どうして分かった?巨大隕石衝突 ~トークセッション「日本で見つけた! 巨大隕石衝突の証拠」レポート

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「巨大隕石衝突」- 恐竜絶滅の原因や、映画のモチーフとしてご存知の方も多いのではないのでしょうか。2013年にロシアに落下した隕石は、直径が恐竜絶滅を引き起こした巨大隕石の100分の1にも満たず、地表に直撃もしなかったのにもかかわらず、何千棟もの建物に大きな被害を与えました。そんな巨大隕石衝突ですが、長い地球の歴史の中では珍しいことではなかったことが地表に残るたくさんのクレーターから明らかになっています。

一方で、隕石衝突が地球に住む生き物にどれくらいの影響を与えたかは、恐竜絶滅のあった6600万年前の事件をのぞき、ほとんど分かっていません。

そんな中、若い日本人研究者が、約2億1500万年前、三畳紀とよばれる時代の末期に起きた巨大隕石衝突の証拠を岐阜県の地層から発見しました。隕石衝突時にできた地層がわかれば、それが地球環境に与えた影響を知ることもできます。

去る1月13日に開催したトークセッション「日本で見つけた! 巨大隕石衝突の証拠」では、この発見者、千葉工業大学の佐藤峰南さんに直接お話を伺いました。どうやって隕石衝突の証拠を見つけたのでしょうか?そして隕石衝突によって、地球はどう変化したのでしょうか?

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◆巨大隕石衝突と大量絶滅

地球の歴史の中で、多くの生物種が死に絶える「大量絶滅」が過去に5回ありました。その中でも最後に起きたのが、恐竜を絶滅させた「白亜紀末の大量絶滅」です。そして、中米ユカタン半島に落ちた巨大隕石が白亜紀末の大量絶滅の原因であることが、様々な証拠から定説となっています。しかし、他の4回の大絶滅の原因に関しては諸説あり、はっきりとした原因は分かっていません。

一方で、地球上には隕石の衝突によってできたと見られるクレーターが190個以上見つかっています。その中には、残りの大量絶滅や、小規模な絶滅を引き起こしたものもあるかもしれません。もし、隕石衝突があった直後にできた地層がみつかれば、その前と後の時代に出来た地層を比較することによって、絶滅の証拠をつかむことが出来るかもしれません。いざ、巨大隕石の証拠探しを見てゆきましょう。

◆どうしてわかる?太古の隕石衝突

そもそも地球は、出来たばかりの太陽系にただよう岩石やちり(微惑星)同士がぶつかり合い、合体してできました。そして、地球ができたのちに降ってきた隕石の多くは、惑星形成の時代に惑星の原料とならずに宇宙に取り残された岩石が落ちてきたものです。したがって、隕石も地球の岩石も、もともとは同じものです。ではどうやって、隕石由来のものを見分けることができるのでしょうか?

ウチの屋根にも落ちてる?超ミニ隕石「宇宙塵」

隕石は滅多に落ちてきませんが、流星なら夜空を眺め続ければ30分に一度くらいは見つかります。流星は、宇宙塵(うちゅうじん)と呼ばれる小さな粒が地球に落下した時に、大気との摩擦で燃えた時の光です。地球にはこんな宇宙塵が年間約16000トンも降り注いでいます。宇宙塵は落下時に流星として燃えてしまいますが、消滅してしまうわけではありません。摩擦熱で溶けた宇宙塵の一部は、非常に小さな球形の粒子として冷えて固まり地表に降り注ぎます。

したがって、皆さんの家の屋根や車に積もったチリの中にも、このような宇宙由来の粒子が混じっているかもしれないのです。実際、顕微鏡でチリを観察してみると、奇麗な球形の粒をいくつも見つけることが出来ます。残念ながら、現在は工場などから排出された、人間由来の球形の粒がたくさんあるため、詳細な分析を行わなければ宇宙由来のものと見分けることは難しいようです。

