【クローズアップ・ニュース】夏のデング熱と話題の感染症 ―共通点と課題

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梅雨のころから、ちらほらと耳にするようになっていたのが「デング熱」という言葉。

昨年夏、東京を中心として各地でも患者が確認された感染症です。
夏、という季節限定で流行したことには理由があります。皆さんも聞き覚えがあるのではないでしょうか?

この感染症はネッタイシマカ(熱帯縞蚊)とヒトスジシマカ(一筋縞蚊)という種の「蚊」が媒介する感染症です。人から人へ、直接感染することはありません。幸い日本には四季があり、蚊が見られなくなる季節の到来とともに、デング熱の感染拡大も終息を迎え、話題に上ることもなくなっていきました。

そして再びの夏。 心配される再流行がないことを願いつつ、ニュースや新聞を眺めています。

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昨年日本では、デング熱の感染が大変話題になりました。
それは国内での感染が、近年稀に見ることだったからです。渡航先の海外で感染し、日本に帰国後発症するという例は、実は毎年のように見られています。ですが昨年の例は違いました。海外での感染者が、国内で新たな感染源となり、渡航歴もない他の人へ感染を広めたことが確認されたのは、実に69年ぶりのことでした。しかしデング熱は、無症状で終わることや、その他の病気と見分けがつかないまま回復するケースもあることから、見過ごされた例もありそうです。本当に「久しぶりの」流行と言って良いかは、定かではありません。

グラフでは、海外で感染し、日本で発病が確認された患者数を青色で、国内で感染し、発病した患者数を赤色で示しています。

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出典:国立感染症研究所ホームページ (http://www0.nih.go.jp/vir1/NVL/dengue.htm

このデング熱をはじめ、最近では中東呼吸器症候群(MERS;マーズ)やエボラ出血熱、そして重症急性呼吸器症候群(SARS;サーズ)など、国内外で感染症の流行を懸念するニュースを耳にすることが増えました。診断技術が進歩し、これまで原因不明だった病気を見つけ、速やかに診断することが可能になった結果とも言えますが、ここにはある共通点と課題があるように感じます。

この共通点と課題を、私なりの視点で書きたいと思います。

皆さんは、「人獣共通感染症」という言葉を聞いたことがありますか?
読んで字のごとく、人と動物(脊椎動物:背骨を持つほ乳類や鳥類など)に共通して感染を起こす感染症のことです。実は冒頭で書いたデング熱、MERS、エボラ出血熱、そしてSARSは全て、この人獣共通感染症にあたります。

感染症には、特定の種のみに感染を起こすものと、人獣共通感染症のように複数の種に感染を起こすものが存在します。そして、人の感染症の約60%がこの人獣共通感染症にあたります。
さらに細かく分けると、近年新たに流行が認められるようになった感染症は、「新興感染症」と呼ばれます。デング熱やマラリアなどは古くから知られる感染症ですが、エイズやエボラ出血熱、狂牛病、SARSなどが新興感染症に含まれます。そして、新興感染症の約75%が人獣共通感染症にあたり、年々増加の傾向を示しています。

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何が感染症の撲滅を困難にし、新興感染症を増やす要因となっているのでしょうか? ここには私たち、人類がともに考えるべき課題が潜んでいるように思われます。

私たちは現在、科学技術の発展により、国際交流の活発な時代に生きています。人、そして動物が短時間に、遠隔地に移動できるようになりました。この中には、病原体に感染した人、動物の移動も含まれます。このような人の手による移動、拡散は現代になってからとくに大きくなった課題と言えるでしょう。加えて人獣共通感染症は、渡り鳥などによって、自然界で遠隔地に拡散し、防除の難点となっています。そして人による動物の移動の中には、娯楽などのために野生動物を売買することで、野生動物のもつ病原体を遠隔地に運び出してしまうケースもあります。また、ジャングルなどの未踏の地を開発することで、限られた地域でのみ蔓延していた、世界にとっては未知の感染症を、国際社会に持ち出すという危険も生んでいます。人間活動の活発化が、感染症の拡大に拍車をかけているとも言えるのです。

科学技術の発展には、それと背中合わせのリスクも生まれます。
感染症の広がりも、その一端を見ているように思われます。そして、これらとどう向き合っていくのかは、私たちが科学社会の中で何を選択し、いかに生きていくか、にも繋がることだと考えられます。

今回の記事では、感染症に関する詳しい情報を省略しています。
MERSやエボラ出血熱など、近年話題となった感染症、人獣共通感染症について、もっとお知りになりたい方は、ぜひこちらの記事もご一読下さい。

【MERS、エボラ、デング熱も 「人獣共通感染症」ってどんな病気?どう防ぐ?】 →http://thepage.jp/detail/20150719-00000007-wordleaf

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