ワクチン打つべきか、打たざるべきか...判断基準は?  アンバサダー・プログラム活動レポート⑥

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こんにちは。志水です。

3月に入り、未来館がある東京・お台場では暖かい南風を感じるようになりました。
春が近づきつつありますが、未だに全国的にインフルエンザの流行がつづいています。

3月11日に国立感染症研究所が発表したデータによると、2月29日~3月6日の1週間で、全国の医療機関を受診したインフルエンザ患者数の推計は約178万人にのぼるそうです(※1)。ひきつづきお気をつけください。

さて今日は、そんなインフルエンザに関する高校生の研究をご紹介しましょう。

昨年、14歳~18歳の生徒・学生を対象に行った「アンバサダー・プログラム」。バイオテクノロジーと社会の関わりを研究する8ヶ月のプログラムでは、5人の学生がそれぞれ興味をもったテーマに関して、インタビュー取材などの研究を行いました。その中の1人、栁田優樹さんは、インフルエンザワクチンと社会との関係について研究を行いました。今日は栁田さんのお話を皆さんにお届けしましょう。栁田さん、よろしく!

20160309_shimizu_01.jpg 未来館の来館者にアンケート調査をする栁田さん(右)


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みなさんこんにちは。
WBTアンバサダーの栁田優樹と申します。

昨年、「インフルエンザワクチンの伝え方、向き合い方」について研究し、発表させていただきました。インフルエンザワクチンに関する情報と僕たちがどのように向き合うべきか、今日は僕の研究をご紹介したいと思います。

みなさんは、インフルエンザワクチンってどのくらい「効く」と思いますか?

僕は数年前、ワクチンを受けた年にインフルエンザにかかりました。

「えっ、ワクチンを受けたらかからないんじゃないの?」

と思った方、厚生労働省のサイトを見てみましょう。「インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対にかからない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。ただし、この効果も100%ではないことに御留意ください。」とあります(※2)。

こういった情報はわざわざ調べないと出てきません。しかも、僕も調べてみて気がついたのですが、今出回っているインフルエンザワクチンに関する情報のほとんどは古いものや専門的なもの、極端に否定的なものが多いのです。

現在、日本のインフルエンザワクチンは「任意接種」ということになっています。打つのも打たないのも皆さんそれぞれの自由ですよ、という意味です。予防接種はわざわざ受けなくてもいいのか、受けた方がよいのか。それはその人が置かれている状況によってもかわるでしょう。

未来館へいらっしゃったお母様方にアンケートをとったところ、インフルエンザワクチンを打たない理由として、お金がかかる、病院へ行く時間が無いなどが挙げられました。また、学校の先生をされている方は、ワクチンを打つ理由として、職場での一つのマナーのようになっているから、とおっしゃっていました。

それぞれの方が、正しく判断するにはそれなりの判断材料が必要になるでしょう。そこで重要になるのが情報ですが、インフルエンザワクチンに関する情報には、立場ごとに難しい課題があることも分かりました。

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マスメディアの立場
私たちにとって重要な情報源となるのはテレビのニュース番組や新聞などの報道でしょう。記者の方たちは、行政や研究者、病院などに取材をして記事を書きます。

朝日新聞の高橋真理子さんの検証(※3)によれば、過去のインフルエンザワクチン報道は、必要か無用か、あるいは効くか効かないかで揺れ動いてきました。信憑性の低い研究結果が長い間にわたって正しいものとみなされた事例もありました。専門家による適切な指摘がなかったことが一因だと言います。研究者側の意見がより早く出されることが求められているのです。


20160309_shimizu_02.jpg 昨年7月、高橋さんに取材しました。

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研究者の立場
 一方、国立保健医療科学院で感染症の疫学調査を行う齋藤智也先生によれば、インフルエンザワクチンの効果については、評価の方法が難しく、また、1回の研究結果で効く・効かない、と結論づけられるものではないそうです。研究者によっても効果に関する認識が分かれています。、ですから、報道に対してすぐにはっきりした助言や指摘をすることは、研究者や学会にとっては難しいことなんです。


20160309_shimizu_03.jpg昨年8月、齋藤先生に取材しました。

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行政の立場
また、齋藤先生は厚生労働省にいらっしゃった時期もあり、行政の立場からもお話をいただきました。インフルエンザワクチンを任意接種としている行政にとっては、関心のない人までも対象にするような接種キャンペーンなどの促進策を積極的に推進することは難しいそうなのです。

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こうしたそれぞれの立場の間にあるジレンマや隔たりを越えるには大変な意志疎通が求められますが、残念ながら今のところ、難しいようです。

制度を変えるにも、情報を得るにも、私達が強く求めるところから始まります。自分の身体に入るインフルエンザワクチンというものについてどう向き合うべきか、考えてみて下さい。

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(あとがきに代えて)
20160309_shimizu_04.jpg(志水)インフルエンザワクチンの情報に関しては、言い切ることが難しいからこそ、もどかしさを感じることも多かったね。8ヶ月間やってみて感じたことはありますか?

     

20160309_shimizu_05.jpg(栁田)インフルエンザワクチンって、必ず受けなきゃいけないという法律で決められているわけでもありません。でも「とりあえず受ける」ではなくて、正しい知識を知った上で納得して判断できればいいなと思います。ワクチンはどういうもので、どう使ったらいいんだ、ということを気にするような。

(志水)「なんとなく」決めるのではなくて、ってこと?

(栁田)はい。自分の体に入れるもの、自分やまわりの人たちの健康にも関わることですし。

(志水)でも、毎日の生活を送るうえでは、考えなきゃいけないことがたくさんあるから、ワクチンに関してじっくり考えるほどの余裕もないというのも分かるなあ...。

(栁田)そうなんです。だから、ワクチンについて考えようということではなくて、科学に対して、もうちょっと「自分事」として捉えるというか、科学との向き合い方を考えるべきだと思います。そう思ってもらえる伝え方ってとても難しいですが。

(志水)「100%効くわけではない」という不確実な部分をどう考えるかは、なかなか難しいね。

(栁田)インフルエンザワクチンに限った話ではなく、科学技術は100%を求めてはいても、限界があると思います。科学に頼るというより、うまく付き合っていくような心構えが必要なのではないでしょうか。

※1 国立感染症研究所 インフルエンザ流行レベルマップ
http://www.nih.go.jp/niid/ja/flu-map.html

※2 厚生労働省 インフルエンザQ&A 
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html

※3 WEBRONZA「検証:インフルエンザワクチン報道」
http://webronza.asahi.com/science/themes/2014112200026.html

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