地域課題を技術で解決!?その秘訣に迫る! 「"やっかいもの"の竹が、未来の素材になる!?」

3月3日に「"やっかいもの"の竹が、未来の素材になる!?」というトークセッションを行いました。

ご登壇頂いたのは、大分大学 理工学部准教授の衣本太郎先生。
この日ははるばる大分県からこのイベントのために来ていただきました。

衣本先生が住んでいる大分県の地域課題の一つが竹害。
先生は、竹がやっかいものになっている問題を解決するべく、身近な道具と化学を使って竹を綿やセルロースナノファイバーにする技術を開発し、事業化を目指しています。
今回のセッションでは、竹から作り出されたモノをどこでどんなふうに使えるかを皆さんと一緒に考えていきました。

●竹の害と書いて竹害(ちくがい)

みなさんは「竹害」という言葉をご存知でしょうか。
竹は古くから道具の素材として使われてきました。タケノコも竹林からの恵みです。ですが、最近は素材としての竹の需要が減ったり、タケノコも輸入品が出回るようになった影響で、竹は以前ほど使われなくなってきました。
使われなくなった竹は、どうなるかというと......
伸び放題。

1日で最大100cm以上もの高さになる成長力などから地球上で成長力の最も大きな植物とも言われています。
また地下でつながっている根も成長を続けており、1年に5mも伸びたという記録があります。
高い成長力をほこるその竹が放置されてしまった結果、竹は伸び放題。道路に倒れて通行のじゃまになったり、他の植物の生息地にまで侵出し、生物多様性の低下を引き起こしたりと、深刻な被害を引き起こしています。

竹害は衣本先生が住んでいる大分県だけでなく日本各地で深刻な問題になっています。

衣本先生はその問題を技術で解決しようと試みています。
その技術とは、身近な道具を使って、簡単に竹を「セルロースナノファイバー」という素材にすること。

●セルロースナノファイバーとは?

セルロースナノファイバーは、植物繊維の主成分であるセルロースをナノサイズにまで細かくした素材です(1ナノメートルは100万分の1ミリです)。この新しい素材からさまざまなものをつくりだすことができます。

セルロースナノファイバーは木などから作ることが多いのですが、元の材料や加工の仕方によって性質が変わります。
一般的に言われている性質は、強さが鋼鉄の5倍、重さは鋼鉄の5分の1。
イメージは難しいですが、とっても強くて軽そうです。
実はこの素材、近年、一部の掃除機やボールペンなどに使われ始めています。

植物由来なので環境にやさしいと考えられている素材で、この先さまざまな使い方ができると言われている素材です。

衣本先生の研究では、セルロースナノファイバーを、竹林近くで扱いやすい薬品や道具を使って竹から作り出すことで、竹の利用を増やして竹害の解消も目指していることが特徴です。

●衣本先生のセルロースナノファイバーの作り方

作り方ですが、まず竹から竹綿と呼ばれるものを作り、さらに細かくしてナノ単位の太さにします。

身近な道具を使って、というお話しですが、竹を圧力釜で煮て......、ミキサー!?
まるで台所で料理をしているみたいですね。
薬品も使いますが、それも市販されているもの。特別な道具を使わないことがコストを抑えるコツだとか。

衣本先生の竹からつくるセルロースナノファイバーも、強くて軽い性質をもっています。

イベント当日も竹からできたセルロースナノファイバーのチップを持って来て頂いたのですが、これが薄いのに全く割れない。

割れそうに見えるので、大人げなく本気を出してみましたが、ビクともしない。
当日も大勢の来館者に挑戦して頂きましたが、先生いわく「人の力では難しい」とのこと。

魅力的な性質をもっているのに、何に使うと力を発揮できるのかはまだ見極めきれていないこの素材。
当日はもっとこの素材の未来を広げて貰うために、「「軽くてかたい」この素材、どんな製品に使いたい?」と問いをたて、来館者からたくさんの意見を頂きました。

【当日の様子】

当日頂いた意見は、「ヘルメット」や「お皿」「ロケットのエンジン」など。
確かに軽くて強いといいですね。

みなさんはこの竹から作る軽くてかたいセルロースナノファイバーをどこで何に使いたいですか?

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