ブラックホール解明の第一歩!?その名も「野良ブラックホール」

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皆さん、こんにちは。科学コミュニケーターの志野 渚(しの なぎさ)です。
今回も前回に引き続き星愛(望遠鏡愛)全開でお伝えしたいと思います!前回のブログ(http://blog.miraikan.jst.go.jp/other/201802084-123jcmt.html)でお話したハワイにある電波望遠鏡JCMT、この望遠鏡を使ってわかった宇宙の謎はたくさんあります。その中の一つを今回のブログで紹介しましょう。その名も「野良ブラックホール」!(ね、面白そうでしょう?)さあ、どんな研究なのでしょうか。


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(JCMTの後ろ側 提供:JCMT/EAO)

 皆さん、ブラックホールをご存知ですか? 聞いたことがある、という人もいると思います。光すら逃げ出すことができないと言われているアレです。光を放たないので観測はとても難しくよく分かっていないことがたくさんあります。皆さんはブラックホールってどれくらい存在すると思いますか?

 私たちの太陽系がある天の川銀河の中心にもブラックホールはあります。銀河の形を維持できるほどのブラックホールですから、とてつもなく大きいものです。私は昔、天の川銀河内にあるブラックホールは中心にある1個のみだと思っていました。ところが、天文学者の計算では、天の川銀河だけでブラックホールが数億個も存在していると考えられているのです(多すぎ!)。

 でもさきほどもお話した通り、ブラックホールは存在を確認することがとても難しいのです(だって、光がにげられないのだから、直接に"見る"ことはできないのです)。ではやっぱり、ブラックホールを観測するのは不可能なのでしょうか?実はそうではないのです。確かに直接ブラックホールを観測することは現在ではできていません。しかし、いくつかのブラックホールは観測されています。一体どうやったかというと、ブラックホールの周りにあるものから、その存在を突き止めるのです。ブラックホール周辺のガスは、ブラックホールの中に落ちていくときに強いX線 を出しています。そのX線のおかげで、そこにブラックホールが存在するとわかったわけです。でも、これらのブラックホールはまれだと考えられています(なんで?って思いましたか?思いますよね)。

 そもそもブラックホールはどうやってできるのか皆さんご存知ですか?おもに超新星爆発という天体現象のあとにできる天体だと考えられています。爆発するわけですから、周りのガスや塵は吹き飛ばされてしまってブラックホールの周りには何にもないと考えられています(だから、ブラックホールの周りに落ち込むガスがあるブラックホールはまれだと考えられているわけです)。そして、周りには何もないブラックホールは孤立していることから「野良ブラックホール」と命名されました。命名はされましたが、周りに何もなく、ブラックホール自身も光などを出すわけではないので、見つかりにくい存在でした。その野良ブラックホールが2017年7月に発見できたようだという発表が慶応大学の研究チームから発表されました。一体どうやって発見したのでしょう?
実はこの発見は偶然に見つかったものだったのです(天体観測ではたまにこういうことがあるんですよねぇ)。発見した研究チームの岡朋治教授や竹川俊也研究員の当初の目的は天の川銀河の中心付近を調べることでした。その時に観測に使用されたのが、前に私のブログで紹介した「JCMT」です!(どやっ!)

ここでちょっと皆さんに質問です!なぜ天の川銀河の中心付近を観測するのに、たくさんの望遠鏡の中で電波望遠鏡を使用したのでしょうか?皆さん分かりますか?答えはですね、分子ガスだからです。(は?と思いましたか?思いますよね。)天の川銀河にはもやもやしたガスの塊が中心にあるブラックホールの重力によって引き付けられています。このガスの塊(イメージは雲ですかね)は中身がスカスカです。なのであまり激しい天文現象は起こらず、温度も低いのです。こういう温度が低い領域は強い光を出すことができません(可視光はおろか赤外線も厳しい)。ところが、電波は温度が低くても放射されるので分子ガスの観測には持って来いなのです!(すごいでしょ!)

