ウナギは、生き物です

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7月23日、今日は二十四節気「大暑(たいしょ)」です。

もう文字を見るだけで暑い、やめてくれ、と言いたくなります。

 

スーパーには夏バテ防止の食材が並んでいます。今の目玉は、やっぱりウナギ。2015年の土用の丑の日は明日、7月24日です。ちなみに今年は、8月5日も土用の丑の日。2回の年もあるのです。この場合、早い方を一の丑、遅い方を二の丑と呼ぶそうです。

2日ある今年は、2回もウナギを食べられる!

 

......はい、ウナギに手を伸ばしたそこのあなた。

ウナギという生き物のこと、どれだけ知っていますか?

  

ということで今日は、生物としてのウナギについてみていきます。

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「ウナギ」という名のウナギは、今はいない

ウナギは、世界で16種3亜種が知られています。意外とたくさんの種類がいるんですね。これらは全てウナギ目ウナギ科ウナギ属に属します。(生物の分類について、詳しくはこちらをどうぞ)

そのうち、ニホンウナギオオウナギの2種のみが昔から日本にいるウナギです。

最近では、養殖用に輸入されていたヨーロッパウナギが野外でも見つかっています。1999年の報告では調査地点6カ所中、2カ所に生息していたとのこと。

かつて日本には、「ウナギ」という名前のウナギがいました。

いなくなった原因は絶滅ではなく、標準和名(日本語の正式名称)変更のためです。2010年に世界的なウナギ研究者である、塚本勝巳教授(日本大学)らにより提案され、かつてウナギと呼ばれていた種は「ニホンウナギ」になりました。

これはウナギと言ったときに、日本在来の「ウナギという1種」を指している場合と、「ウナギ属全体」を言っている場合の両方があり、それによる混乱を避けるためです。

  

ニホンウナギのヨウセイはマリンスノーを食べる

ウナギの「ヨウセイ」とは、「妖精」ではなく「幼生」
幼生は、成長の過程で大人の姿とはまったく違った形をした段階のことです。例えば、オタマジャクシはカエルの幼生にあたります。

ウナギの幼生は、レプトセファルスといい、こんな姿をしています。


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画像:ウナギではなくアナゴのレプトセファルス幼生
Leptocephalus larva of a conger eel 7.6 cm (Photo by Uwe Kils)/wikipedia commons

あらま!薄っぺらじゃないですか!

レプトセファルスは、葉形幼生と表されます。その名のとおり、ぺらぺらの体に透けて見える骨がまるで葉脈のよう。これが成長すると、みなさんご存知の細長い円筒形のウナギになります。にわかに信じられませんが、事実です。

姿も名前も不思議なレプトセファルス。これが何を食べているのかはさらに謎でした。明らかになったのは、2012年。2009年に開発された、アミノ酸の窒素同位体比を使った栄養段階の推定法によって示されました。(栄養段階とは、植物を1として、植物を食べる動物を2、さらにそれを食べる動物を3...としたときの数値です)

推定結果は、2.4。これは、植物プランクトンや動物プランクトンの遺骸などでできたマリンスノーを食べていることに相当します。「ヨウセイのレプトセファルスはマリンスノーを食べる」なんだか神秘的な響きです。

  

ニホンウナギの長い旅

ニホンウナギは一体どこで生まれ、どこで育つのでしょう。これも、近年ようやくわかってきたことです。ニホンウナギの天然の卵が見つかったのは、2009年5月のこと。場所は、日本から約3000km離れたマリアナ諸島西方海域。水深は200m前後、「薄い海水と濃い海水の境目と海底の山列」の交わるあたりで見つかりました。薄い海水はこの地域に降るスコールによって生じます。

卵は約1日半でふ化し、卵黄のついたプレレプトセファルス、次に自分でエサを食べるレプトセファルスへと成長しながら、海流に流されて日本に近づいてきます。レプトセファルスの薄っぺらで、水分を多く含むために沈みにくい体は、海流に乗るのに有利です。4,5ヶ月間の旅の末、シラスウナギと呼ばれる白く細い姿へと変態し、海流を降りて日本の河口に向かって泳いできます。

シラスウナギは川に入り、だんだん黒っぽくウナギらしい姿に変わります。雄で5年前後、雌は10年前後を川で過ごします。そして、金属光沢が出た「銀ウナギ」と呼ばれる状態になると、川を下り海へ出て、再び約3000km先の産卵場へと泳いでいくのです。

  
  

ウナギの祖先は深海魚

2010年、19科146属に分類されるウナギ目(もく)のうち56種を使って、ミトコンドリアDNAの比較が行われました。その結果、ウナギ属は、アナゴやハモ、ウツボなどとは進化的に遠い関係で、水深200m~3000mの深海にすむフウセンウナギやフクロウナギなどの仲間に近いことがわかりました。

ウナギの祖先も、外洋の深海にすんでいた可能性が極めて高いという結果が出ています。

ニホンウナギの産卵場所は、水深200m前後と推定されています。これは、深海にすんでいた過去の名残なのかもしれません。けれど、今では産卵場から数千キロも旅をして、日本の川にやってきています。一体何がそうさせたのか?深海から上がってきて、水圧の変化にはどう対応したのか。また、海水と淡水の両方に生きるためには、浸透圧の問題も大きいはずです。

ウナギは美味しいだけでなく、生物学的にも魅力の多い生き物です。

  

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そんなウナギの絶滅が心配されています。

2014年6月、国際自然保護連合のレッドリストにニホンウナギが載りました(絶滅危惧ⅠB類)。他にも、ヨーロッパウナギ、アメリカウナギなど、準絶滅危惧種も入れると合計8種がリストアップされています。

  

明日は、年に1度(今年は2度)のウナギの日がやってきます。

ウナギの未来は、どうなっていくのでしょう。

  

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参考ページ

日本の川にヨーロッパのウナギがいる? - いらご研究所
http://www.irago.co.jp/documents/foreign_eel.html

ZHANG et al. (1999):Foreign Eel Species in the Natural Waters of Japan Detected by Polymerase Chain Reaction of Mitochondrial Cytochrome b Region
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fishsci1994/65/5/65_5_684/_article

人類が初めて目にした天然ウナギ卵 - 水産総合研究センター
https://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr22/230202/0202besshi1.pdf

ウナギの幼生の食性を解明 ~ウナギの幼生は何を食べているのか?~ - 海洋研究開発機構
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20121107/

ウナギの進化的起源は深海に! - 東京大学大気海洋研究所
http://www.aori.u-tokyo.ac.jp/research/news/2010/files/pr100106.pdf

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この記事への2件のフィードバック

「シラスウナギは川に入り」とありますが、海に留まるウナギも相当数いるようです。耳石のSr/Caを調査した結果です。
http://www.fra.affrc.go.jp/unagi/unagi_shigen.pdf

実際、東京湾はかつてウナギの大産地でした。日本科学未来館のあたりでもウナギが育っていたのかもしれません。

わたなべさま

コメントで情報をお寄せいただき、ありがとうございます!
リンクいただいたページは、海に留まるウナギのことだけでなく資源量のことも詳しく載っていて、勉強になります。ありがとうございます。

海と川を何度も行き来するものもいるそうですね。一体何がそうさせるのか、益々興味深いです。

ウナギの大産地であった東京湾の海中を、ふとイメージしてみました。
3000km先からシラスウナギの大群がにょろにょろとやってきて、時期が来たら黒々とした銀ウナギがどこからともなく現れて、皆、同じ方角へと泳いで去っていく。その生態に多くの謎を秘めながら。

ああ、今もどこかの海・川ではそのようにウナギが生きているんですよね。

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