたため、記事として取り上げました。
 
 箱根は安心などと伝えるつもりはなく、間接的な被害のことも考えて判断・行動することが自然とつきあうには大切だと思っております。

多くの方がさまざまな感想をお持ちになると思います。
ぜひ、多くのご意見・感想をお寄せ下さい。よろしくお願い致します。

佐竹さんの仰る通り、気象庁は一言一句かなり注意して発表していますね。

 今回の箱根の警戒レベル引き上げについての記者会見をニコ生を通してみていましたが、気象庁は明確に「噴火」とは言ってはいませんでした。
 しかし、記者の方の一部にはどうしても気象庁に「噴火」と言わせたいような質問をされる方もいらっしゃいました。

 天災にかかわらず、自分(達)の知識・経験を超える事象が起こると色々と勘ぐってしまったり、想像を飛躍させてしまったりしまいがちですが、まずは公の機関の発表を軸に何に注意しなくてはならないかとか、どう対応したほうが良いかと自分なりに考えていくように心がけて行くことが大切なのではないかと思っています。
 インターネットのおかげで様々の情報を目にすることが出来るようになった今だからこそ、『科学未来館の科学コミュニケーター』としての視点から書かれている、コミュニケーターブログはいつも参考にさせて頂いています。(震災の時など本当に参考になりました。)
 だからこそ私は科学コミュニケーター皆さんには、極力客観的に、科学的にそれでいて、情緒的に発信していただける事を望んでいます。
 私はこのブログのファンです。何だか無理難題をお願いしたようですが、、『科学未来館の科学コミュニケーター』だからこそ出来るブログを期待しています。

 これからも皆さんのブログ、楽しみにしています。
 長文失礼しました。

半人前様

コメント頂きまして、ありがとうございます。

今はIT技術の発展により、悪意はなくとも情報が加工されて流布することが少なくないため、発信する側は気をつけなければならないとの印象を強く受けます。

半人前さんのおっしゃる通り、様々な情報が溢れる昨今だからこそ、まずは公的機関の発表を軸として情報を集め、各自がどう対応するかを考えて行動することが大切だと考えております。

科学コミュニケーターブログに注目頂きありがとうございます。ご期待にそえるように頑張りたいと思います。
今後ともよろしくお願い致します。

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