都会に住む人たちが、森林社会の未来を変える

こんにちは。新緑の訪れをお知らせしてからはや2ヶ月......GWも過ぎ去り、気づけば初夏の日差しに!(そして、うかうかしているうちに、季節は梅雨へ......)

あっという間に駆け抜けていったある春の日に、とても嬉しいお誘いがありました。

 

「タケノコ、掘りませんか?」

 

返事はもちろん即答で

 

「はい!!!!」

 

ということで先日、人生初タケノコ掘りを楽しんできました。

 

1本収穫するのにこんなに苦労するとは思っておらず、案の定、翌日から全身筋肉痛に襲われました。

全力でタケノコと格闘する科学コミュニケーター武田
(撮影:未来館 科学コミュニケーター髙橋)
大勢で半日かけて大量のタケノコを収穫しました
(撮影:未来館 スタッフ長田)

収穫したタケノコはその場で調理してもらい、タケノコを育んだ自然に囲まれながら美味しくいただきました。あぁ...幸せな1日だったなぁ(遠い目)

 

タケノコに限らず、森や林はわたしたちに木材や山菜、薪、木の実などさまざまな恵みを与えてくれます。

 

昔から日本ではこういった森や林の恵みを、大切な"財産"として周辺に住む人々によって管理・維持してきました。(日本では西暦800年ごろから森林の管理が行われていたといいます。ご先祖様たちすごい!!)

 

今でも生活に森林の恵みが活用できるのも、管理してきた人びとの存在があったからかもしれません。

 

ん?ということは?

 

わたしたちが今、森林をきちんと管理・維持をしなければ、次の世代に豊かな森林の恵みを残せない!!?

 

それはまずい!ということで、長年"森林社会"について研究を続けている、森林社会学者の三井昭二先生に、今とこれからの森林の管理についてお話を伺いました。

第10回みどりの学術賞受賞者 三井昭二先生
(撮影:未来館 科学コミュニケーター髙橋)

森林の近くでくらす人たちがお互いの中でルールを決めて、森林の価値を共同で管理・維持するこのような活動は、近代になって衰退はしたものの、昔から「入会(いりあい)」というかたちで世代や時代を超え、現在まで脈々と受け継がれてきました。

 

三井先生は、この「入会」という考え方に森林を次の世代に受け継ぐための可能性があると分析しています。

 

およそ20年前から、林業界では長期にわたり従事者の減少と高齢化が続き、森林周辺地域には若者が少なくなりました。こうなると森林を維持していくことが難しくなります。

 

それはつまり...

次の世代に森林の恵みを残せないということ!!?

 

スーパーに並ぶタケノコの値段は年々高くなり

木材を育む山は荒廃し

里山にあった風景はごく一部でしか見られなくなる

 

(未来の子供たち、ごめんよ...)

 

「林業従事者は減っている。けれど若年者率は高く増えています。」(三井先生)

 

なんと!!!

 

確かに、林業白書をみると、若者の割合はここ数年増えているようです。(※補助金や自治体などによるPR活動も盛んに行われています。)

H25林業白書「林業従事者の推移」改変

これは都会から移ってきたIターンやUターンの若者が増えたことにもよります。そのような若者の中には、山村地域で地域資源を使った新しいビジネスを始める人が、最近では出てくるようになりました。

若者にも人気の高いカラフルな作業服の林業現場
(撮影:三重県速水林業)

また、従事者としてではなく、ボランティアとして森林に関わる人たちも多くなりました。そのなかに、若者たちもみられます。

町有林を借りて森林を整備するボランティア団体(森林塾「青水」)
(撮影:三井先生)

このような森林に携わる人たち、とくに若者たちの増加傾向に、三井先生は注目しています。

 

「都会に住む人たちは、森林にこれまでになかった新たな価値を見いだし、それによって新しい入会のかたちが誕生しようとしています」(三井先生)

 

先生はこの 新しい入会のかたちを「コモンズ」という言葉を使って表し、森林という共有資産における新たな可能性を生み出すと指摘しています。

 

ところで、

若者たちは森林にどんな価値を見いだしているのでしょうか?

 

「ひとつは自然に対するあこがれでしょう。でも、景色を眺めているだけでは満足できない。何か社会の役にたつことは出来ないか、というのがきっかけになっているのではないでしょうか。森林を媒介とした人間関係も自然とできます。そういった人間関係が、森林ボランティアではメリットになっているのかもしれません。」(三井先生)

 

日本の森林は1000年以上にも渡り、人々のくらしにとって共通の財産として大切に受け継がれています。どんなに時代が移り変っても、森林と人々のくらしの間にはその時代ごとに求める森林の"価値"があります。

 

その"価値"を丁寧に紐解くことで、次の世代に財産を引き継ぐヒントをみつけることができるのかもしれません。

 

先生が提唱した「コモンズ」という新たな森林社会は、はるか昔から受け継いできた日本の森林を、次の世代に渡すために大切なものになっていくかもしれません。

竹笛を作って遊ぶ武田と未来館ボランティアの岡さん
(撮影:未来館 科学コミュニケーター髙橋)

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