ソコに隕石が落ちたから ~チチュルブクレーター海洋掘削 その②~

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こんにちは、科学コミュニケーターの坪井です。

先日お伝えしたチチュルブクレーターの海洋掘削プロジェクトは、5月28日に無事にそのミッションを終えました!
(前回のブログを書いたのは、27日。おっと、ギリギリセーフ...?)

 

20160615_tsuboi_01.JPGミッションを終えたプロジェクトメンバー(なんと清々しい笑顔!)
ESO outreachより

 

海底から掘り進めた距離は、1334 .69m。東京スカイツリーを縦に2本重ねた以上の距離です。計画していた1500 mまで掘削しなくても、今後の研究に十分な範囲の岩石試料を得ることができました。

ここからどんな新しい発見が出てくるのでしょうか?
くぅ~、待ちきれない!!

海洋での掘削は今回が初めてとなるチチュルブクレーターですが、実は、いろんな意味でとてつもなく絶妙な位置にできたものです。

今回は、冷めやらぬ熱を原動力に、前回書ききれなかったチチュルブクレーターそのものの坪井的興奮ポイントをお伝えします。
どうぞお付き合いください。

 

クレーターがちゃんと発見されたのはソコに落ちたから

前回のブログで、『チチュルブクレーターは、クレーター構造の保存状態が良いので形成過程を調べるのにぴったり!』ということをお伝えしました。

陸上にできたクレーターは、雨風に浸食されやすく、月日が経つと元の構造がよくわからなくなってしまいます。一方で海底にできたクレーターには、上から地層が堆積します。その層が保護カバーの役割をして守ってくれるのです。

でも、海のどこでも良かったわけではありません!

そのことを理解するために、「地殻」について見てみましょう。地殻とは地球の表層部分のことです。地球を卵でたとえると、黄身が核、白身がマントル、殻が地殻です。地球上の大陸は大陸地殻、海は海洋地殻でできています。つまり、海に隕石が落ちると、海洋地殻にクレーターができることになります。

海洋地殻は、海嶺で生産され、海溝で地球の内部に沈み込みます。ということは、海洋地殻にクレーターができたとしても、クレーターは年々海溝に向かって移動するため、いずれは地球の内部に沈み込んで消えてしまいます。沈み込むまでの時間は、海溝から一番遠い場所ならば2億年ほどかかりますが、海溝のすぐ近くならば数百万年ほどで無くなってしまう可能性があります。
 
もう一つ、「見つけやすさ」も大切です。
いくらチチュルブクレーターが大きいといっても、地球上の広ーい海と比べたら点のようなもの。もし、陸から遠く離れた海のど真ん中にあったら、未だに発見されてなかったかもしれません。

浸食されずに、地球上に残って、私たちが見つけられる場所...
そんな場所があるのかというと...?


あります。


それは...、大陸棚です!!

20160615_tsuboi_02.png

大陸棚の場所

 

大陸棚とは、大陸の周縁にある浅くて傾斜が緩やかな海底です。平均水深は約130 m。名前に「大陸」とついているように、大陸地殻の一部であるため、海溝に沈み込むことはありません。

 
雨風に浸食される陸上ではなく、いずれ海溝に沈み込んでしまう海洋地殻ではなく、陸に近い大陸棚に落ちたからこそ、 チチュルブクレーターは現在まで綺麗な状態で残ったのです。21世紀を生きる私たちが、6600万年前の大事変の実物証拠に手を伸ばすことができるのは、こういう絶妙な場所に落ちたからなんですね。

 

全球規模の絶滅になったのもソコに落ちたから

さらに、全球規模の絶滅が起きたのも、ユカタン半島沖に落ちたからこそ、と言われています。

巨大隕石衝突説では当初、隕石衝突で巻き上がった塵により太陽光が遮断され、大量絶滅が起きたとされていました。しかし、推定された塵の量が太陽光を長期間遮断するには少なすぎるために、多くの反論がありました。実際、7万4000年前のスマトラ島のトバ・カルデラが形成された時の火山活動で同規模の塵が巻き上がりましたが、大量絶滅は発生しませんでした。

これが、ユカタン半島沖でクレーターが見つかったために、説明できるようになったのです。

ユカタン半島沖の浅い海には、炭酸塩岩と硫酸塩岩からなる海底が広がっています。隕石が衝突すると、衝撃と熱によりそれらの岩石が溶け、硫黄や二酸化炭素が大気中に放出されます。

するとどうなるのか、過去の火山噴火の事例から読み解くことができます。1991年、フィリピン・ピナトゥボ火山で20世紀最大規模の噴火がありました。この噴火により、成層圏に硫黄が巻き上げられた結果、太陽から地球に降り注ぐ日射量が数%減少し、地球全体の気温が0.4℃低下しました。

つまり、巨大隕石がユカタン半島沖に衝突した時、大量の塵だけでなく硫黄も放出されたことで、太陽光がさらに遮断されたと考えることができます。ユカタン半島の海底にある岩石の種類が、激しい環境変動をもたらした大きな要因の一つだったのです。

 

20160615_tsuboi_03.png
炭酸塩岩と硫酸塩岩に隕石が落ちると二酸化炭素と硫黄が放出される

 

隕石の落ちる場所が別の場所だったら、地球の歴史は変わっていたでしょう。今の地球環境は、こういった偶然の積み重ねなのです。

そして、先月ユカタン半島沖で掘削された岩石試料を、これから世界中の科学者が調べることで、また新しい発見があることでしょう...!

くぅ~、待ちきれない!!(再び)

まだまだまだまだ語りたい興奮ポイントは山ほどあります。
が、何事もチラリズムが一番。
このチラリズムに釣られたそこのあなた、ぜひ未来館のフロアで坪井を捕まえてください。

熱~~く語りますよ~

 

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