もうすぐ10月。ノーベル賞の季節です

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来週にはもう10月。平成31年度として始まり、すぐに令和元年度に変わった4月からの年度ももう半分が終わりました。10月といえば、私たち「科学を伝える」を仕事にしている者にとっては、なんといってもノーベル賞!

今年は10月7日(月)の生理学・医学賞を皮切りに、8日(火)の物理学賞、9日(水)の化学賞が発表されます。

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科学のニュースというと、最先端で起きていることを「点」として伝えることが多いのですが、ノーベル賞はすでに実績が認められた研究に対して贈られるため、その研究に至るまでの過去の経緯だけでなく、発見・発明がなされた時点から現在までを「線」としてお伝えすることができます。発表日までの事前の活動としては、この「線」を意識して、過去のノーベル賞を振り返りつつ、現在の最先端の研究を紹介していきます。

もちろん、例年どおり、発表の瞬間を皆さまと一緒に楽しむニコニコ生放送も行います。

生理学・医学賞
放送日時:2019年10月7日(月)17:00~19:00
番組視聴URL: https://live2.nicovideo.jp/watch/lv321924903

物理学賞
放送日時:2019年10月8日(火)17:00~19:00
番組視聴URL: https://live2.nicovideo.jp/watch/lv321925003

化学賞
放送日時:2019年10月9日(水)17:00~19:00
番組視聴URL: https://live2.nicovideo.jp/watch/lv321925071

※放送終了時間はいずれも延長になることがあります。


さらに、2012年からこのブログなどを通してお伝えしてきた、その年のノーベル賞を取るにふさわしい科学者・研究テーマをリストにし、「今年こそ受賞してほしい研究テーマ」として現役の科学コミュニケーター一同に"投票"をしてもらいました。

その結果はこちらです。URLはその研究を紹介したこのブログでの過去の記事となります。

生理学・医学賞
第1位 ゲノム編集ツールCRISPR-Cas9の開発
ジェニファー・ダウドナ(Jennifer A. Doudna)博士/エマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201509242015crisprcas9.html
狙った遺伝子を改変する技術です。科学コミュニケーターたちの投票ではぶっちぎり状態でした。2012年とつい最近に登場した技術ですが、使い勝手の良さから基礎研究を進めるためのツールとして、瞬く間に世界中の研究室で使われるようになりました。最近では、野菜や家畜、養殖魚の品種改良や医療にも使われ始めようとしています。

第2位 エイズの発症を抑える抗HIV薬の開発
満屋裕明博士
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)とはエイズの原因となるウイルスのこと。1990年代まで、ひとたびHIVに感染してしまうと、いずれはエイズを発症してしまい、死を迎えるしかありませんでした。ですが、いまではきちんと抗HIV薬を飲んでいれば、エイズを発症することなく、普通に社会生活を送れるようになりました。最初の抗HIV薬を開発したのが満屋先生です。

第3位 メチル化による遺伝子の発現調節機構の発見
Howard Cedar博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201309162013-3.html
私たちの体は心臓の細胞、皮膚の細胞など、さまざまな種類の細胞から成り立っています。種類ごとに形も役割も異なります。それは、働いている遺伝子が異なるから。どの遺伝子はOFFにし、どの遺伝子はONにするかを調節しているメカニズムのひとつが、DNAにメチル基をくっつけるメチル化です。病気との関連からも、研究がますます盛んになっている分野です。

物理学賞
第1位 光格子時計の提唱と実現
香取秀俊博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/2017090620173001.html
現在、1秒を決める国際基準となっているのはセシウム原子時計です。3000万年で1秒のくるいが生じる精確さです。ですが、香取先生の光格子時計はそれよりもさらに精確。そのズレは、300億年に1秒!ここまで、精確に時間を計れるようになると、アインシュタインが相対性理論で予想した「高速で移動しているものは時間の進みが遅くなる」を計ることが可能になります。例えば、地面とビルの屋上とでは、地球の自転による回転速度がほんのわずか異なります。こうした違いも計れてしまうのです。重力のわずかな違いも検出できるようになるので、地下の鉱床を探るといったことも可能になるかもしれません。

第2位 カーボンナノチューブの発見と応用
飯島澄男博士/遠藤守信博士/フェードン・アヴォーリス(Phaedon Avouris)博士/シース・デッカー(Cees Dekker)博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201809282018-11.html
炭素原子60個が白黒のサッカーボールの模様のような並びで球状になった分子がフラーレン。炭素原子が六角形を作りながらずらりとシート状に並んだのがグラフェン。それぞれノーベル賞を受賞しています。では、線状の構造は? それが筒状になったカーボンナノチューブです。飯島先生はその発見者、大量合成に成功したのが遠藤先生、アヴォーリス博士とデッカー博士はそのユニークな電気的性質を活かして電子部品へと応用しました。

第3位 量子テレポーテーションの研究
チャールズ・ベネット(Charles H. Bennett)博士/ジル・ブラッサール(Gilles Brassard)博士/ウィリアム・ウーターズ(William K. Wootters)博士/古澤明博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201609162016-5.html
SFのようなタイトルですが、量子テレポーテーションで瞬間移動するのは「情報」です。残念ながら「物質」ではありません。量子の奇妙な性質を利用すれば、情報を遠く離れた場所(たとえば、地球と火星など)にも瞬時に送れると理論的に考案したのがベネット、ブラッサール、ウーターズの3博士です。そしてそれを実験的に示したのが古澤先生です。

化学賞
第1位 リチウムイオン電池の開発
ジョン・グッドイナフ(John Bannister Goodenough)博士/水島公一博士/吉野彰博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201509152015.html
携帯電話がカバンサイズの大きさから手のひらサイズになったのは、まさにこのリチウムイオン電池のおかげでしょう。タブレット端末はこの電池がなかったら、登場しなかったかもしれません。充電をしながら繰り返し使える電池には
ニッカド電池(ニッケル・カドミウム電池)など従来からいくつかありましたが、軽くて小さく、電圧も大きいという優れた性質があります。さらにメモリー効果(電池を最後まで使い切らないまま、途中から充電を始めてしまうと、その途中のところまでしか使えなくなる現象)がないという、使い勝手の良さもあります。

第2位 酸化チタンの光触媒作用の開発
藤嶋昭博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201209202012-2.html
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201609142016-3.html
未来館の科学コミュニケーターは2回も藤嶋先生のご研究を挙げています。酸化チタンに光をあてると強い酸化力を発揮します。これにより、表面についた汚れを分解することができるのです。ビルの外壁など掃除がしにくい場所の表面に塗っておけば、汚れが落ちやすくなり、美しさを保てます。

第3位 次世代シーケンサーの開発
ジョナサン・ロスバーグ(Jonathan M. Rothberg)博士
https://blog.miraikan.jst.go.jp/topics/201809272018-dna.html
次世代シーケンサーといわれてもピンとこないかもしれません。DNAの塩基配列を高速で解読していく装置あるいは手法のことで、生命科学の研究の現場ではよく使われています。次世代シーケンサーの登場によって、DNAの解読が速く、安くできるようになりました。ゲノム情報、遺伝子情報を使った医療や、近年、研究がさかんな腸内環境なども、この次世代シーケンサーが支えているといっても過言ではないでしょう。

いかがでしたか?
すでに、一度はご紹介してきた研究ですが、どれもスゴイですよね。

明日以降から始まる各賞ごとのブログでは、ノーベル賞を通してみる科学の流れをご紹介します。もちろん、未来館5階のコ・スタジオでも15分のトークとしてご紹介していきます。

さぁ、今年もノーベル賞を一緒に楽しみましょう!