11月14日の大きな満月の日に感じよう! 月と地球と私のつながり

みなさん、はじめまして! 今年4月より未来館の科学コミュニケーターとして働いています、渡邉吉康(わたなべよしやす)です。 よろしくお願いします! 私の専門は惑星科学で、大学院時代には太陽系の外にある「生き物がすむのに適した惑星(ハビタブル・プラネット)」を研究していました。とくに注目していたのは、惑星の自転軸の傾きが、気候にどう影響するかについてです。惑星に興味を持ち始めたのは、小学2年生の時。叔父からもらった百科事典に載っていた数々の惑星のすがたに一目ぼれしたのがきっかけです。

そんな私が11月14日(月)に楽しみにしている天体ショーがあります。それは、月が最も大きく見える「スーパームーン」です(※スーパームーンという言葉は天文学の正式な用語ではありません)。

この日は、月が地球に最も近づく日。つまり月と地球が最も強く「つながって」いる日ともいえます。今回のスーパームーンは、最も小さく見える月よりも14%大きく、30%明るく見ることができます!

見かけの大きさが変わるのは、月の軌道が完全な円ではなく、すこしつぶれた楕円であることが影響しています。太陽・地球・月の順に一直線上に並ぶタイミング、つまり満月になるタイミングと、月が最も地球に近づくタイミングが重なると、月が最も大きく見えるわけです。

実はこのような現象は、だいたい1年に1回のペースで起きています。しかし今年の11月14日の月は、その中でも特に大きく明るく見ることができます。次に今回と同じような大きさの月を見られるのは、2034年。今回の機会を逃す手はありません!

スーパームーンの楽しみ方は人それぞれだと思います。望遠鏡を担いで写真を撮る人もいれば、ただ夜空を眺めて空想にふける人、特別なイベントを行う人......いろいろあると思います。月をきれいに撮る方法を紹介しているホームページはたくさんあるので、私が他に伝えられることはあるかな......。考えを巡らせてみたら......ありました! それは、「つながる」という感覚です。 この「つながる」という感覚は、未来館が皆さんに伝えたいテーマの一つでもあります。

未来館では毎年、中秋の名月の時期に、お月見を楽しむイベントが行われます。その時期になるとおよそ1週間、未来館のシンボル展示、Geo-Cosmosが時々、月の映像に切り替わります。今年のテーマは「月と地球と私たちのつながり」で、月の潮汐で引き起こされる潮の満ち干きが、鳥(オオミズナギドリ)や鈴虫(マングローブスズ)に与える影響のお話をしました。 でも潮の満ち干き以外にも、月と地球と私たちには「つながり」があります!

私たちは、お月さまのサイズを当たり前のように思っていますが、惑星(地球)に比べた衛星(月)のサイズは、通常はもっともっとずっと小さくなります。実は、こんなに大きなお月さまがあるからこそ、私たちの住む地球は穏やかな環境を保てるのです。

ん??どういうこと?と思われるかもしれません。確かに月と地球は万有引力という力でつながっていますが、地球の気候とどうつながっているのか。

もし月がなかったら、地球の地軸はとても大きく揺れていたかもしれません!

今の地球の地軸(自転軸)は、地球が太陽の周りをまわる面(公転軌道面)の垂直方向から見て23.4°傾いています。この傾きがあるせいで、南極や北極には冬には日が昇らない極夜が生じます。私たち日本人は、日の長さの変化に季節を感じますが、それがあるのも地軸の傾きのおかげです。もし、傾きがまったくなければ、地球上のどこにどの季節にいっても、昼夜は12時間ごとになります。

この地軸の傾きは、少なくとも過去数十万年の間、22.1°から24.5°の間を、4万1000年の周期で揺れ動いていました。 この地軸のわずかな揺れ幅でも、地球を寒くしたり、温かくしたりしてきたことが、地質学や気候学の研究で分かってきています。

こんな感じで、地軸の傾きの大きさは地球の気候を調節する役割を果たしています。ですが、もし月がなかったら、地軸が直立に近い状態から数十度の傾いた状態の間で激しく揺れ、地球の気候は大変動を繰り返していたかも知れません。これは、木星や土星といった、大きな惑星からの引力が影響してくるからです。木星などの引力は今も地球に作用していますが、地球のまわりを常に一定の方向でまわる大きなお月さまがあるおかげで、木星などからの影響を受けないように守ってくれているのです。

実際におとなりの火星では、自転軸が大きく揺れ動いたことがわかっています。火星の現在の自転軸は25.2°傾いていますが、ここ数十万年の間はおよそ12万年の周期で15°から60°の間で大きく揺れ動いていました。火星には、フォボス、ダイモスという2つのお月さま(衛星)がありますが、2つとも火星に比べてとても小さいので、火星の自転軸の揺れを止めるには不十分なのです。

もし、地軸が横倒しになったら、いったいどんな世界になるでしょうか?まず、今の赤道は寒くなります! そして、北半球、南半球はそれぞれ半年ずつ、日がずっと照っている昼(夏)、日がずっと当たらない夜(冬)という両極端な状態が続きます。つまり、ずっと暑い夏、ずっと寒い冬が続くわけです! 私たちには想像しがたい過酷な世界が待っています。

ガクガクブルブルの世界!大きなお月さまがあることに感謝したいです!

でもどうして、こんなに大きなお月さまが生まれたのでしょうか。現在有力な説を簡単にご紹介します。地球ができあがる頃の話になりますが、今の地球よりも小さい微惑星が集まってできました。最後に火星サイズの大きな天体が衝突した時に、地球の一部がはぎ取られて、月ができたという説(ジャイアントインパクト説)が有力です。そして、その最後の衝突の角度がたまたま絶妙だったため、地軸が直立に近い状態になりました。

そう考えると、地球はとても幸運な星です。

「私たちがこの美しくて穏やかな大地の上で、優しい風を感じながら、こんなにきれいなお月さまを見ることができるのは、大きな月があるおかげだよ」とお月さまに感謝しながら今度のスーパームーンをご覧いただくと、ふだん満月を見るときとは違った楽しみ方ができるかもしれません。

11月14日追記:本日は残念ながら、全国的に見ても雨・曇りの地域が多く、満月をご覧いただくことは厳しいと予想されます。満月ではありませんが、数日間は比較的大きな月をご堪能いただけるので、ぜひとも晴れの日に空を見上げてみてください。

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