この宇宙塵、地表からだけではなく、大昔に積もった地層からも見つけることが出来ます。様々な時代に出来た地層から宇宙塵の数を数えれば、それぞれの時代にどれくらい宇宙物質が飛来したのか見積もることが出来ます。すると、ほとんどの時代でほぼ同じ数の宇宙塵が見つかります。すなわち、ほとんどの時代で降り注ぐ宇宙塵の量は一定ということです。

スフェルールから分かる!過去の巨大隕石衝突

地球にやってくる宇宙物質は、微粒子レベルの隕石である宇宙塵だけではありません。微粒子とは正反対の、巨大隕石の衝突によってもつくられます。

直径数kmにもなる隕石が地表に落下すると、落下の衝撃で隕石も地表の岩石も吹き飛ばされます(恐竜を絶滅に追い込んだ隕石はこのサイズだと推定されています)。それらは高熱で溶けてくっつき,球形の粒子となって地球全体に大量ばらまかれます。このときにできた粒子を「スフェルール」と呼びます。そして、隕石衝突によってまき散らされた物質が降り積もって出来た地層のことを「イジェクタ層」と呼びます。

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したがって、巨大隕石衝突があった時代の地層からは大量のスフェルールが見つかるはずです。スフェルールだらけの地層、イジェクタ層を見つければ、巨大隕石衝突の証拠をひとつゲットしたことになるのです。

もう一つの証拠、重い金属元素

巨大隕石衝突の証拠は、スフェルールの数だけではありません。地層に含まれる、金や白金、イリジウムといった、地殻にはほとんど存在しない重い金属元素の含有量によっても知ることが出来ます。具体的には、イジェクタ層には重い金属元素が異常に高い割合で含まれているのです。

最初にお話したように、地球の材料となった微惑星も、後から落ちてきた隕石も、由来は同じものです。だったら地球の岩石と隕石の成分は同じはずです。ですが、地球と隕石とのサイズの違いゆえに、成分にも量的な違いがあるのです。何が地球の岩石の成分を変えたのでしょう。その秘密は、地球の始まりにあります。

地球が出来た直後、原始地球は微惑星衝突のエネルギーによってドロドロに溶けていました。ドロドロのマグマの中で、重い金属元素は地球の中心に沈み込んでいったため、地球の表面には金や白金などはほとんど残っていないのです(だから高い!)。一方で後から降ってきた隕石には、太陽系が出来た当初の成分比率が残っているため、重い金属元素の含有量も多いのです。(ちなみに鉄も重いですが元々の含有量があまりにも多いため、地殻にもたくさん残されています。)

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◆いよいよ証拠探し本番!

さて、佐藤さんはイジェクタ層探しのターゲットを三畳紀の後期(約2億~2億3700万年前に絞りました。なぜなら、この時代につくられた直径9km以上のクレーターが5つもあるからです。この時代につくられた地層を一枚ずつ調べて行けば、イジェクタ層が見つかるかもしれません。

イジェクタ層探しのターゲットですが、三畳紀後期につくられた地層であれば何でもいいというわけではありません。陸に近い場所で作られた地層は、陸由来の土砂をたくさん含むため、隕石由来の物質が薄まって見つけにくくなってしまいます。イジェクタ層を見つけるためには、なるだけ陸から遠い外洋でゆっくりと堆積した地層を探す必要があります。

太古の海底の記録が残る特別な地層「付加体」

そんな地層、いったいどこで見つかるのでしょうか? 実は、何億年も前に外洋で作られた地層は、地球上にほとんど残っていません。なぜなら、外洋の海底プレートは長い時間をかけて移動し、大陸プレートにぶつかるとそのまま地球の深部へ沈み込んで消滅してしまうからです。

