科学的な整理と、価値観を踏まえた合意形成 =リスクとの向き合い方の詳細補足④=

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最後は社会として一つの判断をするための、対話について考えます。


起こり得る多種多様なダメージを想像し、そのダメージの大きさと発生可能性をリスクマップで見える化し、許容できるか否かを考える──。前3回までのプロセスは、論理としてはそれなりに明快なものだったと思います。



ただ、これを社会で実践しようとすると、ひとつ、大きな問題が出てきます。集団の規模が市町村、都道府県、国、地球規模と大きくなるにつれて、そこに属する人たちの価値観が、多種多様になっていくことです。



「守りたいものは何か」や、最終的な「リスクを許容できるか否か」の判断が、個々人の考え方や立場によって異なるのは、当然のことでしょう。

守りたいものが異なれば、リスクマップも変わります。「その瞬間の幸福感」なのか「長期的な健康」なのかによって、飲酒や喫煙の位置づけが変わってくることは、想像しやすいでしょう。



それでも、社会としては、「リスクを許容するか否か」の判断をしなくてはなりません。



ではそのために、何をすべきなのでしょうか?

そして、この過程の中で、科学的にできることは何でしょうか?

※本記事は、3月6日に行ったサイエンティスト・トーク「未知の災害ダメージを『想定外』といわないために」報告記事の項目別の詳細(4本中4本目)です。リスク評価の研究がご専門の岸本充生教授(東京大学公共政策大学院)に伺った話の全体像については、「『想定外』と言わないための、リスクとの向き合い方」をご参照ください。 http://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/20160325st.html



イベントで岸本教授とともにお伝えしたのは、社会における「対話」と、その対話の材料としての「リスクに対する科学的な理解と評価」の重要性です。



【科学的にできること、その前後のこと】

科学的にできることは、起こり得るダメージを想像すること。そのダメージの大きさと発生可能性を、(どの程度の不確かさや誤差範囲があるのかも含めて)評価すること。そして、根拠とともに提示すること。端的にまとめて言えば、「守りたいもの」を決めた後から、リスクマップを作成するところまでです。



前後にある「守りたいものは何か」「リスクを許容できるか否か」については、科学的に「正解」を決めることができません。判断に、価値観が反映されるからです。

だからこそ、異なる立場や考え方を尊重し合いながら、対話を重ねたり、誰かに判断を任せたり、多数決を行ったりして、バランスを取りながら、合意に向かっていく必要があるのでしょう。

その話をまとめるために、政治があります。それを実行するために、行政があります。そして、私たち国民はそれぞれの立場から、「こんなダメージも想定すべきではないのか」「◯◯を守ることをもっと重視してほしい」などと声を上げればよいはずです。



そんな対話を深めていく際に、科学的につくられた「リスクマップ」に基づき、価値観の相違点や論点を整理することができたなら。対話がかみ合い、本質に迫り、正しい判断につながっていくのだと思います。



20160320_tani22.pngのサムネイル画像

科学的な整理が、合意へ向けた対話の土台になるはずです



【100億人でサバイバル】

未来館は2016年4月20日に新しい常設展示「100億人でサバイバル」を公開します。岸本教授にも監修していただき、地球と社会のシステムを表す機械仕掛けの大型模型などで、私たちが経験し得るハザードやダメージが発生する仕組みを想像、理解できるように設計しました。



その想像や理解が、リスクについての対話に役立つと、信じているから。

そしてそれが、科学という立場が果たすべき役割の一つだと考えているからです。



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「100億人でサバイバル」完成イメージ図




世界人口が100億人を超えると言われる21世紀、

 地球に暮らす私たちは、どのようにリスクと向き合っていけば良いのか──。



5年前に大きな代償を払って得た教訓を、

 世界に、未来に、つなげていきたいと思っています。



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科学的な整理と、価値観を踏まえた合意形成 =詳細補足④=
→この記事です

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