かわいいウサギとかっこいいジャイアントインパクト

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みなさん、こんにちは。

科学コミュニケーターの志野です。

みなさん、いかがお過ごしでしょうか。宇宙に電波望遠鏡好きな私のブログですから、予想はついていると思いますが、今回は宇宙ネタでいかせていただきます!

皆さん、最近夜空を見ましたか?実は今年前半は天体ショーがたくさんあったのです。もう終わってしまいましたが、1月4日にはしぶんぎ座流星群が、6日には部分日食がありました。2月20日には2019年最大の満月(スーパームーン)が見られました。逆に今年、満月が最小になるのは9月14日だそうです。最大と最小のその差は視直径(見かけの大きさ)で約14%、明るさで約30%も違うそうです(中秋の名月のときですね!)。地球に一番近い天体の月は私たちの風習にも大きくかかわっていきました。その一つとしてすぐに思いつくのは「お月見」ではないでしょうか。

わたしは子供のころはススキを飾って、お団子を家族で作ってお月見をしていました。その時両親が話してくれた「お月さんではウサギが餅つきをしているんだよ」という言葉。

みなさんも一度は聞いたことがあると思います。月のウサギ。これは下の図のようにクレーターの形をかたどったものがウサギの餅つきといわれてきました。

20190315moon_shino-1.jpg

皆さんは、どんな形に見えるでしょうか?

私たちと関わりが深い月ですが、月にウサギ模様があるのはなぜなのでしょうか?

ということで今回のブログは月のウサギがどうやってできたのか、という研究について紹介したいと思います。

◆ウサギの形は天体衝突のあかし?!

まず月のウサギの正体はなにかご存知でしょうか。答えは「クレーター」です。この名前、聞いたことある人もいるかと思います。クレーターとは月の表面のデコボコのこと。ではこのデコボコはどうしてできたのか。その原因は「天体衝突」だと言われています。つまり隕石が衝突した痕ということです。

ところが、上の月の画像を見てわかると思いますがウサギの模様が見えているところだけ色が違いませんか?黒いところがウサギに見える部分なのですが、ここは特別なでき方をしたと考えられているのです。この黒い部分は他のクレーターをつくった隕石よりも大きな隕石が衝突してできたと考えられています。また、ウサギ模様ができている部分は、以下のようなでき方だと考えられます。

イラストを使って説明すると、他のクレーターの衝突よりも巨大な隕石が衝突したため、クレーターから下のマグマが染み出して、それが固まってしまいました。なので、そこだけ他の月面と色が違うのです(かさぶたみたいですね)。これが、天体衝突の痕跡です。

20190315moon_shino-2.JPG

この色が違うところがウサギ模様に見えるのですね。ということは、天体衝突がなければ月のウサギもなかったことになるわけです。わたしたちにも親しみやすい月のウサギを作ってくれた天体衝突ですが、なんでまたそんな巨大な隕石が飛んできたのでしょうか(ちょっと不思議に思いませんか?)。

実は天体衝突は月のウサギだけではなく、月そのもの、そして私たちのふるさと「地球」にも関係していると現在考えられているのです。

◆月はどうやってできたのか

月のでき方ですが、実は現在でもはっきりわかっていません。よって研究者たちは昔からこの謎に挑みたくさんの説を考えてきました。現在の主なものが以下の4つの説です。

それぞれの説についてとその欠点を簡単に説明したいと思います。

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<捕獲説>

 読んで字のごとくですが、地球と月がそれぞれ太陽系の別の場所で形成され、そのあと月が地球のすぐそばを通過した際に何らかのメカニズムで月が捕獲されて月と地球の関係ができたという説。

 欠点ポイント:この説では地球と月が全く別の場所でできたことになります。ところがアポロ計画によって持ち帰られた月の石を分析してみると、その成分は地球ととても似ていたそうです。そのため、現在ではあまり有力な説ではないようです(残念!)。

