宇宙飛行士と考えて〜地球と私たちのつながり、みなさんは見えましたか!?~

こんにちは、宇宙飛行士大好き科学コミュニケーターの田代です!

2018年1月20日に大西卓哉宇宙飛行士を招いたトークイベントを未来館のシンボル展示Geo-Cosmosの前で行いました。
日没後のイベントだったので、Geo-Cosmosがキレイに輝いて素敵でした。

イベントのテーマはズバリ「地球とのつながりを考える」こと。

私自身、このイベントのおかげで、気候変動をはじめとする地球規模の課題とどう向き合うかについて改めて考えさせられました。

地球とのつながりを考えるために、宇宙飛行士とは違った視点から地球をみる、ということをしている2人の研究者をお呼びし、それぞれの立場から地球についてのお話を伺いました。

「各地の観測地点のデータ、旅客機に搭載した大気中の二酸化炭素、コンテナ船による海洋の二酸化炭素の吸収量、そして人工衛星が観測した地球全球の二酸化炭素の観測結果など、さまざまな視点や方法で測定しましたが、やはり二酸化炭素は増加の傾向にあります」
国立環境研究所の三枝信子先生から改めて突きつけられる現実です。

「私たちの健康被害の一因となっている大気汚染物質がどこから来てどこへ流れていのかをシミュレーションした結果、東アジアから排出された多くの大気汚染物質が北極圏に影響を与えているのではないか、ということが推定されました」
海洋研究開発機構(JAMSTEC)の滝川雅之先生の言葉からは、私たち人間の行いは、地球に大きな影響を与える力を持っていることを実感しました。

ということは、逆に考えれば良い影響だって与えることができるのではないか?
会場にいる人だけではなくて、地球の人々みんなで取り組みさえすれば...!

と少し希望が見えたところで、国連が地球規模での課題とした「持続可能な開発目標(SDGs)」の17項目の目標が登場しました。

17項目の目標には、今回のイベントに関連する「13 気候変動に具体的な対策を」の他にも「3 すべての人に健康と福祉を」や「4 質の高い教育をみんなに」などがあり、これらの解決を目指すことが、これから先の未来が豊かであり続けるために、どれも不可欠とされている目標です。

当たり前のことですが地球全体となると、解決すべき問題は1つであるはずがなく。...こんなにたくさんの目標があっては、どこをどう考え、どう行動したらいいか、その答えにたどり着くことが遠くなった気がしました。

そこで三枝先生から1つのアイデアをいただきました。

「たとえば、パーム油。普段あまり意識しませんが、石鹸の原料などさまざまな商品や食品に含まれる油です」。

なるほど。

「問題なのはこれを生産することでも使うことでもなく、(パーム油の原料となるヤシを栽培するための)無許可での土地の開拓や違法な栽培です。これによる森林の減少や動物たちへの悪影響が心配されています。(一般消費者にとって)大切なのは、決められたルールの中で生産されたものなのかどうかを見極めることです」。

それは大切。

そうしてRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)が定めたルールのもとでつくられ、流通したものだということを示す認証マークを紹介してくださいました。

店で何かを買うときには、このマークの付いた製品を選ぶというような、私たちの生活の中にある「選択する」という行動の一つひとつが地球とつながっているんだ、そう感じました。

しかもこのパーム油に関する選択は、今回の話題にもあった気候変動の問題を含むSDGsの目標の「つくる責任、つかう責任」や「緑の豊かさも守ろう」をはじめとするいくつかとも紐づけることができそうです。

これはとても凄いことじゃないか!
もしかしたらパーム油にかかわることだけでなくても、すでに暮らしの中で何かを「選択」して、私たちは知らずのうちに地球に貢献しているのではないでしょうか。
また、改めて◯◯ならできそう!と別の行動を思いついた方がいるかも知れません。

さらに、貢献できることは、私たち一人ひとりの立場によっても違うはず。
逆に言えば、あなただからこそできることだってあるはずです。

さらに地球とのつながりについて考えた終盤で、大西宇宙飛行士からこんな言葉をいただきました。

「ナバホ族の言葉に、私たちは過去から地球を受け継いだのではなくて、未来の子孫から借り受けているんだ、という言葉があります。そういった考え方や発想って素晴らしいことなんだと、今この2時間で感じました。未来の子孫のために、今の私たちができることをやらなければならないなあ。そんな風に思いました」

さすが、大西宇宙飛行士。

未来から借りている、という視点はなかなか実感を持って気づけることではありません。
しかし大西宇宙飛行士の人柄なのか、宇宙を経験した人だからこそなのか、その言葉には妙な説得力と確かな力強さがありました。

もし遠い未来の自分のため、未来の自分の子どもや孫のため、という気持ちが、今の私たちの考えや行動の原動力となれば、そこには「地球に貢献している」という実感が伴わなくとも、自分の子供達や次の世代のためという、自分が未来とつながっている実感は持てるのではないか?

そんなことを思ったら突然、教員としての自分と、科学コミュニケーターとしての自分と、父親としての自分などがいろいろ重なって、行動するという意味が一瞬みえたような感覚が私の中でありました。
これは登壇者のお話を間近で聞いていて、私なりに出た「行動する」というイメージなのだと思います。

あの時の感覚は忘れたくない。

イベントをご覧になったみなさんはどんなことを感じて、どんなことを考えましたか?
来てくださった方、見てくださった方、本当にありがとうございました!

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