科学コミュニケーター重機にのる!──企画展「工事中!」の魅力②

こんにちは、科学コミュニケーター(SC)の松谷です。

2月8日から未来館では、企画展「工事中!」~立ち入り禁止!?重機の現場~ が始まります。科学コミュニケーターブログでも、SCの視点から企画展の魅力をお伝えします。

(ブログ第一弾はこちら

企画展の準備で取材や調査をしているのですが、その一環で重機の資格を取得してしまいました!今回のブログでは、資格取得を通して改めて感じた魅力をお伝えします。

重機の運転に限らず労働現場での溶接作業や有害物質の取り扱いなどを安全におこなうために、作業者には技能講習や特別教育を受けることが労働安全衛生法で義務付けられています。さまざまな講習のある中、今回は特別教育のひとつ「小型車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転の業務に係る特別教育(機体質量3トン未満)」という講習を受けてきました。

座学1日と実習1日の2日で取得できるカリキュラムです。

1日目 「重機を知る」

資格を取得するべくお世話になったのは、日立建機教習センタ茨城教習所。教習所までの道のりは霞ヶ浦が臨め、周囲にはレンコン畑が広がるのどかな場所にありました。

お世話になった日立建機教習センタ茨城教習所

1日目は座学です。エンジンや油圧装置の構造や取り扱い方、整地や掘削などの作業について、さらには力学や電気などの基礎知識や関係する法令まで、みっちり7時間おこないます。

講習をしてくれたのは女性の講師です!

油圧ショベルと呼ぶように、多くの重機を動かす力は油の圧力「油圧」です。油圧を生み出す「油圧ポンプ」や、油圧を動力に変換する「油圧シリンダー」や「油圧モーター」といった装置たちが重機を動かしています。

油圧装置は「パスカルの原理」と呼ばれる流体(水や空気、油など)の性質を応用した技術です。密閉された油は、細いパイプの先にも一定の圧力を弱めることなく伝えます。油圧を使えば、小さな力をより大きな力に変えることも、遠くに伝えることもできます。(企画展内では簡単な体験をしながら「パスカルの原理」を学べます)

重機の構造について教わっています。同僚(右)は熱心に聞き入っているのに、私(左)のまぶたは重そう。

2日目 「重機に触れる」

2日目は、実習です。

いよいよ重機に乗車です !

と、その前にしなくてはいけないことがあります。それは安全確認です!

作業前には、かならず機体の安全点検をします。作業の時も周囲の安全は指差し確認をしながら行います。

まず最初に乗車したのは、ホイールローダです。

ホイールローダは乗用車同様に4つのタイヤで走行する重機です。

ですが、車体の前輪と後輪の間が折れることで方向転換をするため、乗用車を運転する感覚とは全く違う!土砂をすくうときには、前進をしながらバケットをうまく動かすとバケットに土砂が入ってきます。大量に入ってくれるととっても快感です。

ホイールローダで土砂をすくいます!

次の重機は、油圧ショベルです。油圧ショベルの多くは、ホイールローダと違って足元はタイヤではなくクローラです。走行は操縦席の前の2本の走行レバーでおこなうのですが、その操作は意外にも簡単でした。ただ上部を旋回させて前後逆向きになったときには手間取りました。

油圧ショベルを旋回させて前後反転で進んでいるところ 。操作が難しい。

油圧ショベルの作動装置にはブーム、アーム、バケットと可動するところが3つあります。操縦席には左右両側に操作レバーがあって、2本のレバーはそれぞれ前後と左右に動くことで、3つの可動部+旋回という4つの動きを制御します。掘削作業はこの4つの動きを組み合わせて行わなくてはいけません。

慣れないうちは、可動部をひとつずつ動かしながら地面を掘っていきます。人の使うスコップの何杯分だろう?という土砂が一度にかき出せます。

掘削するたび、振動が体に伝わってきます!

今回操作したのは機体の重さ 3トン未満という重機としては小さいものですが、それでも掘りだす土砂の量は人の手作業の何倍もあります。実際の工事現場や鉱山などでは、この何十倍、何百倍もある大型重機が活躍していると思うと、改めてその規模の大きさに驚くばかりです。

たった2日間ですが、みっちりと講習を受けて重機の基礎知識と基本の操作方法を学べました。座学では、重機がさまざまな科学技術のつまった"道具"なんだと改めて学びましたし、実習では、そんな工事現場を支える重機の力強さを実感できました。また、実は最も印象に残っていることは安全確認についてです。重機に乗車するたびに、バケットを動かすたびに、指差し 確認!

「上手く操作をする」、ではなく「安全に操作する」ためのカリキュラムなんだと実感しました。

ということで、企画展「工事中!」でもこうした重機の魅力を存分に感じてもらえます。操作はできないけれど、乗車体験もできるコーナーも用意しています! ぜひ未来館に足を運んでみてください。

修了証を手に満面の笑みの未来館メンバー

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