星に名前をつけたなら

このエントリーをはてなブックマークに追加

未来館がある東京は、あいにくの曇り空。

でも想像力の翼を広げて雲の向こうへ飛び出してみれば、無数の星が私たちを迎えてくれます。今日は、その1つに「あなた」が名前をつけられるというお話です。



夜空を見上げてロマンチックな話を語りたい、あなた。自由研究がまだ終わってないのに、なんにもテーマが浮かばず焦っている、あなた。仕事に疲れて、たまには広い宇宙に思いをはせてみたい、あなた。そんな「あなた」に贈る物語。しばし、おつきあいくださいませ。



こんにちは。志水です。



JAXA(宇宙航空研究開発機構)が小惑星「1999 JU3」の名称を8月31日まで募集しています(詳細はこちら)。

応募はインターネット、または、はがきから。夏休みのお子さんにもぴったりですね。



小惑星「1999 JU3」は、地球と火星のあいだの軌道を周る直径900mほどの小さな天体です。太陽のように輝くわけでもなく、土星のように形に特徴があるわけでもありません。

20150819_shimizu_01.jpg

(提供:JAXA。こんな形ではないかと予想されています)



ではなぜ、こんな小さな天体が今注目されているのでしょうか。



このブログをご愛読いただいている「あなた」なら、昨年12月に行われたあの一大イベントを覚えていますよね。
そう、小惑星探査機「はやぶさ2」の打ち上げです。

20150819_shimizu_02.jpg

(スクリーンに映るのは、はやぶさ2を載せたH-IIAロケット。

矢印下が志水です。)



「はやぶさ2」は、52億キロにもわたる長い旅を順調につづけています。その目的地が小惑星「1999 JU3」というわけなのです。

「1999 JU3」というのは「仮符号」と呼ばれるもので名前ではありません。発見された年や順番をそのまま記したものです。例えば、初代の小惑星探査機「はやぶさ」が向かった「イトカワ」の仮符号は「1998 SF36」でした。



今回「イトカワ」のように呼びやすい名前が募集されています。自分が天体の名付け親になれるなんて、めったに無いチャンスですよね。でも名づけにもルールがあります。詳しくはJAXAのホームページをご覧いただくとして、以下のルールだけは覚えておいてください。



●英語のアルファベット16文字以下であること。1つの単語であることが望ましい。

●すでに存在する小惑星の名前と同じものをつけることはできない。
(いい名前を思いついたら、こちらのページで同じ名前がないか確認しましょう)

●コマーシャルや宣伝となる名称や、ペットの名称はつけられない。

●1999JU3のように、地球の軌道に近づく小惑星には「神話由来の名前」をつけることが慣例となっている(天地創造や、死後の世界に関するもの以外)。ただその限りではない。



うーん、最後がなかなかのくせ者。神話由来の名前と言われましても...。ですが、確認したところ、神話由来のものでなくとも名前が認められることもあるとのこと(その最たるものが「イトカワ」です)。

ならば、「その名前しかない!」と言われるくらいバッチリな名前をつけたいですよね。

そこで、まずは天文学者の布施哲治(ふせ・てつはる)先生に、名づけのコツを伺いました。

20150819_shimizu_03.JPG

(布施先生(左)と志水(右)。布施先生ご自身(Tetsufuse)とご家族2人のお名前が既に小惑星についているのだそう。昨年のはやぶさ2打ち上げの際にも未来館でお話をいただきました。)



志水:「1999 JU3」はどんな星なのですか?



布施先生:初代はやぶさが訪れた「イトカワ」は「S型小惑星」という分類に入ります。一方、はやぶさ2が向かう「1999 JU3」 は「C型小惑星」と呼ばれます。C型小惑星の「C」は炭素のこと。生物を形づくる、炭素を含んだ有機物や、水分子を含んだ含水鉱物をもつ天体とされていますので、地球上の生命や水の存在を考えると非常に興味深い天体です。

多くの C型小惑星は火星と木星の軌道に挟まれた領域 にありますが、「1999 JU3」 は地球の軌道に近く、探査機がたどり着けるという特徴を持っています。



志水:布施先生ならどんな名前が良いと思いますか?



布施先生:命名には、いろいろな条件があります。中でも大切なのはアルファベットで書けて、さらに海外の人も含めて誰もが発音しやすいものということでしょう。(探査機「はやぶさ」が向かった)「イトカワ」は、日本の"ロケットの父"とも呼ばれる糸川英夫氏からつけられました。

なお「はやぶさ」は、探査機が小惑星の表面物質を採る動きが鳥のハヤブサが獲物を捕まえる動作に似ていることから、海外の人にもとてもよく理解されましたね。ですから「1999 JU3」も、はやぶさ2ミッションの象徴を示すような名前がよいと思います。



志水:なるほど、「生命と水の起源を探るミッション」をイメージさせるような「海外の人にもなじみやすい」名前が良いというわけですね。



そうはいっても、ぴったりの言葉はなかなか出てこないかもしれません。そこで、もう一人強力な味方にご登場いただきましょう。水循環変動観測衛星「しずく」の名付け親で、我々科学コミュニケーターの先輩、寺村たからさんです。

20150819_shimizu_04.jpg

(JAXAからの認定証は宝物です)



志水:「しずく」を名づけるときに気をつけたことはありますか?



寺村さん:自分の子どもを名づけるつもりでみんなに愛される名前を、と考えました。~さんとか、~くんと呼んでしっくり来るような名前にしたいと思いました。「しずくちゃん」って可愛いですよね。今でも「しずく」の活躍を見聞きするのですが、そのたびに(名づけ)親として、誇らしく思います。ほんと、長生きしてほしいです。



志水:たしかに、自分の子どもと思うと愛着がわいてきますよね。子どもじゃなくても、ペットの名前、あるいは未開の地の名前、という風にシチュエーションを決めて名前を考えるのも1つの方法ですよね。



どうです?なんだか「あなた」も名前をつけられそうな気がしてきましたか?ペンと紙を手に取る前に、最後に布施先生からメッセージをお読みください。



布施先生:天体の名前は、人間の一生を越えて永遠に残るものです。まずは、はやぶさ2に関する情報をたくさん吸収して、1人で思いつかなければ家族や友だちと話し合いながら、どんどん書き出していくとよいでしょう。その中に、きっとキラリと光る名前が出てくるはずです。



そう、天体の名前を考えることは、空間と時間を越えて想像力の翼を羽ばたかせること。星に名前をつけたなら、広い宇宙へ向かうための、あなた専用の切符を手に入れられるのです。この夏は夜空を見上げて、遠くに思いをはせてみませんか?

さて、次回は、この名称募集について違った角度から考えてみたいと思います。特別ゲストには「あの方」が登場します。ほな、またねー!!

※コメントをする際は「ブログへのコメント投稿について」をご覧ください

※「名前」は、ハンドルネームでも構いません

この記事への1件のフィードバック

こんばんは!
小惑星の命名権がなぜJAXAにあるのですか?JAXAのミッションで「1999 JU3」が発見されたわけではないのですよね?

コメントを残す