続々:2011年ノーベル物理学賞! どうして宇宙が膨張しているとわかるの?

【詳報】2011年ノーベル物理学賞!宇宙は加速膨張している!
続:【詳報】2011年ノーベル物理学賞!どうやって宇宙の加速膨張を観測したの?」の続々編です。

来館者の方々にも楽しんでいただくため、ミニトークを作りました。そこで、小道具を用意しましたので、そのご紹介をしましょう。

前々回の記事で、「宇宙は膨張している」というハッブルの観測が「宇宙は静止している」という当時の常識を打ち破ったことをお話ししました。

天文学者ハッブルは、

①遠い銀河が遠ざかっていること

そして

②遠ければ遠いほど速く遠ざかっていること

から宇宙膨張を導き出したのです。

膨張しているのは空間

宇宙が膨張している、というとき、のびていっているのは空間です。天体が大きくなったりするわけではありません。また銀河も、重力によって縛られているので、宇宙の膨張とともに大きくなっていくわけではありません。

銀河や重力によって束縛された天体が、引きのばされる空間上に乗って遠くへと飛んでいっているのです。

その様子を表したのが、↓の画像。

小さな宇宙模型を考えましょう。50センチの小さな宇宙です。右端の黒い円盤が私たちの銀河系で、それと近い方からA、B、Cと3つの銀河があり、それぞれ10センチ、20センチ、30センチのところに銀河があったとします。この宇宙が1秒間で2倍の大きさになるとしましょう。例えば50センチが1メートルに膨張。

すると、3つの銀河は1秒間でそれぞれ、Aは10センチ先に移動して20センチのところに位置するようになります。Bは20センチ先、Cは30センチ先に移動します。もともと遠いところにあった銀河ほど、移動距離が長くなります。

つまり、遠ざかる速度が、距離に比例するわけです。

面白いのは、地球からどの方向を見ても、同じように遠ざかっていっていることです。まるで地球が宇宙の中心であるみたいに。

でもそれは錯覚。上の動画をもう一度見てみてください。例えばAの銀河にとっては、CはBの2倍の速さで遠ざかっています。Aから見ると、Aが宇宙の中心であるかのように見えるのですね。

光の波長をみれば宇宙の大きさがわかる

さて、宇宙空間がのびていると、遠い銀河ほど速く遠のいていくということがわかりました。では、どうやってその速さを測るのでしょうか。

これが前々回お話ししました「赤方偏移」。

宇宙空間上を旅する光の波は、空間がのびるにつれ一緒にのびていきます。(波長がのびると赤色を帯びてきますので、赤方偏移といいます。)

こちらの動画をごらんください。

50センチの宇宙が1秒間で1メートルになったとすると、空間は2倍になっていますので、波長も2倍になります。(実際の宇宙は2倍の大きさになるのに何十億年もかかります)

でも膨張する速度はずっと一定とは限りませんので、さらに1秒後には宇宙は2メートル以上になっているかもしれませんし、2メートル以下になっているかもしれません。しかし、その膨張の分だけ、光の波長も着実にのびていきます。

つまり、遠くの銀河からやってくる光の波長が、最終的にどれだけのびたかを見れば、現在の宇宙の大きさと比べた当時の宇宙の大きさがわかるのです。

というミニトーク、未来館フロアで行っております。機会があればぜひ見にいらしてくださいね!

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