<分裂説>

 この説は「種の起源」を提唱したダーウィンの息子さんが提唱した説です。45億年前にできたばかりの地球はまだ熱くてドロドロでした。その時地球の自転は高速でドロドロの地球のマグマがブチっと一部が切れてしまって、その破片が月になったという説。

 欠点ポイント:月の石と地球の石の成分が似ているという部分はクリアしたのですが、そもそもマグマが分裂するほどの高速回転が実現するのかが問題!地球のでき方は初期の太陽の周りをまわっていた小さな天体が徐々に集まってできたと思われています。そして地球の自転スピードは小さな天体が衝突するたびにかわっていったと考えられていますが、実際のスピードを考慮して数値計算で求めてみると回転分裂するほどの高速回転まで達さなかったそうです(うーむ...)。

<共成長説>

 同じ時期にほぼ同じ場所で小天体が集まって、地球と月ができたという説。

欠点ポイント:これは捕獲説と違って、同じ材料で地球と月が作られるので、組成的にも月と地球は似ていておかしくさそうです。でも、地球と月のお互いが相手の周りをまわっている状態から、さらに一緒に成長していくと、地球と月の間にはたらく重力が強くなっていき、月と地球は引き合って合体してしまいます。あるいは少し大きな天体が衝突すると合体したりあるいは離れてしまうとう問題点があります。(ありゃりゃ)。

<衝突説>

 地球と火星サイズの天体が衝突し、その衝撃で飛び出したマグマが集まって月ができた、という説。

この説では飛び出したマグマが円盤をつくり、その円盤の中のマグマが徐々に集まって月になるというものです。よって月の石の成分については月と地球が似ていて不思議ではありませんまた、数値シミュレーション計算によって実際に円盤内でマグマが集まり、月のような天体がつくられることがわかってきたのです。

◆天体衝突をシミュレーションしてみると

では、どんなふうに衝突したのかをシミュレーション画像でご説明します。この画像は国立天文台の4次元デジタル宇宙プロジェクト(以下4D2U)の画像です。これは天文学者が宇宙の構造と明らかにするための取り組みの1つとなっている技術です。

20190315moon_shino-4.jpg

いかがです?ちょっと天体衝突のイメージが沸いたでしょうか。

今ご紹介した天体衝突には、特別な名前がついています。その名も「ジャイアントインパクト」(かっこいぃ!!)。このかっこいい名前は全ての天体衝突が名乗れるわけではありません。ちゃんと条件があるのです。その条件というのが「ぶつかる天体本体(惑星や準惑星)の質量の10%以上の天体が衝突する天体衝突」です。もちろん、月ができた天体衝突も「ジャイアントインパクト」だと考えられています(どうです?衝突説かも?!って思ってきません?)。

ジャイアントインパクトでできたと考えられている月ですが、ジャイアントインパクトの名残は地球や月にあるのでしょうか。

残念ながら、ジャイアントインパクトが起きたとき、月も地球もドロドロだったのでジャイアントインパクトでできた痕跡を見つけるのは難しく、決定的な証拠は未だにありません(残念ですね)。

その一方で、ジャイアントインパクトの後の天体衝突については証拠があります。そうそれが月のウサギです。クレーターなんです!今回は割愛しますが、この月のウサギはずっと地球のほうを向いて地球の周りをまわっています。ですので、皆さんはその名残をいつでも確認できてちゃうんです(天気がよければだけど)!

さて、この地球や月ができる原因になったかもしれない天体衝突は同じ時期に月だけでなく火星や冥王星などの天体でも頻繁に起きていたと考えられています。

ところが、現在の太陽系ではこのような天体衝突はほとんど起きません(頻発しても困るけど...)。なので、あまりイメージがわかないかもしれませんが、この天体衝突は太陽系以外の天体で現在も頻繁に起きていると考えられています。今まさに宇宙のどこかで天体衝突が起こっているかもしれないのです。そしてもしかしたら月のような衛星が生まれているかもしれません。

皆さんも是非このブログを読んだ後に月のウサギを見てみてください。月に詳しくなった皆さんには月のウサギがあらためてどのように見えるでしょうか。