最初の津波が「引き波」? 「沖合」で観測?

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一昨日(11月22日)早朝の福島県沖の地震。

びっくりした方も多いのではないでしょうか?

 

20161123_tsuboi_01.png11月22日5:59 福島県沖の地震 震度分布図(気象庁報道発表資料より)

 


気象庁の報道発表資料(第79報)より 
・ 発生時刻 :11月22日05時59分
・ 地震の規模(マグニチュード) :7.4
・ 場所および深さ :福島県沖、深さ25㎞
・ 発生機構 :北西-南東方向に引っ張られた正断層型


 

発生時、都内の家でまだ寝ていた私。
長く続く揺れにだんだんと不安になり、起きて、リビングのテレビをつけると、福島県に津波警報が発表されていました。

 

その後、NHKの報道で最初に伝えられた津波の観測情報は

「6時6分に小名浜の沖合で引き波を観測」

 

最初の津波(第1波)が「引き波」? 「沖合」で観測?

これまでの津波情報であまり聞きたことのないキーワードが二つ。
それぞれ、どういうことなのかまとめます。

 

  

最初の津波が「引き波」?

今回、津波を観測した検潮所のほとんどで、第1波が引き波でした。これは地震のメカニズムが正断層型だったためです。

 

20161123_tsuboi_02.png

断層の種類(気象庁ホームページより)

 

正断層は地面が引っ張られるため方向に動くため、断層を挟んだ片側が沈みます。正断層ができたのが海底だと、上に乗った海水も一緒に沈みます(=凹み)ます。今回は、断層の南東側が沈んだため、最初が引き波の津波になったと考えられます。

20161123_tsuboi_03.png正断層による津波発生のメカニズム

(編集注:25日13時半頃、東北大と広島大の研究チームの調査報告を受け、図中の断層の向きと関連文章を修正しました。)

 

引き波の後には、その反動により押し波→引き波→押し波...と津波は続きます。つまり、引き波の観測情報は、次に「押し波の津波」が差し迫っているサインです。

今回の津波の波形を見ると、押し波・引き波が繰り返している様子がよくわかります。

 

20161123_tsuboi_04.png11月22日10:30時点の津波波形(気象庁報道発表資料より)
赤矢印 : 引き波

 

 

 

「沖合で観測」って?

沖合の津波観測情報は、気象庁の観測施設に加えて、国土交通省・海洋研究開発機構・東京大学地震研究所・防災科学技術研究所による計212か所の観測地点のデータを元にしています。

このうちの東日本の太平洋沖の海底にある125地点は、防災科研の日本海溝海底地震津波観測網(S-net)です。

S-netは、2011年の東北地方太平洋沖地震を受けて整備されました。それまでは、陸上の地震計から津波の高さを推定していた上に、海域の津波計の数が限られていたため、気象庁が提供できる津波情報の早さや精度に限界があったのです。S-netの整備により、東日本の太平洋沖の観測地点は一気に125か所増え、以前より早く・精度よく津波情報を提供できるようになりました。

 

20161123_tsuboi_05.jpgS-net観測地点(防災科学技術研究所ホームページより)

 

S-netは、2011年から整備が開始され、整備が完了したところから順次運用が始まっています。

今年の7月28日より、南海トラフ周辺の地震・津波観測監視システム(DONET)の31地点の観測データと合わせて、S-netのデータが津波の観測値の発表に活用されるようになり、今回が活用された初めての事例です。

冒頭の小名浜の第一波を捉えたのは、S-netの観測地点ではありませんでしたが、面的に広がるS-netの観測網によって、津波が震源域から南北に伝播する様子が明確に捉えられました

今後、2017年までにすべての観測地点(150か所)の運用が予定されています。(文末の編集注を参照)

 

 観測機器は、海底に設置されています。上にのる水の重さ(水圧)から、津波を検知します。沖合での津波の検知は、いずれその波が沿岸に押し寄せるサインになります。

 

20161123_tsuboi_06.jpgS-netの観測機器(防災科学技術研究所ホームページより)

 

 ただし、観測値の見方には注意が必要です。津波は、沖合から沿岸に近づくほど高くなりますので、沖合での観測された高さ以上の津波が来る可能性があります。

 また、今回、気象庁は、宮城県で予想を上回る高さの津波が観測されたタイミングで、津波注意報を津波警報に引き上げました。湾内の地形の影響などにより、沿岸での高さが予測を上回ることもあります。

 

***

 

こういった情報を発生後に解説したところで、後出しであることを苦しく感じます。

しかし、日本に住んでいる以上、地震と津波はずっと向き合うべき課題なのは間違いないでしょう。

 

経験を一つずつ、次の自然災害に向き合うチカラに。

少しずつでも、情報を正しく受け取るための知識とチカラを、一緒に積み上げていきたいです。

 

(編集注:1月16日10時半ごろ、「沖合の津波観測情報は、...の運用が予定されています。」内の文章を一部、修正・追記しました。S-net以外の観測地点の情報が不十分だったためです。)

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