白いネッタイシマカ ~人間の生活環境にもっとも適応した媒介昆虫~

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みなさん、こんにちは。

ぶっちーです!


日増しに暖かくなるこの季節。虫たちも活発に活動をし始めましたね!ということで今日は、虫の話です!特に夏に向けて、の話題を提供しようと思います。

昨年度(2014年度)、日本でも話題になったデング熱。そして、現在、中南米を中心に猛威をふるっているジカ熱。未来館のブログでも、デング熱は武田が、ジカ熱は石田が取り上げていました。


しかし、未来館のブログにしろ、世間のニュースにしろ蚊が媒介する病気そのものに関するものがほとんどで、媒介者の蚊の情報ってほとんどないですよね??

蚊もいろんな種類がいますが、いったいどんな蚊がデング熱やジカ熱などの病気を媒介して、普段どんな風に暮らしているのか?我々はあまりにも蚊のことを知らなさすぎる!

そんなわけで蚊のことを調べてみました!

まずはじめに、蚊という生き物ですが、世界になんと約3500種もいるそう!
そのうち、110種ほどが日本に生息しているそうです。

ちなみに、吸血性の蚊は2500種ほどで、そのうちヒトの病気を媒介するのは300種ほどだけです。


昨年度、日本でデング熱を媒介したのは、ヒトスジシマカ Aedes albopictusです。しかしながら、調べてゆくとネッタイシマカAedes aegyptiという、かつて日本の沖縄などにもいた蚊で非常に興味深い話がありましたので、紹介したいと思います。

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ヒトスジシマカ(長崎大学 熱帯医学研究所 病害動物学分野ホームページより)

ネッタイシマカは、世界中の熱帯・亜熱帯地域に生息している蚊で、日本でも1944~1952年に熊本県で一時的に発生していたことが確認されています。また、20世紀初頭まで沖縄にも生息していましたが、現在は絶滅したと考えられています。

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ネッタイシマカ(長崎大学 熱帯医学研究所 病害動物学分野ホームページより)

この蚊は、デング熱はじめ黄熱やチクングニア熱、ジカ熱を媒介することで恐れられています。しかしながら、この蚊は幼虫の成育に最低10℃ほど必要だそうで、日本の本州の冬は越せない可能性が高く、本州への再定着の可能性は低いと考えられてきました。

ところが!!

実はネッタイシマカには複数のタイプがあり、そのうちのひとつに強い脅威を感じましたので紹介させていただきます。

【第1のタイプ 森林型ネッタイシマカ Aedes aegypti formosus

アフリカのサハラ砂漠以南に生息し、体色も全体に黒い亜種。林縁部から屋外に生息しており、樹のうろなどにたまった水で発生して、人も動物も吸血するタイプ

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(C)二見恭子

【第2のタイプ 都市型ネッタイシマカ Aedes aegypti aegypti

世界中の熱帯域に生息。森林型と異なり屋内やその周辺の人工容器(植木鉢の受け皿や放置タイヤにたまった水など)で発生し、人を好んで吸血する亜種。形態のバリエーションは豊富で、黒っぽい個体から白っぽい個体までいる。

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(C)二見恭子

第2の都市型がおもに感染症媒介の問題となるため、注目されていました。しかし実は、都市型よりも人間の生活環境に特化したと考えられる第3のネッタイシマカが存在するのです!

【第3のタイプ 白いネッタイシマカAedes aegypti var. queenslandensis

東南アジアに生息している都市型ネッタイシマカのうち、特に白っぽい変種のこと。胸部は茶色く、腹部は白っぽい。この変種は、屋内を好むとされており、人間の生活環境にもっとも適したタイプと考えられているアジアや南北アメリカ、オーストラリアには、この白いネッタイシマカが多く生息する。アフリカでも局所的ではあるが分布が確認されている。

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(C)二見恭子

例えば、デング熱等の病原体を保有したネッタイシマカが飛行機に紛れ込み、日本の本州に降り立ったとしても、冬期の低温で絶滅する可能性が高いです。しかしながら、もし、白いネッタイシマカが侵入したとしたら?

実は!!

すでに、2012年にネッタイシマカの成田国際空港内での繁殖が確認されています!

詳細な侵入経路は不明ですが、発見されたゲートから東南アジアの便であった可能性が高いです。成虫だけでなく、幼虫なども見つかっていることから空港内で吸血を行い、繁殖に至ったと考えられています。残念ながら、3つのどのタイプだったかは調べられていませんしかし、空港内で繁殖を行っていることから白いネッタイシマカだった可能性は捨てきれません。

また幸いにも、殺虫剤散布を中心とした対策が適切に行われてネッタイシマカの定着には至りませんでした。さらに、感染症を引き起こすフラビウイルスとチクングニヤウイルスはこのときの蚊からは検出されませんでした。

また、媒介昆虫はネッタイシマカではなく、ヒトスジシマカでしたが、2014年に東京でデング熱が発生しました。当時はデング熱対策として、新宿公園などの蚊を駆除したことは記憶に新しいかと思います。しかし、あのときヒトスジシマカ以外の無害な昆虫もたくさん殺してしまったはずです。あのときも、蚊の分類や生態の研究が進んでいれば、目的のヒトスジシマカだけを駆除できたかもしれません。

病気そのものの研究も重要ですが、それを運ぶ、媒介する蚊の研究も同じくらい大切だと思います。病気そのものだけでなく、病気を運ぶ虫のことも、ちょっと気にかけてみませんか?

【謝辞】

本ブログ執筆にあたり、長崎大学 熱帯医学研究所 病害動物学分野 助教の比嘉由紀子先生、特任助教の二見恭子先生に監修いただきました。また画像提供いただきました。厚く御礼申し上げます。

比嘉由紀子先生(写真右手前)

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二見恭子先生

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この記事への2件のフィードバック

蚊が媒介する病気は日本脳炎!と小さい子供の頃は教えられていましたが、
今やワールドワイドなこの世の中では地球の裏側の恐ろしい感染症の話が現実の脅威となってしまいますね。
いつだったか、TVで成田空港周辺などで虫を採集して病原菌の媒介を阻止する検疫職員の方々の業務を見たことがあります。
生物の多様性は重要ではありますが、我々の日々の生活を守るため感染症阻止の最前線で活躍されている方々にとても感謝しなくてはいけませんね。

Yutakaさま
コメントをありがとうございます。私も幼少期に、親から「脳炎になるから、蚊に気を付けろ」と言われた覚えがあります。

今回の取材・執筆では、改めて感染症の脅威を知るとともに、媒介昆虫研究の重要性を再認識しました。脳炎ならば、「コガタアカイエカに気を付けろ」ということなのでしょうね(^^;一般の方々に、ネッタイシマカなのかヒトスジシマカなのかアカイエカなのか、はたまた無害なユスリカなのか見分けろという話ではありませんが、前線で調査されている蚊の研究者の成果によって、人々の意識や行動が変わるよう願っています。

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