しかし「ほとんど」残っていないということは、例外があるということです。実は、その例外の一つが日本列島なのです。日本列島のかなりの面積が、大陸プレートの下に海底プレートが沈み込む際にはぎ取られた地層が堆積してできています。ちょうど大陸プレートという「カンナ」が海底プレートという「木材」の表面を削って、「カンナくず」が積もったかのような構造です。

このような、もともと海底にあった地層が大陸プレートに付着した構造のことを「付加体」といいます。付加体に残る三畳紀後期の地層が露出している場所が、岐阜県坂祝(さかほぎ)町にあります。

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ついに見つけた!巨大隕石衝突の証拠

佐藤さんは、2年間にわたってこの地層を一枚一枚調査してゆきました。ここの地層は「チャート」と呼ばれるとても固い岩からできています。これはガラス質の殻を持つプランクトンの死骸が海底に降り積もって出来たためだと考えられています。しかしある日、明らかに色の違う粘土岩からなる層を見つけました。これはこの時代、海底に降り積もる物質に大きな変化があったことを意味します。もしその原因が巨大隕石衝突であれば、その証拠が見つかるはずです。そこでこの粘土岩を薄くスライスし、顕微鏡で観察してみると・・・

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見つかりました!地層の中に隕石衝突の証拠となる、たくさんの「スフェルール」が見つかりました。さらにこのスフェルールの中味を走査型電子顕微鏡でのぞいてみると、多角形のきれいな結晶がたくさん見つかりました。これは「スピネル」と呼ばれる鉱物の結晶で、このスフェルールが本当に隕石衝突由来であることを示す証拠になります。

さらに、粘土岩中の白金やイリジウムなどの重い金属元素の含有量を調べると、前後の地層に比べて約100倍もの濃度があることが分かりました。もはやこの地層が出来た時代に巨大隕石衝突があったことに疑いの余地はありません。

ダメ押しに、既知のクレーターの形成年代と照らし合わせてみると、まさにこの地層が出来た時代、約2億1500万年前に形成されたクレーターが見つかりました。それはカナダ東部、ケベック州にあるマニクアガン・クレーターです。クレーターの直径は約90km、現在は直径約60kmのリング状のダム湖ができており、地図や衛星写真で簡単に見つけることが出来ます。

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◆大量絶滅との関係は?

さて、気になるのがこの巨大隕石衝突の前後で絶滅が起きたのかということです。坂祝町のチャート層には大型生物の化石は含まれていませんが、小さなプランクトンの化石は無数に含まれています。衝突の前と後で比較すると、プランクトンの数や種類に大きな変化があったことが分かりました。少なくとも海の生態系に大きな影響があったことが伺えます。

この巨大隕石衝突の約1500万年後、5回の大量絶滅の一つ、「三畳紀末の大量絶滅」が起きました。この大絶滅では哺乳類の祖先・単弓類やワニの祖先・クルロタルシ類が大きく衰退し、恐竜の黄金時代として有名なジュラ紀につながりました(関連記事:トークセッション「日本で見つけた! 巨大隕石衝突の証拠」を10倍楽しむ!巨大隕石が落ちた三畳紀とは?)。気になる巨大隕石衝突との関係ですが、1500万年も開きがあるために、今のところはっきりとした因果関係は見つかっていません。しかし、佐藤さんの研究グループは三畳紀末の大量絶滅の引き金として何らかの役割を果たした可能性があると考え、研究を始めているとのことです。

◆宇宙と地球を結ぶ

イベントの締めくくりに、来場者から佐藤さんへの質疑応答が設けられました。決して簡単な話ではなかったにも関わらず、小学生からの質問もたくさんありました。「地層とは何か」といった素朴な疑問にもていねいに答えるお姿が印象的でした。
最後に研究の動機についての質問がありました。佐藤さんは、もともとは天文学を目指していたそうです。ですが宇宙塵や隕石衝突など地球と宇宙のつながりについて学ぶにつれ、地質学に魅せられていったそうです。
宇宙と太古の地球を結ぶ、佐藤さんの活躍にこれからも期待したいですね!

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