ふわふわかき氷のひみつ

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みなさんこんにちは!科学コミュニケーターの保科です。
まだまだ暑い日が続きますね。そんな暑い日といえば、かき氷!冷たい氷が口の中でひんやりとけて、身体を冷やしてくれる夏の風物詩です。

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私は縁日などで食べる、ザクザクとした氷(以下:ザクザクかき氷)のものも好きですが、勢いよく食べると口の中が冷えすぎて、頭がキーンとしますね。専門店などで食べられるかき氷は、氷が薄くふわふわしていて、口に入れるとあっという間に融けてしまうもの(以下:ふわふわかき氷)が多いようです。口の中が冷えすぎないので、食べても頭が痛くなりにくいのです。


ふわふわかき氷とザクザクかき氷の違いは何なのでしょうか?
違いは氷の削り方にあります。


主にスーパーなどでカップに詰まって売っているようなかき氷は、氷の粒が大きく、ザクザクしています。氷を砕いたものや、荒く削っているため、氷の粒が大きくなります。ふわふわかき氷の特徴は氷が薄く削られていることです。鰹節のように薄く削ることで、口に入れるとあっという間にとけてしまうふわふわ氷になるのです。


氷を薄く削るには、2つポイントがあります。このポイントをおさえれば、おうちでもふわふわかき氷が作れるかも!?


ポイント1:氷を温めてから削る

氷が冷たすぎると割れやすく、なかなか薄く削ることができません。家庭用冷凍庫の温度はだいたいマイナス20℃くらいです。冷凍庫から出したばかりの氷は冷たすぎて、硬いです。これをかき氷器で削ると、氷に刃が引っかかって氷が割れたりして、うまく薄く削ることができません。氷は常温に出して、表面が融けるくらいまで温めてから削ってみてください。


ポイント2:結晶の大きい氷を使う

薄く削るには、氷をつくっているひとつひとつの結晶が大きいことも重要です。氷は水分子が結合することで結晶構造を作ります。この結晶が集まっているのが氷です。


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図:氷の結晶構造の模式図。氷は水分子が結合している状態です。


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図:氷の断面を拡大したイメージ図。
たくさんある多角形が結晶ひとつひとつを表しています。
氷はこのようにたくさんの結晶の集まりでできています。
左は大きい結晶でできた氷。右は小さい結晶でできた氷。


氷をつくる結晶ひとつひとつが大きいと、氷が壊れにくく、削りやすいのです。


逆にひとつひとつの結晶が小さいと、氷を削っている時に、氷が割れやすくなってしまいます。個々の結晶の大きさは、水が凍る時の温度が重要となります。低温で急激に冷えると結晶は小さく、比較的高めの温度でゆっくり冷えると大きな結晶ができます。


かき氷店でたまに見かける「天然氷」は、ゆっくり冷やされて、結晶が大きくなっているという特徴があります。


天然氷は、池などの水が冬の寒さで凍ってできた氷です。冷凍庫のなかった時代は、冬に池にはった氷を切り出して、氷室と呼ばれる貯蔵庫で夏まで保存していました。現在では、日光や山梨、長野で作られていて、夏になるとかき氷店などに出荷されます。


天然氷は自然の中、-5℃から-10℃くらいの温度でゆっくり凍ります。氷が成長する速度は1時間に2~3 mm程度で、1~2週間かけて出荷できる厚さの氷となってきます。ゆっくり凍ると結晶が大きく成長するだけでなく、もうひとつ、かき氷に良い点があります。


水が凍るとき、水の中に含まれている空気などの不純物を外へ押し出しながら凍っていきます。冷凍庫のように低温な環境だと、外側から急速に凍るため、空気などは氷の中に残ったままになってしまいます。そのため、冷凍庫で作った氷は、中心部分に空気が集まった白い濁りのようなものができてしまいます。一方、天然氷は池などの水面から下へ向かってゆっくり凍り、底までは凍らないため、空気などの不純物を含まないきれいな透明の氷になるのです。空気などが入っていない方が、薄く削るのにも適しています。


おうちで空気などを含まない、きれいな氷を作ろうとすると、どうしたらよいのでしょう?


水をゆっくり凍らせるには、冷凍庫の-20℃という温度は低すぎます。冷やしすぎると空気を取り除けないので、ほどほどに冷やしてあげる必要があります。温度の設定を変えられれば良いのですが、それができなくても大丈夫。たとえば、発泡スチロールの入れ物に水をはって冷凍庫へ入れるという方法があります。このとき、蓋はしません。あらかじめ水を沸騰させて空気を出しておくと、さらに透明な氷ができやすくなります。

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なるべく空気や不純物を取り除くため、
水を沸騰させ冷ましてから容器にいれました。


一晩(だいたい8時間)で上の方に2 cm弱の透明な氷ができました。入れた水が完全に凍らないうちに取り出す必要があります。上から凍っていくため、全部凍らすと下層の氷に逃げ場がなくなった空気が含まれてしまうからです。


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(左)冷凍庫で8時間冷やした後。
(右)容器から取り出した氷。写真の下が氷の表面。上が底面。


かき氷器に入れるには大きいので、これを室温で少し融かしてから包丁をゆっくり押し込み切ります。


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板状にした氷をかき氷器に詰めてみました


板状の氷を重ねて削ったため、氷がうまく刃にあたらず思ったより薄くきれいには削れませんでした。


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透明氷で作ったかき氷


では、氷を切る必要のないかき氷器付属の円柱状の製氷皿で作ってみたらどうだろうと思い、やってみました。


水をいれた製氷皿を発泡スチロールの箱にいれて、皿の周りに新聞紙を詰めてみました。


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発泡スチロールの箱の中に製氷皿を入れてみました


このまま一晩おくと製氷皿の水はすべて凍ってしまったため、氷の下の方に空気の濁りが入ってしまいました。水の量が少ないため、冷えるのが速かったのかもしれないと思い、発泡スチロールの箱にふたをして、一晩おいてみました。すると上の方1 cmしか凍っていませんでした。時間調整はなかなか難しいです...


冷凍庫の環境によっても、最適な時間は異なるはずです。ふわふわかき氷をおうちでも作ってみたい方、自由研究に困っている方は挑戦してみてください!


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ちなみに、かき氷は平安時代から食べられていたそうです。

なんと、紫式部の「枕草子」にかき氷が出てくるのです。


「あてなるもの、...(略)...削り氷にあまずら入れて、あたらしきかなまりにいれたる。」

(枕草子 第四十二段)


"あてなるもの"とは、上品なもの、ということです。"あまずら"はその時代の甘味料で、シロップのことですね。つまり平安時代には、新しい金属の椀(あたらしきかなまり)に盛ったかき氷は上品なものだったのです。この時代の氷はもちろん天然氷です。


昔から涼を求めて食べられていたかき氷。みなさんもかき氷で暑い日を乗り切りましょう!