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(分子ガス&分子雲の電波観測についての図)

話は戻って「野良ブラックホール」です。当初の目的で直径約2万7000光年の天の川銀河の中心から約30光年の領域を観測し、そのデータを解析してみると観測した領域の中に妙な分子雲があることに研究チームは気づきました。分子雲とは分子ガスの密度が濃い領域のことです。さてどこが妙かといいますと、直径約3光年と小さいサイズの分子雲が、それを取り囲んでいる構造の分かっている大きな分子雲とは異なる動きをしていたのです。これはとても不思議なことです。なぜかというと、周囲に大きな分子雲があれば、それが影響を受けている重力に小さな分子雲も影響を受けるはずです。ところがです。小さな分子雲だけが個人プレーをしている。さてなぜか。そこで研究チームが2つの小さな分子雲を詳しく解析したところ、それぞれがとても重く、とてつもなく大きな運動エネルギーを持っていることが分かったんです。先ほどもお話したとおり、一般的に分子雲の中身はスッカスカのはずなのでそんなに重いはずはありません。また運動エネルギーも小さいはずです。はてさて、ではこの2つの妙な分子雲はどうして重くて大きな運動エネルギーを持っているのでしょうか?

研究チームが考えたメカニズムは「大きな分子雲にめちゃくちゃ重たい天体が高速で突っ込んできて、その天体の重力に大きな分子雲のガスの一部が引き寄せられて、それぞれに小さな分子雲となった」というものです。

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(メカニズムのイメージ図)


研究チームではこのメカニズムから考えられる予測モデルを2つ考えました。それがこちら!
① 太陽の10倍以上の質量をもった天体が、秒速100キロの高速で分子雲に突入!
② 太陽と同じくらいの質量をもった天体が秒速1000キロの高速で分子雲に突入!

皆さんはどちらのほうがありえそうなモデルだと思いますか?難しすぎるって?まあ、そうですよね。(え、ヒントが欲しいって?)じゃあ、考えられる天体候補をいくつか。①番の候補天体はブラックホールやめちゃくちゃ重たい恒星、②番はめちゃくちゃ高速で動く太陽のような天体。(どうです?どっちがリアルにありそうですか?)研究チームはブラックホールだと考えました。彼らが考えた理由は2つ。
・妙な分子雲2つからはめちゃくちゃ重たい恒星の存在を確認することができなかったから。
・めちゃくちゃ高速で動く太陽のような天体は現在発見されていないから。
(確かに2つ目の理由のように太陽がめちゃくちゃ速く動くのは、あんまり想像できませんね。)
というわけで、妙な2つの分子雲はめちゃくちゃ速く動く「野良ブラックホール」に影響されて作られたはず!という結果になりました。

20180311_shino_04.jpg(野良ブラックホールの想像図 提供:慶応義塾大学)


 さて今回紹介したこの研究、妙な分子雲の理由を解明しただけではありません。(なぜって?)だって皆さん!この観測方法を使えば、今まで見つけることができなかったブラックホールを確認することができるということも示せたわけです(すごいですねぇ!ブラックホールが分かるようになるかもしれないなんて!!)。
 ここで皆さんに思い出してほしいのは、昨年2017年のノーベル物理学賞です。初めて観測された重力波はブラックホール同士が合体することで発生したものでした。ということはですよ、皆さん!天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホールは今回発見された野良ブラックホールを最終的には飲み込んで、また成長するかもしれません。
今回の野良ブラックホールを含め、今まで全くよくわからなかったブラックホール。ですが、この謎について重力波や電波を使って少しずつですがブラックホールについてわかることが増えてきました。もしかすると、ブラックホールが解明される時がくるかもしれません。
どうですか?ワクワクしませんか?
 まだまだよくわからないことだらけのブラックホール。その謎を解くために私が紹介したJCMTのような電波望遠鏡が大活躍をしてくれることでしょう!
 Don't miss it!

【関連リンク】

慶応義塾大学HP(プレスリリース)

https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2017/7/18/28-21984/

JCMTのHP

https://www.eaobservatory.org/jcmt/

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