祝!日本人10年連続イグノーベル賞受賞!~股からのぞくと、世界が変わる~

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今年もやりました!

今日9月23日の午前7時(日本時間)から発表された今年のイグノーベル賞。日本人が10年連続で受賞しました!

おめでとうございます!!

イグノーベル賞は「笑わせて、考えさせる」研究に贈られる賞です。日本人が受賞した研究はどんな研究なのでしょうか?

その受賞研究がこちら!

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さあ、画面の前のみなさんもご一緒に!(グイッと)

「知覚心理学賞 ― 股の間から景色を見ると違って見えるという研究」
(Perception Prize -for investigating whether things look different when you bend over and view them between your legs)」

立命館大学の東山篤規教授と、大阪大学の足立浩平教授が受賞されました。

そう、今年の受賞研究は、自分で体験することができる研究です!
さっそくやってみましょう。

建物の外や廊下に立って、5mくらい先のモノを眺めます。大きさを覚えておいてくださいね。
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次に、股のぞきで同じモノを見てみます。
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さあ、モノの大きさはどのくらいに感じましたか?解説は、下に↓(まだ解説を見たくない方は、実験してからにしてくださいね)

さあ、結果発表です。
同じモノでも小さく見えませんでしたか?(もちろん個人差はあります)

東山氏と足立氏は、「股のぞきをすると、モノが小さく、距離も近くに見える」ということを証明しました。そして、その現象がなぜ起こるのか、厳密な実験によって明らかにしたのです。

両氏は、3つの実験を行いました。

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実験1

実験に参加した学生は、遠くに置いた赤い長方形の板までの距離と大きさがどのくらいに見えるか尋ねられました。学生の半分は、直立して眺め、残り半分は股の間から眺めました。

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(シュールな体勢の科学コミュニケーター高橋石田。ありがとうよ...)

皆さんが先ほど体験した実験と同じように、股のぞきをすると、板が小さく見えて、近くに見えることが確認されました。

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実験2

股のぞきをすると、なぜ小さく、近くに見えるのでしょう?
一つの可能性として、「上下逆さに見ているから」ということが考えられます。

そこで、両氏は「逆さゴーグル」を実験に使いました。ゴーグルにプリズムを仕込んで、上下さかさに見えるようにした特製のゴーグルです。

学生の半分は、その逆さゴーグルをかけて赤い板を眺め、実験1と同様、板までの距離と大きさを尋ねられました。残りの半分は、同じゴーグルでもレンズが入っていないもの(つまり伊達メガネ)をかけました(わざわざ伊達メガネをかけるのは、「ゴーグルをかける」という行為自体が与える影響を除くためです。厳密な実験ですね)。

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しかし、実験1で見られた大きな差は見られませんでした。
つまり、「景色が上下逆さに見える」というだけでは、この現象の説明はつかないのです。

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実験3

では、視覚だけではこの現象を説明できないとすると、どのような要因が考えられるでしょう?

両氏は、股のぞきという「体の動き」が影響を与えるのではないかと推察しました。

学生の半分は、先ほどの「逆さゴーグル」をかけた状態で股のぞきをし、赤い板を眺めました。
「逆さ」×「逆さ」で上下正しく見えるというわけです。
残りの半分の学生は、ほふく前進のような格好で赤い板を眺めました(股のぞきをする人と目線の高さをそろえるために、低く構えるわけです)。

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さあ、結果はどうなったでしょう?
なんと!実験1と同じように、板の大きさが小さく、近く見えました。

両氏は「視覚的な見た目よりも、体の姿勢が与える影響の方が大きい」と結論づけました。
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まさか「見る」ときに、どんな姿勢で見るかということが大事だなんて、意外ですよね。
受賞対象となった論文の中で両氏は、「人間は、(赤ちゃんから成長し)歩き始めると、直立した状態でモノを見るので、直立した状態の体の位置が、周りの空間を見るときの基準となっているのではないか」と書いています。だからこそ、慣れない姿勢(=股のぞき)で見ると、モノの大きさや距離といった空間感覚がおかしくなってしまうのかもしれませんね。

この研究から色々な妄想が膨らみますね。「4本足のネコは私たち人間と違って見えているのかなあ?」とか、「ASIMOのようなロボットに、人間と同じ『視覚』を与えるには、からだの感覚から教え込まないといけないのかなあ?」とか。

股のぞきをして、みんなで笑顔になって、そして「視覚」について考える。東山氏と足立氏の研究は、「笑わせて、考えさせる」をテーマにするイグノーベル賞にぴったりの研究だと思います。

今年受賞した研究の一覧はこちら↓。

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生産賞 The late Ahmed Shafik(エジプト)「ポリエステル、木綿、ウールのズボンをはいた場合のネズミの繁殖生活について」

経済学賞 Mark Avis(NZ), Sarah Forbes(英国), Shelagh Ferguson(NZ)「営業およびマーケティングの視点から石のパーソナリティを評価する」

物理学賞 Gábor Horváth, Miklós Blahó, György Kriska, Ramón Hegedüs, Balázs Gerics, Róbert Farkas, Susanne Åkesson, Péter Malik, and Hansruedi Wildermuth(ハンガリー、スペイン、スウェーデン、スイス)「なぜアブは白馬を避け、ハエは黒い墓石を好むのか」

化学賞 Volkswagen(ドイツの自動車メーカー)「車の排ガスに含まれる汚染物質の問題を検査時に自動的に電気的に少なくする解決法について」

医学賞  Christoph Helmchen, Carina Palzer, Thomas Münte, Silke Anders, and Andreas Sprenger(ドイツ)「右腕がかゆいときに、鏡に写った左腕を見ながらかくと、脳が右腕がかかれたとだまされてかゆみが治まることの発見」

心理学賞 Evelyne Debey, Maarten De Schryver, Gordon D. Logan, Kristina Suchattzki, Bruno Verschueren(ベルギー、オランダ、ドイツ、カナダ、アメリカ)「1000人の嘘つきに嘘をつく頻度をたずね、その答えが信頼できるかを判断した研究について」

平和賞 Gordon Pennycaok, James Allan Cheyne, Nathaniel Barr, Perel J. Koehler, Janathan A. Fuglesang「深遠な嘘の議論をどのように扱うかについて」

生物学賞 Charles Foster, Thomas Thwaites(イギリス)「野生生物の群れと一緒に過ごした経験、および人工の延長脚をつくってヤギの群れとともに活動した経験」

文学賞 FREDRIK SJÖBERG(スウェーデン)「死んだハエ、まだ死んでいないハエを集める喜びに関する3冊の自伝」

知覚心理学賞 東山篤規(立命館大学)、足立浩平(大阪大学)「股の間から景色を見ると違って見えるという研究」

東山氏と足立氏の論文はこちら。
"Perceived size and perceived distance of targets viewed from between the legs: Evidence for proprioceptive theory"
http://dx.doi.org/10.1016/j.visres.2006.04.002

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おまけ:科学コミュニケーター石田(左)と高橋の本音(?)

21060923shimizu34.png(以上、撮影:科学コミュニケーター谷明洋

9月27日:筆者の志水による追記
記事内の写真では、赤い「長方形」の板を実験に用いていますが、実際の実験では「コーン型」の二等辺三角形の板を用いたようです(東山氏の著書『体と手がつくる知覚世界』勁草書房より)。でも、論文では「red rectangle(赤い長方形)」になっていたもんで...。

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