子どもが"ガチ"でエネルギーについて考えたなら

小学5年生から中学3年生まで10人の参加者がエネルギーの未来について考え、その成果を国や世界の「エネルギー戦略」として提案する連続プログラムが行われました。
「きみならどうする?未来のエネルギー ~グリーンパワーキッズクラブ~」と題したこのプログラム。GREEN POWER プロジェクト(経済産業省資源エネルギー庁主催)の一環として、一般社団法人Think The Earthと日本科学未来館が実施しました。

12月から2月まで4回にわたり、ワークショップや施設見学など、エネルギーに関わるさまざまなプログラムをこなした子どもたち。最終回の発表会で各自が提案した戦略は、関わった大人たちが舌を巻くほど、アイデアも熱意もすばらしかったです!

彼らの戦略の一部をご紹介。

「川や雨が多いから小水力は日本に合った発電と言えます。発電が身近な存在として地域が活性化し、自然とふれあえる暮らしがいいと思います。」
「ソーラーパネルの設置費用が高いなら、地区で1番、自宅の電力を自給した人に報酬をあげるのです。報酬とはお金や商品券などです。報酬を目当てに自給率を上げようと節電するのではないかと思います。」
「電力取引所を作り、余剰電力のある地域が電力の足りない地域へと電気を供給出るようにします。」
「エコが苦しいものではなく、楽しいものになったらステキだなと思います。」

これ、小中学生の言葉ですよ。
エネルギーに関する単なる知識や技術だけではなく、エネルギーを使って成り立つ「社会のあり方」にも切り込んだり...。
その内容は、発表を聞いていた資源エネルギー庁の担当官もうならせるほど。彼らのアイデア、きっと国のエネルギー政策にインパクトをもたらすに違いありません(期待も込めて)。

つけ加えると、内容のみならず発表のし方もスバラシイ!

TEDばりの熱いプレゼンテーション

彼らの発表が大きな実を結んだのは、過去3回のプログラムでエネルギーについて"ガチ"で学んだからこそ。
初回ではエネルギーについて基礎の基礎から学習。一次エネルギーと二次エネルギーの違い、各発電のメリットデメリットなど、ディスカッションも交えて主体的に学びました。
第2回の活動では発電施設を見学。石炭火力発電所と太陽光発電所を1日かけてまわり、普段はなかなか見られない発電の現場を目の当たりにしました。

第3回では国が抱えるエネルギー問題に注目し、それを解決するための社会のあり方にも視野を広げました。4月からは電力自由化も始まり、エネルギーに関わる暮らし方を再考することが私たちにも求められていますよね。
いま国が抱えているエネルギーの課題は大きく4つにまとめられます。

では、これらの課題が解消されている未来の社会とは?
これを出発点にして生み出されたのが、冒頭で紹介した未来のエネルギー戦略です。
ただ漠然と未来を考えるのは難しいので、ヒントとして、エネルギーと私たちの関わり方の5つの視点に注目。

エネルギーの使い方、あるいは減らし方、自分で注目したい「視点」を選び、それをどう工夫することで課題解決につながるのか。
たとえば、

・水素に注目して「ためる」技術を発展させる。

・無駄にしている熱を活用して電気使用量を「へらす」。

・再エネの中でも小水力で電気を「つくる」。

このように具体的な切り口で考えを一つひとつ積み上げたからこそ、小中学生であっても、実現可能で、社会的に十分に意義のあるアイデアを発表できたというわけです。
発表の最後、参加者の中学生からこんな言葉が聞かれました。
「僕はこのプロジェクトに参加して、エネルギー問題は、人々の幸せを守ることだと知りました。(中略)新たなエネルギーが生まれる瞬間に立ち会えるかもしれない。そう考えると僕は"この時代に生まれてよかった"と思います。」

気候変動との関連や原発の是非など、国のエネルギーをめぐる状況は厳しく思われます。しかし、この課題と真剣に向き合うことが、ただ苦しいこと、辛いことなのではなく、私たちや未来世代にとっての「新しい幸せ」を見いだすチャンス、ととらえることもできるのではないか。

そんな前向きな気持ちにさせてくれた子ども達との出会い。このプログラムは参加者のみならず、関わった大人が子ども達から新たな視点を学ぶ機会にもなりました。

プログラムをすべて終えた参加者は「グリーンパワーキッズ」に認定されました。
これからどんな活躍をしてくれるのか楽しみです!

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