ダイトウリョウコモンをご案内

こんにちは。ムラシマです。
新米コミュニケーターを名乗ってきましたが、10月に新たな科学コミュニケーターが仲間入りし、もう新米なんて甘えていられなくなりました。
さて、先日のオフィスでのこと。
「ムラシマさん、ビップやってみない?」
と見せられた写真は、ターバンを巻いたおごそかな表情の紳士。
肩書きには、スーダン共和国大統領顧問とあります。
ビップ?ターバン?スーダン?コモン?
先端技術立国ニッポンを代表する科学館、ニッポン科学未来館!
ビップ(VIP=Very Important Person)と呼ばれる方々が世界中から訪れます。
その際、展示や実演のお話をしながら館内をご案内する「未来館ツアー」にお連れするのも、科学コミュニケーターの仕事です。つまり、
「ビップやってみない?」=「VIPの未来館ツアーの担当をしてちょうだい」
ということなのでした。
「やりまーす!」とは言ったものの、そもそもスーダンってどこ?何語?
そして…、大統領顧問ってなに?
大統領クラブの先生だよ、と友人。
さすがにそれはないけれど、たしかに学生時代の部活動以来、一般人な我々に「顧問」は縁がありません。
ハテナだらけで始まったこのお仕事、まずは未来館ツアーの計画です。
せっかくだから、先方のご専門やご興味にあったオーダーメイドなツアーがいい!
今回のVIPは、医師の経験があるといいます。
そこで、5階の生命科学の展示エリアをたっぷりとお楽しみいただけるコースを考えました。
次は、リハーサル。
大統領顧問役は、VIPツアーベテランの先輩科学コミュニケーター。
ストップウォッチを手に、本番と同じく英語で、役になりきります。
「ムラシマさん、”You know …” とか ”I’m gonna…” とか、だめよ。」
たしかに。敬意を持っていたらそんな言葉は出ないはず…。
目指すは、常に一歩前を歩きつつ、お尻を向けない立ち振る舞い。
数日間ではとても身につけることはできそうもないエレガント技の数々に、気が遠のいていきます。
でもドアを開けるターンは合格!本番はドアで魅せる!きまり!
そして、いよいよ当日の朝。
通勤電車の中で、もごもごイメージトレーニング。
未来館までの道のりもあっという間。すぐにお出迎えの時間です。
普段は開かずのVIPとびらから入って来られたのは、
写真の重々しさからはほど遠い、なんともジェントルマンなスーツ姿の大統領顧問、Dr. アタバニ。
迫力満点なお付きの方たちも満面の笑顔。
6日前、京都から始まったという、Dr. アタバニの初の日本訪問。
京都から東京への旅は、まるでタイムトラベルのようだった、とにこやかに仰います。
「今日は未来に連れて行ってくれるんでしょう?」
上品なユーモアあふれるお言葉に、おカタイ方をイメージしてガチガチだった心身がときほぐされるよう。
ツアーの間中なごやかなムードで、たくさんの会話、質問、そして笑いにあふれる楽しい時間でした(当日の様子はこちらから)。
Dr. アタバニ訪問以来、すっかり身近に感じられるようになったスーダン。
数日後のニュースで、この夏にスーダンから独立した南スーダンに武装勢力攻撃、と報じられました。
ジオ・スコープで世界の地震の様子をごらんになりながら、
「スーダンは安定しているなあ。政治的には不安定だけどなあ。」
とつぶやいたアタバニ氏がパッと頭に浮かびました。
そのときはみんなで笑ったけれども、いつ何が起こってもおかしくない状況にさらされている国があり、そこに住む人々がいるということ、とても複雑な気持ちになりました。
いろいろなことを考えさせる、奥の深いVIPツアーデビューとなりました。