どう思いますか?ヒト受精卵での遺伝子改変研究

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4月下旬、報道各社がいっせいにあるニュースを報じました。

「ゲノム編集で子ども誕生 法規制検討を要請へ 国の専門調査会」(NHK)
「受精卵ゲノム編集に法規制を 生命倫理専門調査会が政府に提言」(毎日新聞)

人間の赤ちゃんの遺伝子改変をすることは認めません、それを法律で規制しましょうというニュースです。背景にあるのは昨年11月末に発表された中国でのゲノム編集ベビーの誕生という衝撃的なニュースです。

20190502_takuma.jpgゲノム編集ベビーを誕生させたと発表する賀建奎博士(2018年11月28日 筆者撮影)

ですが、4月22日に発表されたニュースは、赤ちゃん誕生への法規制だけではありません。

「ヒト受精卵のゲノム編集、遺伝病研究を容認 治療法へ道」(朝日新聞)
「ゲノム編集、子の誕生は法規制 遺伝病の基礎研究は容認へ」(共同通信)

赤ちゃんを得るために遺伝子改変した受精卵を母体に戻すことは法律で禁止する一方、受精卵を使って遺伝子改変をともなう疾患などの研究そのものは容認しましょう、という方向性がこの日(4月22日)に国の有識者会議で話されたのです。

ヒトの受精卵は「人の生命の萌芽」であるという考え方から、これまで、研究に使うことは厳しく制限されていました。研究のための使用が認められるのは、たしかな成果が得られると見込まれる研究、そして、社会的にも容認されると認められる研究であるなどの条件が課せられています。この条件に見合うとして容認されてきた研究はたった2種類だけです。これは2004年に国の有識者会議がまとめた「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」に基づいています。

そして、今現在、この「基本的考え方」での条件はそのままに、ヒト受精卵の使用を容認しても良いとされる研究の枠が、大きく広げられようとしているのです。

倫理的な問題を仮に脇に置くとしても、ヒトの卵子は入手が難しく、数をそろえることは困難です。2004年当時の研究技術レベルでは、ごく限られた数の受精卵で研究をしても、そもそも成果が得られるのかどうかが不確かでした。

この状況を大きく変えたのが、数年前に登場したCRISPR/Cas9というゲノム編集技術です。効率よく、狙い通りに遺伝子の改変を行えるので、受精卵の研究から成果が得られると期待できます。

ゲノム編集技術は、ほかに治療法のない遺伝性疾患などの根本的な治療法になると期待されています。世界的にも、遺伝子を改変した赤ちゃんを得るために母体に戻したりすることは禁止している国が多いですし、科学者の有志の集まりも「現時点では無責任」と自粛を呼びかけています。

ですが、「現時点」という言葉が表現しているように、技術的な安全性や有効性、社会の側の環境が整ったら、将来的には一部の疾患に対しては認めても良いのではないかという議論があります。致死的だったり、QOL(生活の質)が大きく下がったりするような疾患で、ほかに治療法がないなどの条件が考えられていますが、もっと広く認めるべきという声もあります。

現在、日本で進めようとしている、ヒト受精卵の遺伝子改変をともなう研究は、将来的にこうした赤ちゃん誕生に道を開く研究ともなり得ます。

皆さんはどのようにお考えですか?

未来館では5月11日(土)に、国の有識者会議でこの問題を議論しているメンバーお二人をお招きしたトークイベント行います。
https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1904171824166.html

参加できない方からも、ご意見・ご質問を承っています(上のURLからフォームに進めます)。
すでにいくつかの「声」をいただいています。

「近い将来、デザイナーズベビーが誕生するのではないかと危惧しています」
「研究が必要であることには賛同するが、技術的に修正された我が子に愛着を抱けるだろうか?」「本人に苦痛をともなう疾患をもたらす遺伝子があるとして、それをゲノム編集で治療しないことの方が倫理的に問題では?」

ぜひ、皆さんのお考えをお寄せください。また、5月11日(土)のイベントへのご参加もお待ちしております!

■日時:5月11日(土)14時30分~16時
■場所:日本科学未来館 5階 コ・スタジオ
■登壇者:石原理氏(埼玉医科大学)/加藤和人氏(大阪大学)/毛利亮子(未来館)
※参加は無料ですが常設展示への入場料が必要になります(18歳以下は土曜日は無料)
※事前申込みをお願いしております。空席がある場合のみ、当日のご参加も可能です。
詳しくは
https://www.miraikan.jst.go.jp/event/1904171824166.html